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番外756 二つの世界を繋ぐ為に

 というわけで、資材置き場の奥の壁から、更にスペースを拡張していく。資材置き場は少し前まで魔力増強剤関係の資材で埋まっていたらしいが、今は部屋の4分の1程度を木箱や樽等が占有しているだけで、広々としている。最終的には残っている資材もきっちり使い切る、との事である。


 魔法建築を行っていく上で、一時的に建材を退避させる場所として使っても問題無さそうだ。


 まずは壁の部分を加工し、奥への通路から拡張していく。

 壁に手をついて調べてみると構造強化はされているものの……特に問題なく魔法建築を始めていけそうだ。


 とりあえずメダルゴーレムを使って手早く通路を作ってしまおう。メダルゴーレムなら封鎖したい、という時にも対応が容易だしな。

 壁にメダルゴーレムを埋め込んで変形機構を組み込む。壁の向こうは岩盤が続いているので、ロックゴーレムに変えながら通路を構築。ロックゴーレムは資材置き場に送ってブロック化して積んでおく。


 空間が開いた分、岩盤の脆い箇所は構造強化で補ったり、亀裂のある部分を石材で埋めたりしながら進んでいく。ここはあくまで仮設の作業用通路に過ぎないので、あまり拡張する必要はないが、この通路を抜けた先に、結構大きな空間を造る必要がある。


 というのも、ルーンガルドと魔界間でシリウス号を行き来させる為に、エルベルーレ遺跡近くに造った地下拠点と同様、飛行船を収容できるドックが必要になるからだ。


 他の間取りを考えていくと、まず最も重要な魔界の門――改め境界門を置く区画が必要になる。次に、魔王城にとって重要設備である儀式場を通らずに外に出られるように転移門を置く区画。

 それから最後に今回のようなケースにおいて支援をしやすいよう、それなりの人数や資材が収容可能な設備を構築していく必要がある。


 儀式場に隣り合う位置にそうした設備が作られる形だが……全体を結界や防御呪法で覆い、壁や施設を破壊するといった行動を難しくしておく。


「施設全体を境界門の置かれる場所として関連付けてやれば、より強固な呪法を働かせる事が可能になろう」


 パルテニアラの言葉に頷き、その呪法をより強固なものにする為の案を出す。


「境界門、転移門、周辺設備。これらの使用や立ち入りが許されるのは、二つの世界における友好の為と位置付け、施設の立ち入りや行き来の際に契約魔法で結びつけてやれば良さそうです」

「それらを破ろうとした者や、施設を破壊しようとした者には、強力な呪法が作用するというわけですね」


 俺の言葉をエレナが補足してくれる。そうだな。技術的にもパルテニアラとエレナ、それから契約魔法に長けたクラウディアがいてくれれば可能だろう。


「余も設備を強固にする事には諸手を挙げて賛成する。魔石や資材等で必要な物があれば遠慮なく伝えてくれ」


 と、メギアストラ女王。バックアップしてくれるのは有難い話だ。「ありがとうございます」と礼を言うと、メギアストラ女王は満足げな笑みで頷く。


 基本的な方針が纏まったところで分解魔法を使って岩盤を削ったり、岩をゴーレム化したりして、設備に十分なスペースを確保していく。


「セラフィナ。どうかな?」


 しっかり構造強化を施したところでそう尋ねると、セラフィナは天井や壁面を軽く掌で叩いて「うんっ。大丈夫」と笑顔で答えてくれた。


「ん。ありがとう」

「ふふっ、どういたしまして」


 そんなやり取りを交わしつつそのまま俺の肩に乗ってもらって作業続行だ。ブロック化して一時的に資材置き場に行ってもらっていたゴーレム達を呼び戻し、そのまま建材として使っていく。


 施設の基礎となる一番下の階層に境界門を安置する区画を構築する。ここには円形の広間を作り、床や壁、天井に幾重にも呪法や魔法陣を張り巡らせる予定だ。下から上へと防御呪法が設備全体を覆うわけだな。


 境界門区画から階段を登った所が飛行船ドック。そこから転移門の設置区画と滞在用施設にそれぞれ移動できるようにしておく。この辺は前の地下拠点とあまり構造的にも変わっていない。最終的に施設から外に出る方法が転移門になる、というだけの話だ。


 飛行船用のドックも前と同様に、ルーンガルドの風景を幻影として映し出せる魔道具を設置しておく。

 動作テストを行うと、それらを見るのは初めてであるメギアストラ女王やベヒモス親子、ロギ、エンリーカ、セワードも興味深そうにルーンガルドの風景を眺めていた。


 境界門を移動し、円型広間の中心に据える。そこから防御呪法の為の魔法陣を構築していく。


 床に溝を掘り、そこに魔王国側の用意してくれた魔石の粉を流し込む、というのはいつも通りだ。

 コルリスがレビテーションのかかった樽を抱え、ステファニアの指示通りに傾けて床の溝に粉を入れていく。この辺は分担作業だが、みんなも慣れたものだ。

 壁、床、天井に至るまで十重、二十重とも言える程の魔法陣を描いているが、それほど時間もかからず作業を終える事が出来た。


「床の魔法陣は、頂いた図面通りです」

「うん。俺も確認した」


 アシュレイの言葉に頷く。2重チェックをして魔法陣に間違いがない事を確認。

 それから術式の起動ということで居合わせた全員に立ち会って貰って、防御呪法構築の為に動いていく。


「みんなで門の周りに並んでもらえますか? このまま契約魔法と防御呪法を構築します」

「基本的には、同じ文言の宣言で問題ない」

「承知した」


 俺とパルテニアラの言葉に、メギアストラ女王が頷く。

 門の周囲に並んでパルテニアラとエレナ、クラウディアがマジックサークルを展開。

 最初に防御呪法の理念、目的を宣言し、それに同意する旨をみんなが宣言する事で契約魔法を結び、防御呪法をより強固なものにする、というわけだ。


「魔王国の王、メギアストラ=ジオヴェルラの名において、二つの世界の友好の為に施される防御呪法の理念、正当性をここに認める」


 宣言をみんなで重ねていく。その度に光が広間に満ちて、術式が強固なものになっているのが分かった。

 そうして全員の宣言が終わったところでクラウディアが契約魔法を、パルテニアラが防御呪法をそれぞれ発動させた。境界門から四方に輝きが走り、区画全体を覆っていく。


「これで一先ず、境界門の防御に関しては万全そうね」


 ローズマリーが光に満ちた広間を見て静かに頷く。そうだな。後はそれぞれの設備を仕上げていけば一先ず完成だ。ルーンガルドからの支援体制を確立する為にも、このまま転移門も設置していくとしよう。




 転移門の使用条件も、境界門の区画に通じる為に防御呪法に縛られる。要するにルーンガルドや魔界の間の平和を乱すような目的を持つ者は転移門を使用できない、ということだ。安全性は高めなので転移門の片割れは魔王城の敷地内にある練兵場の隅に設置する事となった。


 迎賓館を建て、その地下に転移門を設置する、というわけだ。

 ベルムレクスに関する問題は残っているとはいえ、将来的にはルーンガルドの国々との交流に関する話も公になるだろうし、表向きにはルーンガルドから直接要人が飛んで来られる場所、という位置付けになるだろう。


 そんなわけで地下拠点構築時に出た余剰な石材も活用し、魔王城で働いている武官、文官からも見えるところで魔法建築を行っていく。

 迎賓館として使える洋館というのは割とあちこちで造り慣れているので、こちらはあまり奇を衒うことなく手早く造っていく。


 ルーンガルドの建築様式にした方が魔界の面々としても物珍しいだろうというわけだ。但し、扉や通路等は大きめにしてある。ギガース族も往来が簡単なようにと考えた結果である。


「おお……。あの御仁がヴェルドガル王国から来られたという高名な魔術師殿か」

「凄まじい速さと精度の魔法建築だな……。あんなものは見た事がない」


 と、武官や文官の間で話題になっていたりするが……。まあ、こうやって衆人環視の中で魔法建築するのも割合慣れているので平常心で進めていくことにしよう。

 風呂やトイレ等、必要な魔道具を敷設。家財道具等々は後から用意すれば良い。迎賓館の地下部分に転移門を構築する。


 転移門の意匠については、片方の柱にルーンガルドの風景。もう片方の柱に魔界の風景を描いてみた。ルーンガルドは草原と花々。空に浮かぶ月と王城セオレム。魔界は魔王城とその周辺の風景といった具合だな。なるべく平和な風景という事で、魔王国の面々にイメージを聞いて参考にしたりしている。


「素敵な意匠ですね」


 と、それを見たグレイスが表情を明るくし、マルレーンもにこにこしながら頷く。


「ティエーラとコルティエーラ、ジオグランタを意匠に、とも思ったんだけどね」


 世界を司る精霊達は公にできない情報でもあるからな。


「ん。この風景でもそうとも言えなくもない」


 そんな風にシーラが言う。まあ、確かに……風景というか世界そのものだしな。

 ともあれ、これで境界門を開き、二つの世界で連係を取る準備は整ったと言えるだろう。

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