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番外691 これからの方針は

「おお、ブルムウッドか……! 薬は無事に効果を発揮したようだな!」


 というわけでブルムウッド達、ディアボロス族の面々と共に街を出てシリウス号に向かうと、門番のガウェイグに声をかけられた。


「お陰様でこの通りだ。心配をかけた」


 左手を握ったり開いたりしながらブルムウッドが言うと、ガウェイグも笑みを浮かべて頷く。

 街の知り合いで親しくしていた者も、高騰した魔法薬を買おうとしているヴェリト達に助言をしたり力を貸してくれたそうで、ガウェイグもその一人、だそうな。


 門番の仕事があるので同行まではできなかったが、魔法薬を買う資金の一部を負担してくれたりしたそうだ。遺跡の情報と魔石の買い取りをしてくれたディアボロス族の魔術師はと言えば、こちらはブルムウッドとは面識がなく、同族のよしみと今後の事を考えての情報提供であったらしいが。


「悪いな。金はしっかりと返す」

「なに、構わんよ。飲み友達がいなくなるのも寂しいものだ。と言っても納得しないであろうから……本当に後回しで構わんぞ?」

「助かる、ガウェイグ」

「ふむ。で、どこかに出かけるのかな?」


 ガウェイグが尋ねるとブルムウッドは笑って頷く。


「そうだな。身体も治ったし、礼と言っちゃなんだが、こいつらに見せてやりたい景色があってな」


 と、ブルムウッドが軽く笑う。街を出る時ガウェイグには事情を聞かれそうだから任せてくれとブルムウッドは言っていたが。


「なるほどな。だが、病み上がりだから気を付けるのだぞ?」

「多少鈍ってはいる自覚はある。まあ……気を付ける」

「俺達もついてるさ」


 ヴェリトが言うとブルムウッドとガウェイグは表情を綻ばせて頷いた。

 そうして、街道を少し歩いて人並みが途切れたところでシリウス号に向かって移動する。迷彩フィールドの中に入ると、ブルムウッドは驚きの表情を浮かべた。


「これが……空飛ぶ船か」


 船を見上げるブルムウッドに、甲板の縁からシーラとマルレーン、マルセスカとシグリッタ、カルセドネとシトリア、コルリスやティール、リンドブルムといった面々が次々顔を覗かせる。


「仲間と使い魔達です」

「なるほどな」


 と、甲板から手を振る面々を見て苦笑するブルムウッドである。そこに甲板のみんながタラップを降ろしてくれた。


「ようこそ、シリウス号へ」


 というわけで甲板に上がり、まずそこでみんなをブルムウッドに紹介し、街中での事を改めて説明する。


「ブルムウッドという。よろしく頼む」


 ブルムウッドの自己紹介の言葉にみんなも微笑みを浮かべた。


「魔法薬が効いたようで何よりです」

「ありがとう」


 といったやり取りを交わしつつ船内へ。艦橋に案内すると、ブルムウッドは驚きの声を上げていた。


「これはまた……。相当な魔法技術だな」

「暫くお茶でも飲んで寛いでいて下さい。すぐに食事も用意できると思います」

「分かった」


 俺達は厨房に移動し、調理中に街で聞いてきた情報を共有したという体を整えておくというわけだ。一応、シーカーやハイダーの事はまだ秘密にしているしな。




「こりゃまた……食欲をそそる匂いだが……見た事のない料理ばかりだな」


 出来上がった料理を艦橋に持っていくと、ブルムウッド達はそれを見て相好を崩す。


 快気祝いではあるがブルムウッドの食欲、体調は十分との事らしい。

 まあ、末端部分の石化進行であってその他の身体機能は健康そのものだったからな。眠りながら過ごしてあまり活動しないようにしていた事を考えると、寧ろ腹が減っているのもやむなしといった所か。


 そんなわけで割と重い物でも大丈夫との事だ。とはいえ病み上がりである事には違いないので、ある程度自分のペースで飲み食いできるようにパーティー料理というか、取り分け可能なものにしてみた。

 白米、玉子スープ、唐揚げ、エビチリ、春巻き、ピザ、ポテトサラダにコールスローと……自分で好きな物を好きな量だけ食べられるようなメニューだ。


 高級料理というわけではないが、見た目にも華やかでバリエーションに富んでいるので楽しんで貰えるのではないかと思う。


「こいつは別のものと一緒に食べると良いらしい」

「ああ……これは確かに美味いな」


 ヴェリト達も白米と合わせて食べるというのをシーラから教えてもらったからか、初めて白米を食べるブルムウッドにその事を教えたりして、醤油とカラシで春巻きを口にして笑顔になっていた。春巻きは割と口にあったみたいだな。春巻きを作ったのは初めてだが、皮がパリッとした仕上がりになって中々良い出来なのである。


「ん。少し辛いのが良い」


 白米の食べ方的なものを教えたシーラはと言えば、エビチリを口にして満足げな様子であるが。やはり海産物系が好きという事なのだろう。


 唐揚げは――醤油、生姜、にんにくで下味をつけたのでこれがまた美味だ。香ばしい衣の下に下味の風味が染み込んだ鳥の皮と肉の柔らかい食感があって、食欲をそそる。


 ピザはトマトソースの上にたっぷりチーズを乗せて、その上に自家製ベーコン、マッシュルーム、ピーマン、刻んだバジルを散らした割とオーソドックスなものだ。ハーブとチーズの風味がトマトソースやベーコンに合っていて、こちらも出来が良い。


 そんな調子で、ディアボロス族の面々としては初めて食べる食材や料理ばかりではあるが、ブルムウッドを含めて体調を崩す者もおらず、賑やかな食事会になったのであった。




 食後はアイスクリームを食べながらお茶を飲む。イルムヒルトがリュートを奏でて歌を口ずさむと、ディアボロス族の面々はそれに聞き惚れている様子であった。


「いや、本当に辺境の外から来たんだな。料理もだが、曲も楽器も知らないものばかりだ」


 一曲終わったタイミングでブルムウッドが笑顔で拍手しながら言う。


「気に入って貰えたなら幸いです」

「世話になってばかりでこちらとしては気後れしちまうがな。まあ、俺としてもテオドール達には興味があるからというのはあるんだが……」


 ブルムウッドはやや真剣な面持ちで、そう言って目を閉じる。そうだな。ブルムウッドとしては元々この国に仕えていた武官だし、これからの俺達の方針は気になるだろう。


「後ろめたい事は無いけれど……国として調査に来ているわけですからね。魔王陛下の考え方等、色々と情報を集めてから動きたいというのはあります」


 こちらとしても魔王や王国に危害を加えたり悪事を働くつもりはないが、権力者と相対する場合は慎重になりたい。色々と具体的な方針が定まるだけの情報が集まるまでは、まだ静かに行動していたいところだ。そういった話をするとブルムウッドやヴェリト達も理解を示してくれた。


「慎重に動きたいという気持ちは分かる。悪意があるならそもそも俺達を助けたりはしないだろうからな。そういう事なら、昔王都に住んでいた事もあるから多少は役に立てるかも知れない」

「それは助かります。この国の歴史を知ることのできる文献等があれば理想的なのですが」

「王都にある図書館になら、そういった文献もありそうだな」


 図書館か。それは願っても無い。


「では……魔道具をお渡しした後でお願いしたいのですが」

「了解した。俺で良いなら案内しよう」


 ブルムウッドはそう言って笑みを浮かべた。では、決まりだな。魔王という字面はともかく、国内に対してはかなり真っ当な為政者という雰囲気がある。辺境の蛮族とは敵対しているようだが、俺達に対してはどうか。それらを事前に判断するのなら、もう少し情報が必要だ。魔王が何を望んで何を目指しているのか。長期政権であるからこそ、国の歴史を知るのは重要だろう。ファンゴノイドの行方や溶岩の底に沈んだ浮遊城と合わせて調査を進めていきたいところだ。

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