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番外757 王達と魔界の民と

「では、門を開きに行きましょうか」

「うむ。ルーンガルドか。些か緊張するな」


 メギアストラ女王が笑った。

 木魔法と珪砂を使って硝子窓も作って迎賓館も仕上げたところで、再び地下区画へ移動する事となった。


「始めよう」

「はい。パルテニアラ様」


 そうして……みんなの見守る中でパルテニアラとエレナがマジックサークルを展開。境界門の――枠の内側が光を放ち、ルーンガルドと繋がる道が開かれた。


 これまでの行き来で分かっていた事だが、こうして門を開くと互いの世界の魔力が僅かながら移動してしまう。微小とはいえ、門を開く度に影響があるというのが良いとは思えないので、門周辺に結界を張りつつ、環境魔力を術式的に制御してやることで、門を開いた際の影響が出ないように細工を施した。


 その為、これまでのように門が開いても互いの世界の魔力が行き来するという事はない。静かな物だ。

 そして、行き来にも契約魔法と強力な呪法防御が働くので、魔王城の奥にあるこの状態なら……門を解放したままにしておく、という事もできるだろう。呪法的な干渉をしたり二つの世界に悪意がある者が近付いただけで察知し、門も閉じる事ができるからな。


「今の状況では、余は流石にあちらには行けないな。土産話を楽しみにしている」

「お任せ下され」


 メギアストラ女王の言葉に、相好を崩すボルケオールである。こちらから魔王国側へは訪問済みという事で、今度は魔王国の面々がルーンガルド――ヴェルドガル王国を訪問するという事になっている。ルーンガルドから支援を受けるのなら使者を立て、挨拶に行くのが筋だ、というのがメギアストラ女王の見解だ。


 メギアストラ女王の名代であるボルケオールとエンリーカ、その護衛であるディアボロス族の面々と、ベヒモス親子が今回はヴェルドガル王国へ向かうという事になっている。


 アルディベラとエルナータに関してはエルナータがルーンガルドを見てみたいと希望したからな。ベヒモス親子は魔王国属というわけではないが、だからこそという部分がある。

 俺達が掲げるのは魔王国限定ではなく魔界との友好と二つの世界の平和だからな。ベヒモス親子の招待はそういう意味でも意義のあるもの、と言えるだろう。


「では、参りましょう」


 そう言ってみんなで境界門を潜る。


「……おお。これは――」


 と、ボルケオールが声を漏らす。

 迷宮側で境界門を置いた場所は歓迎の意味を込めた庭園だ。魔界の面々にどう映るかは分からないが。アーチやライトアップした水路に加えて、光る花――フェアリーライトが自生している。


「綺麗なところ……」


 エルナータがそう言うとオレリエッタも頷いて、フェアリーライトに見入っている様子であった。魔界とルーンガルドの住民ではやや感性が違うのだが、どうやらフェアリーライトは魔界の住民から見ても綺麗な物と認識されるようで。


「この庭園を造ったのはテオドール君なのよ」

「魔界から誰かが訪れてきた時に歓迎の意を示せるようにというわけだな」

「この区画の守りを預かる者として誇らしく思っております」


 イルムヒルトの言葉を補足するようにマクスウェルが言って、アルクスも一礼する。


「まあ、迷宮の力を借りてのものではありますが。今回はあまり立ち寄れませんが、防衛用施設の外に滞在用の施設も造ってありますよ」

『ふむ。これは余が正式にそちらに訪問できるようになった時が楽しみだ』


 俺の言葉に、門の向こう側からこちらの様子を見ながら言うメギアストラ女王である。

 ルーンガルドと魔界間の魔力の流入、流出もないようで。これなら大きな問題もないな。

 要塞の外でシリウス号を召喚したら、フォレスタニアの居城へ向かうとしよう。




 クラウディアの転移魔法でフォレスタニアの居城へ飛ぶ。


「ここは自然の光じゃなくて人工的に再現された環境だけど……明るすぎたりはしないかな?」

「確かに外は少し明るいが……このぐらいならまあ、問題ないと思う」


 ヴェリトが周囲を見回しながら言う。ボルケオールはその言葉に頷いていた。

 フォレスタニアの明るさは人工的なものではあるが明るさは外と遜色ない。時刻としてはもうすぐ夕方だ。


「今が大丈夫ならこれから少し暗くなっていきますから、段々と過ごしやすくなっていくかも知れませんね」


 グレイスが笑みを浮かべる。


「そうだね。ただ、屋内でこの反応だから……やっぱりルーンガルドの自然光は魔界の皆にしてみると、少し明るすぎるかも知れない」


 今後の事を考えるなら、個人規模での闇魔法のフィールドを発生させる魔道具は常備しておく必要があるな。


「気を遣っていただけるのは嬉しく思います」


 ボルケオールはそう言って目を細めていた。

 屋内なら問題もなさそうなのでそのまま居城を移動する。

 迎賓館の広間へと向かうとメルヴィン王やティエーラ達高位精霊と共に、各国の王達、城のみんなが俺達の到着を待っていた。


「おお。戻ったか……!」


 顔を合わせるとメルヴィン王が相好を崩し、居並ぶ面々も笑顔で迎えてくれる。


「はい。魔王国より使者の皆様をお連れしました。メギアストラ女王陛下の名代、ボルケオール殿とエンリーカ殿です」

「ご紹介に預かりましたボルケオールです」

「エンリーカと申します」


 居住まいを正し、自己紹介をするボルケオール達である。翻訳の魔道具はきちんと機能しているようだ。続いて護衛役のディアボロス族の面々。ベヒモス親子と、順番に紹介していく。


「魔王国の武官、ブルムウッドと申します」

「ヴェリトです。よ、よろしくお願いします」

「オ、オレリエッタです」


 落ち着いた様子のブルムウッドと、緊張した様子のヴェリト達である。


「それから、この二人は魔王国属ではありませんが、魔界で仲良くなった僕の友人です。人化の術を使っていますが、本当はもっと大きな姿ですね」

「アルディベラだ。よろしく頼む」

「エ、エルナータって言うの。よろしく、ね」


 楽しそうに笑うアルディベラと、アルディベラの腰のあたりから顔を出し、やや人見知りしている様子のエルナータである。


 魔界の住民達の容姿については報告済みという事もあって、みんな好意的に迎えてくれている様子だな。

 メルヴィン王達もそれぞれ自己紹介をすると、ヴェリト達はその肩書きに目を瞬かせていた。


「魔界の子とは無事に会えたようですね」


 ティエーラは俺に顔を向けると、そう言って微笑みを浮かべた。


「ああ。お陰で加護も貰えたよ。ジオグランタもティエーラ達に会えるのを楽しみにしているって」

「ふふ。それは楽しみです」


 そう言って四大精霊王やテフラ、フローリアと笑顔を向けあうティエーラである。コルティエーラも明滅し、ヴィンクルと頷き合っていた。


「テオドールが作戦行動中である為に公の席で迎える事ができずに残念に思う。だが、ルーンガルドに名を連ねる国々の王の一人として、魔界からこうして客人を迎える事が出来た事を嬉しく思う」


 メルヴィン王がそんな高位精霊達の反応に笑顔を見せつつそう言うと、エルドレーネ女王も頷いて口を開く。


「魔界がどのような場所なのかという不安もあったが……こうして手を取り合える隣人がいてくれた事を喜ばしく思っている」

「テオドールから魔界の窮地については話を聞いている。今日ここに集まった我らは皆、力になりたいと望んでいるとその意思を確認しあった。その事ははっきり伝えておこう」


 イグナード王がそう言って笑みを浮かべる。


「ついては私達同盟の力を結集し、魔王国を支援する事をここに宣言します」

「それは……かたじけない。陛下の名代として……魔界に住む者を代表し、感謝の気持ちを伝えたく存じます」


 オーレリア女王の言葉にボルケオールがそういってお辞儀をする。


「ルーンガルドと魔界は、浅からぬ因縁こそあるが共に今回の困難を乗り越える事が、この先の友好の礎となる事を願っておる」


 と、エベルバート王が言う。


「私達はこの付近ではなく東の国の出身ですが……魔界の事は重要視しています」

「どうか見知りおきを頼む。我が国に住まう妖怪達も力になりたいと意気込んでいた」


 シュンカイ帝やヨウキ帝も魔界の面々に挨拶をする。

 それにレアンドル王やファリード王、クェンティンやデメトリオ王、コンスタンザ女王と、それぞれボルケオール達と言葉を交わしたり握手をしたりして、丁寧に挨拶を行う。


 何はともあれ……こうして無事にルーンガルド側の同盟各国の面々も魔界の事態収拾への協力を宣言し、それをお互いに確認できた、というわけだ。

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