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番外754 ルーンガルドの環境は

 さて。魔界の扉移設に当たっては幾つかの事を行わなければならない。

 まず地下拠点からジオヴェルムへの移送と、ジオヴェルムに到着してからの安全確保。

 それからルーンガルド側では対ベルムレクスへの支援を行うために多少利便性を上げる必要があるだろう。当然ながら、こちらもセキュリティと両立した体制を確立する必要がある。


 これはジオヴェルムに魔界の門をきちんと設置してからルーンガルド側の方にも手を加えるという具合に、順番に進めていく事になるかな。


「では――無事に戻ってくるのを待っている」

「気を付けてな」

「いってらっしゃい」

「はい。皆さんもお気をつけて」


 メギアストラ女王やアルディベラ、エルナータが見送りの言葉をかけてくれた。こちらからも返答をしながらシリウス号に乗り込む。アルディベラとエルナータに関しては元々あの辺で行動していたという事もあり、ベルムレクスがこちらの事を認識したのなら門の回収に行く俺達には同行していない方が良い、という判断だ。


 ベルムレクスの探知の目や妨害があるかが未知数だからな。魔界の扉に対してあまり積極的でなかったのも、自身の存在そのものをベシュメルク側に察知させない為だったと考えれば頷ける。

 魔界の扉を探し当てていたら呪法が反応してパルテニアラが感知できるからな。その判断は間違っていない。

 ただ――ベルムレクスがそうやって慎重であるが故に、ザナエルクの在位期間を見逃してくれたのは僥倖だ。


 ともあれ、ベヒモス親子が王都で待機するのは、エルナータを守る為でもあるが、アルディベラはベルムレクスの手勢と戦う気満々なので、手札を隠すという意味合いもあったりする。


 魔王国からはボルケオール、ブルムウッド達、ディアボロス族の面々が同行してくれるというわけだ。人員の点呼を行い、間違いがない事を確認してから、アルファに視線を向けると、こくんと頷いてシリウス号が浮上する。そうして迷彩フィールドを纏い、地下拠点に向かって移動を開始するのであった。




 迷彩フィールドを纏ったまま比較的高空を高速移動して地下拠点へ向かう。到着してシリウス号を地下拠点に収容したところで、まずはアルクス本体をボルケオールやディアボロス族に紹介する。


「門番を任されるわけだ。納得した」

「恐縮です。よろしくお願いします」


 ブルムウッドが言うと、アルクスは静かに頷いて握手をしたりと丁寧に対応していた。門番として、魔界の住民とのファーストコンタクトは上々といったところだろうか。そんな様子にクラウディアが表情を綻ばせ、マルレーンもにこにこと頷く。

 そんなわけで、いつも通り状況の確認から始める。


「何か異常は?」

「静かなものですね。ベルムレクスがこの付近に当たりを付けている可能性も考慮し警戒度は上げていますが、現時点では異常がありません」


 アルクスが言うと、モニターを確認しているティアーズ達と各所に配置されたハイダー達も、異常なし、と身振り手振りで伝えてくる。


 そうだな……。手出しをしてくるなら俺を標的にした遠隔呪法なのだろうが、向こうには俺の見た目が感知できてはいない。呪うべき相手の出自が分からないし触媒もないから呪法の効果も薄いのだ。


 それに地下拠点はパルテニアラが基本部分を作っただけに、呪法に対しての防御が厚い。となると……ベルムレクスとしても動きにくい部分ではあるか。俺としては……この場で攻撃を仕掛けてくるより……実際に戦うまで手札を伏せてくる方がやりにくく感じる。


 このタイミングで来るとしたら監視の目か。だがそれは迷彩フィールドを用いて五感や魔力での感知を防いでいけば対処可能だろう。このまま外を監視しつつ地下区画のみで作業を終えて撤退する、というのが理想だ。


「監視は拠点を引き払うまでそのまま続行。何か気付いたら、こっちが作業していてもすぐに教えて貰えると助かる」

「分かりました」

「ん。私も監視を手伝う」

「それじゃあ私も」

「では、僕達も一緒に」


 アルクスが頷き、シーラとイルムヒルト、シオン達もモニターの監視班に加わる。うん。この面々ならモニターの監視にも慣れているし五感も鋭いからな。


 という訳で……まずは一番大事な魔界の門の移動からだ。パルテニアラとエレナがマジックサークルを展開すると……菱形のまま宙に浮かんでいる魔界の門が動かせる状態になった。門は結構大きいが、浮遊しているので俺一人でも手で押して運べる状態だ。


「おお……。これがルーンガルドに繋がる門ですか……」

「枠の向こうが歪んで見える……。この状態は――安全なの?」


 ボルケオールが門を目にして声を上げると、ディアボロス族のオレリエッタもやや不安げにこちらを見てくる。


「歪んで見えるけれど、門が開いていない状態なら心配いらないよ」


 と、歪んで見える部分に手を入れて安全である事を見せておく。


 そのまま丁寧に運んでいき、シリウス号内部――艦橋に移動させる。この場合、目の届く場所に置いておいた方が良い。呪法による攻撃に対してシリウス号で強い区画は動力室と艦橋だからな。浮いている魔界の門は一先ずロープで固定しておけばいい。


「妾達はこのまま艦橋で門の状態を見ておくとしよう。地下区画上層の呪法兵は機能停止させてあって現時点では安全であるから、最後に回収する」

「何かあったら伝声管で連絡します」


 パルテニアラとエレナも真剣な表情でそう言って、クラウドエルクのアステールも二人に寄り添い、任せてくれと言うように声を上げる。そうだな。門に関しては二人に任せておくのが良いだろう。アステールも護衛に回ってくれているし、艦橋にはバロールを残して対応力を上げておけば大丈夫だ。


「では……重要度の低いものからシリウス号に運び込んでいきますぞ」


 ピエトロが分身達を作り出し、アピラシアも働き蜂達を動かす。そうだな。この地下拠点は引き払うので、水作成の魔道具等々、ある物は大体シリウス号に積んで王都ジオヴェルムに運ぶ。監視用の水晶板モニター等は重要度が高いので最後に運ぶ、というわけだ。

 使用する機会の少なかった拠点だが、それも結果論だしな。王都で魔界の門を安置する区画にそのまま流用すれば無駄にはならないだろうという事で。


「これが――ルーンガルドの光景ですか」

「空が真っ青だ……。何というか……不思議な場所なんだな」


 拠点でのんびり過ごせるようにルーンガルドの風景を映し出せるようにしたが……ボルケオールとディアボロス族の面々がそれを見て興味深そうにしていた。

 予想していた事ではあるが、魔界で生まれ育った面々にとっては、ルーンガルドの光景を不思議に思うようで。その辺は俺達が魔界の光景を不思議に思うのと同じように、という事だな。


「空に太陽という……とても明るい光が浮かんでいて、時間と共に地平線の向こうに沈んだり、また時間が経過すると昇ってきたりします。一日は太陽の有無で昼と夜という概念で分かれていますが……魔界の方達には、太陽が眩し過ぎると感じる事もあるかも知れませんね」


 太陽と昼夜の概念が魔界には無いのでやや説明の言葉が難しくなるが、ボルケオールは「ほうほう」と、俺の説明に感心するような声を漏らして頷いていた。


 状況が落ち着いて平和になったら、魔界の面々をルーンガルドに案内する事もあるかも知れない。その場合は闇魔法のフィールドを展開し、太陽光からガードする為の魔道具を用意しておいた方が安心かも知れないな。そうした考えを説明するとコルリスも頷いたりしていた。まあ……ベリルモールに関しては割と陽光も平気なのだが。

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