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番外678 遺跡での面会

 ヴェリト達にベヒモス親子とのやりとりを説明する。

 ベヒモス親子は小さい種族に対してはあまり興味を持っていなかった事、取引したので遺跡を根城にしてもらえるかも知れないという事。俺達も共同で使える事。


「あなた方については……事情を聞いてその内容次第という事でベヒモスには了解を貰って来た。少なくとも親子に危害を加えないと約束できるなら、紹介できるかもと話を付けてあるんだ。それが上手くいけば採掘も割と自由になるかも知れない」


 状況を飲み込むと、彼らの表情は戸惑いと驚き、喜びが入り混じった顔になった。まあ……ベヒモスから隠れて逃亡せざるを得ないという状況から、ベヒモス親子と話をして、心置きなく作業ができるかも知れない、という状況への変化だ。戸惑うのも分からなくもない。


「……有難いとは思うが、そこまでして貰える理由は?」

「さっきも言ったけど、こっちの土地は不慣れなんだ。俺達の目的は……主に調査と親善と思って貰って良い。乗り物は近くに隠してあるから行動範囲は広く取れるけれど、不慣れな場所で宛てもなく行動するのも非効率的だからね。情報が貰えるならそれに越したことはない」


 話している内容は大体本当の事だ。ルーンガルドと魔界についてはリスク管理の面からおいそれとは話せないし、こちらも迂闊には聞けない部分でもあるが……こちらを信じてもらう為ならシリウス号を見せるところまでは問題あるまい。


 ヴェリト達は「少し俺達で話し合って考えさせて欲しい」と言ってきた。


「勿論構わないよ」


 その言葉に了承して少し離れたところで待つ。様子を見ていると、ヴェリトの言葉に残りの3人が反発して、それを説得しているという様子だった。


「どうも、3人はヴェリトを心配しているようね。ヴェリトもまた、3人が心配で……やはり、使命感が強いように思うわ」


 と、エイヴリルが教えてくれた。


「私の意見としては……彼らは信用のおける人物ではないかと思う」

「そうですね。私もそう思います。病気と薬の話は本当のようですし、力になってあげたいですね」

「だからこそ、話し合いが良い方向に纏まってくれると嬉しいのですが」


 アルクスとエレナもそう言って……グレイスも心配そうに目を閉じる。カルセドネやシトリアはヴェリト達にやや心配そうな視線を送っていた。

 そう、だな。彼らの話してくれた事情が嘘ではなさそうというのがエイヴリルを通して分かっているだけに、俺としてもそうなってくれた方が嬉しいのだが。


 やがて話し合いも済んだのか、ヴェリトがこちらにやってくる。


「まずは俺だけ巨獣……ベヒモス親子に紹介してもらう、という事はできるだろうか? 信用し切れていない、と言っているように聞こえたら済まないが、こちらとしてもその話が本当なら有難いとも思っているんだ」


 なるほどな。その為に仲間を説得していたわけだ。リスク管理をしたいというのなら、彼らとて同じだろう。目的を考えればいきなり襲われて全滅というのは避けなければならない。

 ヴェリトは4人のリーダー格のようだが、自分がリスクのある役回りを引き受けようとするあたり、かなり責任感が強いというか、信用のおける人物のようだ。


「問題ないよ。目的は親善とは言ったけれど、知らない相手との接触の時は慎重になるのも当然だと思う。実際、俺達もそうしているからね」

「理解して貰えて助かる」

「面会の時は先に話を通して、俺も同席しておけばお互い安心かな」


 そう言うと、ヴェリト達は真剣な面持ちで頷くのであった。




 そうしてヴェリトは翻訳の魔道具の説明を受け、それを装備してベヒモス親子との対話に望むことになった。


 俺からはヴェリト達の目的を伝え、まず最初の一人だけで会いたがっている事を伝える。仔ベヒモスは俺が戻って来たのが嬉しいのか鼻先を擦りつけてくるし、親ベヒモスはその光景に目を細めつつ、俺の話を静かに聞いている様子であった。


 そして、一通り話を聞いてから「そういう事であれば構わない。大切なものを守りたいと思うのはお互い同じだろう」と、親ベヒモスは目を閉じて喉を鳴らした。

 ベヒモスの反応も悪くなさそうという事で、実際にヴェリトをベヒモスに紹介する。


「この度は遺跡への立ち入りを許していただき、礼を言う。貴方達が休んでいる事を知らず、騒がせてしまった事も済まないと思っている」


 と、やや緊張した様子ながらもヴェリトが言うと、親ベヒモスは目を細めて喉を鳴らした。

 翻訳するのならば「礼を言う必要も、謝る必要もない。お互い偶々居合わせただけだが、こうして意思を伝え合う手段を持ち、それぞれの望みを知ったからには不用な衝突は避ける事ができるだろう」といった内容だった。

 ヴェリトはそんな親ベヒモスの返答に少し目を見開いて……それから深々と一礼するのであった。




 そうして――ヴェリトが面会して問題無さそうという事で、他のディアボロス族3人に先程のやり取りを伝え、ベヒモス親子と面会する時間を作る。


「そ、その……。お騒がせしてしまいました。よろしくお願いします」


 と、残りの3人もベヒモス親子に挨拶をし、親ベヒモスも「よろしく頼む」と、挨拶を返すのであった。

 さて。ディアボロス族とベヒモス親子の面会も問題ないとなれば、後は俺達の仲間やシリウス号を紹介し、ベヒモス親子との約束を守る、という話になってくるのだが……その前に確認しておきたい事がある。


「少し聞きたいんだけど、恩人の病気というのは緊急を要するものなのかな?」


 必要ならば先にシリウス号で送っていっても構わない。


「いや。すぐさまどうにかなるというものではない。しかし放置しておけば確実に死に至る、という類の病だ」


 俺の質問に、ヴェリトが答える。……なるほどな。


「だから、俺達は魔石鉱床の採掘に来たんだ」

「短期間で一気に稼ぐなら一番だと思ったから、ね。遺跡の魔物を撃退して、何回か往復すれば、と考えていたんだ」

「実際は、魔石の質も良いから2回ぐらいで足りそうだったけれど」


 と、3人のディアボロス族が教えてくれた。

 往復、か。どの程度の距離を移動するのか分からないが、ぶちまけられた荷物の量から考えても一日二日で到着する距離ではなさそうだ。

 ディアボロス族が翼を持っている事を前提にして、更に余裕を見た物資の量なのだろうし。


 短期間で一攫千金狙いか。例えば冒険者制度のようなものが魔界にもあって、魔物を狩って魔石の対価を入手するとしても……迷宮と違って野生の魔物を狩るのでは安定した量を確保できるわけでは無い。

 その点、鉱床ならば纏まった量を採掘可能、というわけだ。なるべく早く。必要なだけの金額をと考えるなら確かに、これ以上は無いのかも知れないな。


「そういう事なら俺達の乗り物で送っていくよ。物資もかなりの量を運搬できる。俺達は親子と約束があるから結界を構築する必要があるし、ヴェリト達はまだ魔石の採掘量が足りないと見積もっている。お互い丁度良いんじゃないかな」


 そう提案すると、ヴェリト達は顔を見合わせる。

 俺達の要求は変わらない。友好関係の構築と情報提供者の確保だ。ヴェリト達の戻る拠点がここから離れているのなら、尚の事、彼らと行動を共にできれば俺達としては得なのだ。

 ヴェリト達は仲間達と顔を見合わせ……そして苦笑すると、かぶりを振った。


「……ここまで世話になったのなら、いっその事、か」


 ヴェリトは後頭部のあたりを軽く掻くと、そう言う。3人と頷き合うと、真剣な面持ちになってこちらに向き直り、言葉を続ける。


「魅力的な話だ。是非お願いしたい。ディアボロス族の戦士の名に懸けて必ず礼はすると誓おう」


 よし。では、話は決まりだな。みんなの紹介や結界構築等々、諸々の準備を整えていくとしよう。

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