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番外789 水槽と魔界の住民

 城の中庭については、ライトアップした水路や石造りのアーチ等……浮遊要塞の境界門安置区画に似ているという事で魔界の面々も楽しんでいる様子だった。

 迎賓館の客室に各々の荷物を置いて宿泊の準備も整えた所で、改めて劇場へ繰り出す。


「ふうむ。幻影劇場か。楽しみだな」

「私も気になっております」

「個々人が狩りをするにしても、民間できちんとした互助組織があるというのは便利ですね」


 メギアストラ女王は幻影劇場にはかなり興味を持っているようで上機嫌そうな様子だ。ロギやブルムウッドも冒険者制度が気になっているようで。

 ロギは立場上治安の面で制度が気になるだろうし、ブルムウッドとヴェリト達は、その個々人が狩りをするという方法で生計を立てたりしていたからな。


「ルーンガルド側の文化や歴史に触れてもらえるという意味もありますが……逆に魔界側の様子を幻影劇にしてみるのも面白そうですね。相互理解が深まりますから」


 魔界の歴史、様子をルーンガルドにいながらにして見る事ができるというのは良い事かも知れない。それを言うなら、逆に魔界側に幻影劇を見られる施設を作るというのも有りだな。魔界側でルーンガルドの文化や様子を知る事ができるように、という具合だ。

 そうすれば互いの世界の住民も、あまり危険を冒さずに理解度を深めることができるというわけだな。


「おお。それは確かに面白いな……!」


 そんな考えを説明すると、メギアストラ女王は明るい表情を見せる。


「魔王国で劇にするのに良い題材があれば、それを幻影劇にしてみたいところですね」

「であれば、我らや図書館の出番ですな」


 ボルケオールがそう言って目を細める。題材は決まっていないが、魔界も色々あったようだしな。公表しても問題が無さそうかなど、吟味の必要はあるけれど。

 今後色々幻影劇を作る予定ではあるが……二つの世界での幻影劇等、その予定の中に組み込んでおくとしよう。




「凄かったです……!」

「小さな者達の視点での戦いや暮らしというのは新鮮だったな」

「面白かった……!」


 そうして――幻影劇を見終わり劇場から出てきたところで、カーラとベヒモス親子が声を上げる。アルディベラの言葉に、竜達もうんうんと頷く。

 メギアストラ女王も劇の場面を思い返しているのか、目を閉じて満足そうな表情を浮かべていたりして。魔界の面々は興奮冷めやらぬ、といった様子だ。


 魔界でもゴブリンは厄介な蛮族という扱いなので、開幕後のゴブリン戦はかなりテンションが上がっている様子が見て取れた。


 ゴブリンはルーンガルド側のものと遜色ない程度の動きや演出にしている。魔界のゴブリンはより凶悪さが増しているらしいので、あれぐらいだとまだ魔界の面々には物足りないと思ったがそれも杞憂だったようで、すっかりテンションの上がった魔界の面々は少しの休憩や昼食を挟みつつ三部作をしっかりと鑑賞したのであった。


 劇場からの帰路では魔界の面々が冒険者達を見る目に好意が増えていたりして……護衛のフォレストバードの面々も元冒険者だと伝えると魔界の面々から色々質問をされたりしていた。こういう反応は……こちらとしても幻影劇を作った甲斐があるな。


 そうして城への帰り道に、運動公園にも見学がてら立ち寄る。


「城に向かう橋の動く歩道と同じものですね。領民の健康促進という事で、体力と魔力を同時に遊びながら鍛えられる設備になれば良いなと造ったものです。まあ……城へ向かう橋で遊ばれると困るので、という点もありますが」

「なるほどな……。領民の健康促進か。良い考えだ」


 メギアストラ女王は思案しながらそう言っていた。幻影劇鑑賞と休憩、昼食の時間から逆算して貸し切りにできるようにスケジュールの計算をしてあるので、夕食までみんなと一緒に運動公園で遊んでいく事も可能だ。


「折角なので体験していきたいところですな。実は動く歩道は少し気になっていたのです」


 と、ファンゴノイド達。他の面々も乗り気なようなので運動公園で遊んでいく。スケートリンクの隣にある遊具場も、エルナータとラスノーテが一緒に楽しそうにブランコで遊んだりしていた。それを見守る親御さんというのも……ベヒモスと水竜とは思えないぐらいには和やかな光景だな。グレイス達もそんな親子の様子に表情を綻ばせたりしているし。


「なるほどなるほど。魔力の制御で案外色々な動きができるのですな!」

「おお。我らは身体を鍛えるというのはやや無縁ですが、これは楽しい」


 滑走場を満喫しているのはやはりファンゴノイド達だ。魔力制御を得意とする種族だからか、動く床を使った滑走も得意分野のようで、すぐにコツを掴んで鮮やかな動きを披露していた。地面を滑っていく色々な種類のキノコというのも中々にシュールな光景ではあるが。


 ……んー。魔力制御の訓練になるというのは……過去の七家の長老達も、もしかすると最初から塔の廊下や階段を日常から使う事で訓練になると想定していたのかも知れないな。実際現在の七家の長老達や母さんも意識してかどうかはともかく階段や通路で遊んでいた節があるし。まあ……建築した面々の意向については真相も不明だが。


 そんな調子で運動公園にてみんなと遊んでから城へ戻る。夕食には少し早い時間だったので城の中――水槽や模型部屋を見学もしようという話になった。

 水槽の光珊瑚育成も順調で、定着して段々と成長しているのが見られるようになってきた。水槽の中の石がぼんやりと光を帯びているのがそれだ。


「魔力をあげると、ゴーレムさんやイソギンチャクも手を振ってくれますが、光珊瑚もお礼を言うように明滅してくれたりするんですよ」


 と、アルケニーのクレアがそんな風に教えてくれる。

 城の使用人や隠れ里の面々にとっては水槽の光珊瑚やイソギンチャク、チビゴーレムは結構な癒しになっているとの事である。


「ふふ。それは何と言いますか、お世話のしがいがありますね」

「小さいゴーレムさんも相変わらず可愛いです」


 グレイスがそう言って微笑み、エレナも水槽の中で体育座りしているチビゴーレムと手を振り合って挨拶を交わす。


「光珊瑚とイソギンチャクもちゃんと育ってくれているようで良かったよ」

「環境維持機能も上手くいっているようね」


 俺の言葉にローズマリーもそう言って頷く。

 魔界の面々も水槽の中を覗き込んでチビゴーレムの仕事ぶりを見て笑顔になったりしていた。海の生物についても内陸部育ちの面々にはそれほど馴染みがあるわけではないので、そういう意味でも物珍しいのだろう。

 ミネラリアンのセワードは「このゴーレムには何となく親近感が湧く」との事であるが。


 そうして水槽を鑑賞から、アピラシアの模型部屋もみんなで見に行く。

 こちらに関してはカーラが特に興味深そうにしていた。


「ああ……これは自分でも作ってみたくなりますね。パペティア族として、こういう造形物を見ると楽しくなってきます」


 カーラはそんな風に言ってうんうんと頷いている。ミニチュアの街並みや家財道具についても「可愛らしいです!」と上機嫌そうだ。


「余としては元の姿の時の視点を思い出してしまうな」

「小さい者達の街はあまり馴染みがないが……メギアストラが言うならそうなのだろうな」

「建築様式は少々魔界とは違いますが、確かにそうでしょうな」


 メギアストラ女王の言葉に竜達が納得したように言って、ロギが笑う。

 そうしてフォレスタニア城内の施設を見学している内に夕食の準備も整ったようで、食欲をそそる匂いが漂ってくる。魔界のみんなにもフォレスタニア城での滞在を楽しんでいって貰えれば、俺としても嬉しいな。

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