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番外786 精霊と始祖の女王の相談事

「こっちはもう大丈夫だよ」

『それじゃあメギアストラ。一緒にいいかしら』

「うむ」


 みんなとの食事も済んでから頃合いを見計らってジオグランタに声をかけるとメギアストラ女王が応じた。

 ジオグランタは水晶板モニター越しで大丈夫との事で。メギアストラ女王も交えてジオグランタと話をする。どうやら魔界に関する事であるのは間違いないようだな。


『私としては別に秘密の相談というわけではないから、テオドールが必要だと思う相手を交えて話を聞いて頂戴』

「んー。誰かが相談事に混ざるかどうかは話を聞いてからかな? ただ、魔界に関する事のようだし、それならパルテニアラには最初から同席してもらった方が良いかも知れない」

「妾は構わないぞ。だがそういう事ならエレナとガブリエラも良いかな?」

『勿論』


 そうして相談に加わる面々も決まったところで、休憩所の一角でジオグランタの話を聞く。ジオグランタはこちらの準備が整ったのを見計らうと口を開いた。


『そうね。単刀直入に言うなら……魔界のこれからの安定の為に、龍脈を整える手伝いを頼めないかと思っていたの。テオドールの魔力循環だったかしら? あれがあれば可能なのではないかと思ってね』

「なるほどね。そういう事か」


 相談事の内容としては色々納得がいくものと言える。そもそもの魔界の不安定さについてはベルムレクスが原因というわけではないからな。

 昔から何度か災害が起きていたようだが、魔王国が建国されて儀式が行われるようになった事で魔界が安定したわけだし。


 ジオグランタが今考えているのは……儀式という対症療法ではなく、そもそも歪みや澱みが溜まらないように予防する。或いは不安定さを改善して根治を目指す方法の模索、ということになるだろうか。


「儀式を行わずに、災害が起こらないようにする方法を目指すっていう理解で良いのかな?」


 そう質問するとそれで正しいというようにジオグランタは頷いた。


『そうね。私の考えが的外れだったなら申し訳ないけれど』

「歪み、澱みの原因を調査するところまでなら循環錬気だけでも可能かな。原因の特定から環境を整備するなら迷宮核での分析と試算、実際の環境整備が必要になってくるかなと思う」


 そう答えるとジオグランタは笑みを浮かべる。


『十分だわ。私としては……次の魔王を継げる人を見つけた、なんてことも考えたんだけれどね。ルーンガルドというか、他国の領地を抱えているから難しいでしょうし』

「あー……。まあ……それは確かに難しいかな」


 と、苦笑する。

 フォレスタニアの管理体勢を後世の為にもしっかり構築しておかなければならないし、迷宮核を使っての仕事も色々あるからな。

 王というのは爵位を持っていてそれを家臣に与えたりするものなので、王であり公爵というところまでは仕組み的に無理とは言わないが、この場合二国に跨っての王と公爵だからな。現実的に考えれば問題がある。


 利益関係というか、その辺を公正にきっちりやるというのもそうだし。いや、魔王は世襲ではないからやや特殊ではあるが。


「そう言えば魔王の継承については何となくで理解していたけれど、ジオグランタが認めたらとか、そんな感じなのかな?」

『ええ。一国だけでなく、魔界の事を考えてくれる者。儀式を行えるだけの力を持つ者を継承者として選んできたわ。その点、実績があると信用もしやすい、というのはあるわね』


 ベルムレクスを倒すために戦ったのがその実績、という事になるのだろう。俺はそうした諸々の条件に合致してくるところがある、と。


「というわけで後継者を探すのは、中々に難しいのだな。余――というか、竜種には休眠期という問題もあったからな」


 メギアストラ女王が顎に手をやって思案するような様子を見せる。

 ああ。竜の休眠期か。寿命や身体機能に問題はなくとも魔王が不在の時期を作るのは儀式の上でも問題があるから、後継者を探しておくのは重要なのだろう。


「そういう事なら、魔界の歪みの問題が解決すれば、休眠期関係の問題も小さくなるんじゃないかな。夢の世界での意思疎通も可能だろうし、魔王の継承は難しくても力になれる事はあると思う」

『それはありがたいわね。というか……そうね。夢の世界もあると考えるとメギアストラの抱える問題については概ね解決してしまうのね』


 ジオグランタはそう言えばそうだった、というように頷く。


「しかしテオドールなら良き魔王になったという気もするな。支援や補佐をしてくれるというが、実力から言えば……ふむ。さしずめ影の魔王といったところか」


 と、割と冗談めかしてメギアストラ女王が言うが、それを聞いていた面々も納得顔で頷いていたりするのが俺としては何とも反応に困るというか。

 ともあれ、夢の世界での意思疎通については魔道具化も不可能ではないかな。


 そんなわけでジオグランタの話についてはこんなところだろうか。具体的な所についてはこれから詰めるにしても、相談事に対しては出来る限り応じるという事で。

 続いてはパルテニアラの相談事についてであるが。


「このままパルテニアラさんのお話を聞く形でも大丈夫ですか? それとも場所を変えたりする必要がありますか?」


 そう尋ねると、パルテニアラは「このままで良い」と首を横に振る。


「寧ろ、話の内容的にはメルヴィン王やクェンティンにも話を聞いて欲しいところではあるな」

「では――陛下達にも伺ってみましょう」


 というわけで、休憩所にて楽士達の音楽を聴いてのんびりしていたメルヴィン王やクェンティンに話を聞くと「勿論構わない」という返答を貰う事ができた。改めてメルヴィン王達を交えて休憩所の一角に集まり、パルテニアラの話を聞く。


「妾の相談事については……エレナに関してだ」

「わ、私ですか?」


 ジオグランタとの話が纏まった事にエレナは微笑みを浮かべていたが、急に自分の事に話題が飛んで少し驚いたような表情を浮かべると、パルテニアラは真剣な面持ちで頷く。


「そうだ。境界門の呪術的な守りを強固にしているのは妾と血筋や縁で結んだ刻印の巫女達がいるからこそ。ティエーラ様達に委ねても刻印の巫女とその血筋は二国で引き継いでいかねばならぬ。一般には明かせぬ事であるし……エレナは知っての通り、複雑な事情を抱えている。妾としては――エレナの過去や今の想いを知り、そして信頼されているテオドール達にならばと考えてしまってな。エレナの事を任せられると諸々安心できるのだが……どうだろうか?」

「それは――婚姻に関係した話、ですか」

「そういう事になる」


 血筋に関してとなるとそうなるだろう。

 同時にベシュメルク王家に連なる血筋の人物の婚姻に関する話でもある。だからパルテニアラはメルヴィン王やクェンティンにも同席してもらったわけだな。


「それは……パルテニアラ様……」


 次に俺が口を開く前にエレナが言った。パルテニアラの言いたい事を察して驚きを露わにしているようだ。


「そなたに事前に相談しては、テオドール達への好意の有無に関わらず身を引いてしまうと思ったからな。説明が難しいのでは縁談があっても信頼を結びにくかろうし、真相を知らせて更なる余人を境界門に携わらせるのも、危険が伴う。何よりそなたは……テオドール達と一緒にいて、楽しそうに見えた」

「それは……そうであったかも知れませんが」


 エレナが目を閉じる。そんなパルテニアラとエレナのやり取りを見守っていたメルヴィン王が口を開く。


「余としてはその婚姻そのものに異論はない。月の王家とシルヴァトリアに連なるテオドールであればベシュメルク王家の血筋とも見合うであろうが……まあ、そうした格式よりもこの場合に必要なものは当人達の納得であろうな。故にこの話についての口出しは差し控える。必要であれば助言はするが」

「私は摂政という立場故に口出しする権限はそもそもあるとは思っていませんが、エレナ殿下が幸福になれるのであればそれに勝るものは無いと思っています。と同時に、メルヴィン陛下と同じく、テオドール様達やエレナ殿のお気持ちこそが重要と思っていますよ」


 メルヴィン王の言葉を受けてクェンティンもそう言った。王侯貴族の縁談は自由になるものではなく、本来ならままならないものだが……。


「…分かりました。みんなとエレナさんを交えて、少し話をさせて下さい」


 そう言うと、居並ぶ面々も真剣な表情で頷くのであった。

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