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番外760 討伐に向けて

 対策と傾向を色々と話し合い、そうして俺達は魔王城に宿泊する事になった。

 ネフェリィとモルギオンの家に宿泊しても良いのだが、一応俺達は魔王国の客としてきている。迎賓館に泊まった方が賓客としての扱いが分かりやすいという事で、家財道具の類を早速用意してくれたらしい。


 というわけでそちらに宿泊させてもらうことになった。魔道具類は既に敷設済みなので台所も風呂もトイレも使える。照明器具や鏡台も用意されていたりして、割と至れり尽くせりだ。

 巨人族も宿泊可能な仕様なので体格が大きめなアルディベラとエルナータも迎賓館に宿泊できる。


「ルーンガルドの皆の趣味嗜好に合っているとも限らんのでな。まずは部屋の様子を見てもらい、後で不都合がないか確認しに人を遣わせよう」


 とメギアストラ女王は言っていた。そんなわけでみんなと一緒に部屋で寛いでいると扉をノックする音が響いた。顔を出すと、パペティア族の女官がそこにいて、顔を出した俺を見て一礼する。


「お休みのところ恐れ入ります。家財道具が使いにくい場合や肌に合わないようであれば別の物を手配するようにと仰せつかったのですが……如何でしたでしょうか」

「先程一通り見てみましたが良さそうですね。お心遣い感謝しますと、メギアストラ陛下にお伝え下さい」


 そう答えるとパペティア族の女官は胸のあたりに手を当てて丁寧に一礼する。


「その言葉を聞けば陛下も喜びましょう。何かありましたらご用命を」


 そう言って女官は退室していった。

 実際魔王城側が用意してくれた家財道具ということもあり、広々とした寝台やふかふかとした中身がたっぷりと詰まった寝具、装飾の細かい鏡台等々……かなり上等なものを手配してくれたのだというのが分かる。


 それでも俺達がルーンガルド出身なので、使いやすいかどうかを気にしてくれているのだろう。まあ、ギガース族あたりとは体格以外はそこまで身体の作りは変わらないようなので、特に問題はない。人数が多いという事もあってギガース族用の寝台と寝具を手配してくれた、という事もある。

 シーラとマルレーン、ステファニアが一緒になって楽しそうにごろごろ転がっていたりもするが……それも使い勝手は良好だという事の裏返しでもあるな。魔王城での滞在中も心地良く過ごせそうで何よりだ。


 イルムヒルトの奏でる音楽に耳を傾けながら、ソファに身を沈める。そうしてみんなで寛いでいると、クラウディアが目を細める。


「ベルムレクスの問題はあるにしても、ルーンガルドのみんなと魔界のみんなと……関係が上手くいきそうなのは、嬉しいわ」

「本当に……。魔界探索前はどうなるものかと思っていましたけれど」


 クラウディアの言葉にグレイスが微笑む。ああ、それは……俺もそう思う。目を細めて頷き、みんなと共にゆったりとした時間を過ごすのであった。




 そうして、一日が明ける。迎賓館は練兵場前という事で防音の術式が施してあるが、窓の外を見てみれば魔王城の武官達が訓練に勤しんでいた。

 加減されているとはいえ闘気や魔力弾が飛び交っていたりと……武官達の訓練にも随分と気合が入っている様子だ。

 というのも、メギアストラ女王やロギから、南方に住まう雪山の蛮族を不死化して従える危険な存在についての布告が出された、という背景があるからだろう。


 これまでは想念結晶から送られてくる力が弱まるという懸念があったから脅威について喧伝せずに秘密裡に対策が練られてきたが、災害を防ぐための道筋が示され、ベルムレクスの居場所も分かったという事で、国を挙げての対応となったわけだ。


 これで魔王国も臨戦態勢というわけだが……俺達に関しては外国からその情報を齎し、支援を行ってくれる賓客という扱いになっているという話である。


 そんなわけでベルムレクス討伐に向け、俺達のこれから行う仕事としてはルーンガルドとまめに行き来しつつ魔道具作りや援軍、支援物資の輸送なども行っていく予定だ。

 まずは魔王国の南方主要都市に転移門を設置し、対応力を上げるのが現状での優先事項となる。

 その為、今日は最初に運んできた支援物資をシリウス号から降ろしたら、南方の都市に向かって移動するという事になるだろう。


 ただ、ファンゴノイドは魔王国国内では姿を隠しているという事もあり、ボルケオールは記録のために同行こそするものの、あまり公的な立場では動けない。その為、エンリーカがメギアストラ女王の名代となり、南方への連絡役等になるとの事である。エンリーカの護衛はブルムウッド達、というわけだ。


 そんなわけで朝食を済ませたら早速動いていく。シリウス号に積んでいた支援物資を、改造ティアーズやゴーレム達の手で迎賓館の前まで搬入してもらい、その内容を確認していく。


「おお……これで空中戦ができるようになる、と」

「重装のギガース族が空を軽々と飛んでくるというのは……中々の脅威ではあるな」


 空中戦装備の魔道具を見て、ロギが感心したように言い、メギアストラ女王が笑う。


「はい。多少の慣れは必要ですが、これがあれば地上部隊であった面々も飛行する敵への対抗が容易です。ただ……これを導入するに当たっては元々の飛行能力を持つ方々との軋轢が起こらないように調整をする必要があるかも知れませんね」

「確かに……そういった問題も予想されますな。しかしまあ、元々飛べる者達ならばこそ、その立場に胡坐をかいているわけにもいきますまい。より切磋琢磨し、練度を上げられる好機というもの。我が騎士団に弱音を吐くような軟弱者がいたら……それは性根と技を鍛え直す良い機会というものです」


 と、魔王国の飛行部隊を預かる騎士団長であるロギがにやりと笑う。流石に豪気というか、心強い事だ。


「では、空中戦装備の作製も含めてよろしくお願いします」

「よかろう。それに関しては我が国の技術者も動員しておく」


 魔道具作製に関しては魔王国の魔法技師や職人も動員するという事で話がついているからな。

 それ以外にもレイメイやゲンライ仙人、その弟子のジンオウ達が作ってくれた攻撃用の札や身代わり護符を渡してその使い方を説明したり、ルーンガルド東国由来の品々も魔王国に渡す。


「貴重で高度な技術ばかりだな。余らが正しい目的の為に使うと信じてくれたからこそ。信頼を裏切らないように気を引き締めねばな」


 それらの品々を見たメギアストラ女王が真剣な表情で言うと、ロギもまた四肢に闘気を漲らせつつ頷いていた。魔王国側の面々の戦意も相当なものだな。




 最初に運んできた物資を搬入して引き渡し、使い方も説明したところで、今度は南方への転移門設置の為に、シリウス号に乗り込んで動いていく。


「凄い風景ね……」


 と、アドリアーナ姫がシリウス号の艦橋で魔界の景色を見て驚きの言葉を口にする。


「私達も最初に見た時は驚いたわね」

「魔界に住んでいる人達にとっては、故郷の光景、という感覚らしいわね」

「ああ。シルヴァトリアも雪国だから、その感覚というのは何となく分かる気がするわ。まあ、魔界とルーンガルドの間程の変化ではないけれど」


 ローズマリーとステファニアの言葉に楽しそうな笑みを返すアドリアーナ姫である。確かに、暖かい土地しか知らない者がシルヴァトリアの暮らしを見たら、色々驚きがあるだろうな。


「ああ。雪国と言えば。ベルムレクスの潜んでいる土地は雪山という話ですが……南方主要都市の気候はどうなっているのでしょうか?」

「都市部は平野部にあり、気候はそれほど王都と変わりません。辺境を越え、問題の一帯に差し掛かると急激に寒くなる、という話ですね」


 俺の疑問にエンリーカが応えてくれる。では、やはり地形的なものというよりは、環境魔力がそうした場所を形成している、と考えるべきだな。

 南方に兵力はあっても雪山地帯に攻め込む事は想定していないので、防寒対策が必要だ。その辺も支援物資が足りなければ魔法で補うことになるだろうな。

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