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番外781 日常の平穏へ

「お帰りなさいませ、旦那様!」

「お帰りをお待ちしておりましたぞ」


 王城での歓待も終わり、アルクスのスレイブユニットとも合流してからフォレスタニアに到着すると、早速セシリアやゲオルグ達が笑顔で出迎えてくれた。

 タームウィルズ、フォレスタニアの家臣団や知り合い達も俺達が戻ってくるのを待っていてくれたようで、フォレスタニア入口の塔の上で俺達の出迎えに来てくれていた。

 国で急ぎの用事がない面々――ヒタカの妖怪達などはそのままフォレスタニアに遊びに来たりもしてくれているようだ。


 スティーヴン達とガブリエラも、後詰めでずっと頑張ってくれていたので休暇という事らしい。そのままフォレスタニアでのんびり過ごすとの事である。


「ただいまみんな」


 そう挨拶をすると、みんなも笑顔で応じてくれる。


「いやはや。邪精霊やその軍団も相当なもんじゃったが、みんな揃って帰って来られたのう!」


 と、アウリアが笑みを浮かべて胸を張る。今日は戦地から帰ってきたからという事もあるのかヘザーとベリーネもアウリアと行動を共にしており、楽しそうな笑顔を浮かべていた。


「そうですね。こうして帰ってきたところで皆に迎えて貰えると嬉しいですよ」


 そう答えるとアウリアもうんうんと頷いていた。


「国元でもジークムント様と共に父上に報告をしてきたわ。シルヴァトリアでも魔王国の存在を公表し、国交を樹立していこうという事になったわね」

「ふふ、アドリアーナも無事で良かったわ」

「ステフもね」


 ステファニアと笑顔でハイタッチするアドリアーナ姫。

 マルレーンも月神殿の巫女頭ペネロープと抱きしめ合ったりして、嬉しそうな様子だ。

 孤児院のサンドラ院長や子供達も姿を見せていて、シーラやイルムヒルトと再会を喜び合っていた。そうしたマルレーンやイルムヒルトの様子に表情を綻ばせているクラウディアである。


 コルリスの番候補であるベリルモール……アンバーも迎えに来ていて、コルリスと再会の抱擁を交わしていたりして、中々和む風景だ。


「帰ってきたという実感がわきますね」


 グレイスがそんな光景を目にして微笑む。


「みんなと会えると安心します」

「まあ、確かにそうね」


 くすくすと笑って言うアシュレイの言葉に、ローズマリーが羽扇で口元を隠しつつも頷く。

 魔王国の面々は……今日のところは大使扱いとして王城に宿泊する。みんなは帰還のお祝いという事でそのまま居城へ遊びに来てくれるとの事だ。


「留守中の領内の様子はどうだったのかな?」

「大きな問題はありませんでしたぞ。何分境界公は冒険者からも敬われておりますからな。平和なものです」


 ゲオルグがそう言ってセシリアも同意する。


「執務に関しては平常ですね。隠れ里の方々もテオドール様やオズグリーヴさんの帰還を待ちつつも、落ち着いていらっしゃいましたよ。お仕事や街での暮らしにも馴染んできている印象があります」


 セシリアのその言葉に、出迎えに来ている隠れ里の面々が一礼する。オズグリーヴもその反応に穏やかな表情を浮かべ、テスディロスやウィンベルグ、オルディアも笑顔を見せていた。

 執務だけでなく水槽の管理や植物園の作物の育成状態も順調との事で……魔界は災害だベルムレクスだと激動であったが、タームウィルズやフォレスタニアは平和であったようだ。それは何よりだ。


 そんなわけで出迎えに来てくれたみんなと共に城へ向かう。城に繋がる橋を渡っていると、湖面にマギアペンギン達や水竜親子、魚人族が顔を見せたりして。嬉しそうな声を上げるティールと共に手を振ると、水面からみんなも手を振ったりしてくれた。


「とりあえず遊びに来てくれたみんなは、城でのんびりしていってくれて構わないよ。執務を確認するから、それが一段落したら合流しようかな」

「ふうむ。では、楽しみに待たせて貰おう」


 なるべく早く確認や処理しなければならない物を片付けて、明日以降しっかり執務を進めていけば良い。夕食には間に合うだろうしな。




 フォレスタニアとシルン伯爵領で、俺やアシュレイの確認や決済が必要なものを優先して処理していく。

 セシリアやケンネルも心得たもので、そうした優先順位の高い書類は別に分類して執務を進めやすいようにしてくれていた。


「分類してくれているから作業も捗るわね」


 と、ローズマリーも書類に目を通しながら頷く。みんなで作業を進めればそうした執務もさほど長くはかからない。

 魔界の調査も割と時間がかかると予想していたのだが、魔王国が協力してくれて一気に魔界の実情把握が進んだ事や、ジオグランタを交えた境界門の管理体制が確立できた事もあり、予想していたよりも早く戻って来られたからな。


 そうしてみんなで手分けして一先ずの執務を進め、それから迎賓館のサロンへ戻ると、アルバートやオフィーリアと共に、パペティア族のカーラが姿を見せていた。


 カーラに関しては公的な使者としての立場というよりは俺達の仕事の手伝いであるとか、手記を残しにきたという側面が大きいからな。歓待が終わっても王城には宿泊せず、フォレスタニアに来て明日からの仕事の打ち合わせを進めるというわけだ。


「お邪魔しています。いや、フォレスタニアの風景やお城の庭も綺麗ですね」


 と、カーラは一礼しつつも、少し弾んだ嬉しそうな声色で言った。


「カーラさんも工房の仕事の手伝いを楽しみにしているみたいですね」


 ビオラが笑みを浮かべてそう言うと、カーラがこくんと頷く。

 というわけでカーラも楽しみにしているようなので、料理ができる前に明日からの工房の予定等についても話し合っておくことになった。


「陽光対策の魔道具は、王城お抱えの魔法技師達も動いてくれているから魔王国から纏まった人数が来ても対応できるかな」


 と、アルバートが思案しながら言う。


「あの魔道具なら出国する時に返却してもらって、使い回す形でも問題ないからね」


 魔界では必要のない魔道具だからな。現状でも翻訳の魔道具や時差対策の目覚まし、入眠用魔道具もそうやって運用しているところがある。ある程度数を揃えてしまえば当面は大丈夫だろう。


 それから……今回カーラがやってきた理由でもある、ティエーラとコルティエーラ、ジオグランタのスレイブユニットについての話。


「素材についてはこれから考えるとして……ゴーレムの技術を流用すれば、当人に似せた上で表情を変えられるようなスレイブユニットも作れるかなと考えています」


 当人に似せるにしても生体パーツとなるとホムンクルス作製だとかの領域になってしまうし維持も大変だ。その点一部をゴーレム化すれば……例えば素材が硬質なものでも、本物と遜色のない表情などを再現できるだろう。

 炎竜やゴブリン王の魔石から作る魔法生物にも応用できるかも知れないな。


「それは――画期的ですね。パペティア族としても興味があります」


 カーラがこくこくと頷く。カーラが興味を示すのは分かるな。この辺の技術を応用できれば、パペティア族も表情を自由に変えられるようになるだろうし。


『魔法技術についてはよく分からないけれど、そうやって相談をするのは楽しそうな雰囲気ね』

「ふふ。私やコルティエーラとしても、仕上がりを楽しみにしています」


 ティエーラはサロンの椅子に腰かけ、傍らのコルティエーラとヴィンクルや、水晶板越しのジオグランタと共に俺達のやり取りを見守っている様子だ。

 その背後でシャルロッテが孤児院の子供達に混ざって動物組に抱きついたりしてご満悦なのは……まあ、いつも通りではあるかな。


 そうして髪の毛はアルケニーの糸を使って染色するとか瞳の素材はどうするだとか、色々と話し合いを重ねるのであった。

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