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番外738 宮殿潜入に向けて

 シーカーを操って宮殿内部を見ていく。骨塚は結構な量だと感じたが、何年かかけて蓄積された結果があれなら、まあ……分からなくもない量だ。逆に言うなら敵は単独か、それに準じる小規模、と見る事もできる。


 宮殿内部からどうやって出入りしていたのかという疑問にも答えが出た。明らかに何かの生物が掘り抜いたような横穴を発見したからだ。

 壁を砕いてそこから拡張していったようだな。どこに通じているかは調査しなければ分からない。魔王国のある方角ではなく、辺境の外に向かって伸びている。恐らくは、食糧を確保する為に作った通路、だろう。


「もう一体、シーカーを送り込んで横穴を調べる、というのはどうかしら?」


 と、ステファニアが提案してくる。


「そうだね……。そっちの調査は頼めるかな」

「ええ」

「わたくしももう一体の水晶板を見る事にするわ」

「ん。じゃあ私もそっちを見る」

「それじゃあ、よろしく」


 ローズマリーとシーラもステファニア側の調査の補佐をしてくれるとの事で。それぞれ得意分野が違うので、何かあれば気付いてくれるだろう。


 調査における注意点としては宮殿の建材に仕込まれた呪法防御はまだ残ってるようで、溶岩部分は同化して通り抜けられるが、壁や柱の保存状態が良い場所は難しい、という点だ。瓦礫はあちこち転がっているので、それに偽装したり、通路の隅や天井付近等を通れば察知はされにくいだろう。


 いずれにしても横穴は冷えた溶岩をくりぬいた物のような構造だ。宮殿内部から外に掘られた事を示すように、くりぬいた岩を部屋の中に運び込んで拡張していった痕が見て取れる。

 この横穴に関しては宮殿ではないので、シーカーが壁などに同化できるな。調査を行う分には難易度が下がる。

 というわけで2体目のシーカーを通路から急行させ、宮殿内部から横穴に送り込む。


 シーカーによる調査である以上、捜索の手を広げても危険性については変わらない。寧ろ横穴が今も使われているのか、何処に通じているのか等、しっかりと調べておいた方が良い。

 まだこの場所で活動しているとは限らないが、宮殿と横穴のどちらも調べて、捕捉できればそれに越したことはない。


 こちらはこちらで、更に調査を進めていく。


「今の部屋……。戻してもらえるか?」


 通路を進み、部屋を一つ一つ覗き込んで異常がないか確認していたところ、パルテニアラが何かに気付いたようだ。

 シーカーを前の部屋に戻すと、そこはまだどこかに通路が伸びている部屋だった。


「どこか通じているようですね。分岐点は後から調査するつもりだったので一先ず後回しと思っていましたが」

「ふむ。宮殿の構造には多少覚えがあるのだが、この回廊自体、本来は袋小路……だったと思ったのだがな」

「では隠し通路、でしょうか?」


 パルテニアラの言葉に、エレナが首を傾げる。そう、だな。斜めになった部屋の下部に棚のようなものが落ちているが、本来はその後ろに隠し通路があったのかも知れない。


「なるほど。では、優先して調べてみますか」

「手順を乱してしまったようですまぬな」

「いえ。優先順位はその都度変わりますからね」


 臨機応変に行こうという事で。


「外への横穴に、隠し通路……色々気になる点が多いですね」

「やっぱり宮殿や城は隠し通路の一つや二つはあるだろうからね。浮遊宮殿だから、外に逃げるわけにもいかなかっただろうけど」


 真剣な表情のアシュレイにそう答える。包囲された場合は宮殿ごと突破すればいいのだろうが、墜落してしまっては流石にどうしようもない。

 そうして、隠し通路を進んでいき――出た場所は書庫だった。

 書架は斜めになっているが、書庫自体に何らかの術が施されているのか、保存状態は悪くない。問題は……その書庫の蔵書だろうか。

 シーカーにざっと蔵書を見て回らせて見たところ、やはり魔法、呪法関係の書物が収められた書庫のようだ。


 書棚から落ちてそのままになっただけなのか、それとも誰かが読み漁った後なのか。斜めになった部屋の下部に、魔道書が散らばっていたりするが……。いや、これは書物を読んでいたのか。血の付いた手で書物を読んだと思われる痕跡が見られる。


 本を読んでいたのが襲撃者と同一であるなら召喚術や死霊術に関してもここの蔵書にあったと見るべきだろうか。ここを実験場所にしているわけでは無いようだから、関連書物はまた別の場所に持ち出している可能性もあるが、魔法的な知識を溜め込んでいると見るべきだ。


 一方で横穴はどうかと言えば、あまり入り組んだ複雑な構造ではない。

 基本的には緩やかに上方向に延びており……どこかの沢に面した崖に出たようだ。外から見れば突き出た岩の陰になっていたり、洞窟内部を見てもすぐに行き止まりになっているように見せかけられていたり……一目では分からないように偽装されている印象がある。


「ん。横穴の出口……雨水が入って来ないように屋根状になってる?」

「地下に水が流れ込んで来たら面倒だものね」

「この部分。雨水が外に流れていくように傾斜もつけられて、溝も掘られているわ」


 シーラが言うと、ステファニアとローズマリーも水晶板モニターから見える映像をあれこれと分析する。

 偽装されながらも人為的な意図が見える構造、か。地下から地上に至るまでの横穴については水の流入をあまり考えていないようだったが……地上に出て必要に迫られてから、あれこれ工夫した、というようにも見えるな。


 ともあれ……痕跡等から判断するに、中にいた何かがこうして外に出る手段を構築し、狩った獲物を宮殿内部に持ち込んでいたと。




 宮殿に関しては下層部――かつての浮遊島内部にも構造が続いていたらしいが、そこはメイナードに砕かれて既に残ってはいない。

 下層部に至る通路は途中から全て溶岩で埋まっているようで……調査するべきは宮殿部分のみで問題ないようだ。

 そうしてあれこれ見て回っているが……どうも最近何かが宮殿内部で活動していたという痕跡がない。床にうっすらと埃が積もっていて、そこに足跡や生活感が残っていないからだ。


 但し、それは調査できた部分の話だ。呪法の守りが残っている建材とシーカーは同化できないので閉まっている扉を開けられずに内部に立ち入れない区画があった。

 シーカーでは重い扉を開ける腕力が足りないし、開門に何か術式が必要な時に臨機応変な術式をあれこれと搭載できるほどの容量もない。

 設計上低燃費で低出力だが、それが隠密性や長期間の潜伏活動に一役買っているからだ。これは……シーカーやハイダーの性質上の弱点だな。一応対策を何か考えておく必要があるか。


「シーカーからの映像だけじゃ分からない事が多いな。敵が潜んでいないようなら、直接内部の調査に行く必要があるか」


 今まで見た区画だけでも骨塚や隠し書斎等、直接見て調べておきたい場所が多い。ウィズの解析にかければ裏付けを取ったり、判明する事も増えるだろう。


『そういう事でしたら、立ち入れない区画に動きがないか、後方にいる我らが監視しておく、というのは如何でしょう』

『今まで見た場所には新しい生活の痕跡が無かったですからね。何かいるとするならあの区画という事になりますか』


 ボルケオールとその護衛であるブルムウッドがシリウス号の艦橋から、そんな風に提案してくれた。


「分かりました。そちらに水晶板を持っていくので、監視の継続をお願いします」


 後詰めから動きがあったと連絡があれば俺達も即座に備える事ができるからな。では、直接内部に立ち入って調査を進めるとしよう。

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