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番外677 ディアボロス達の事情

 親ベヒモスにディアボロス族の事を聞いてみると、そもそも暮らしている場所が違うし、お互い関わり合いにならないのであまり興味を持っていなかった、との事だった。

 4人のディアボロス族が抱えている事情次第だろうけれど、ベヒモス側がディアボロス族に特に悪い感情を持っていないのであれば、建設的な話もできる、というところはあるな。


「今……仲間が保護してくれているんだ。事情を聞いて問題無さそうなら紹介するかも知れない」


 そう言うと親ベヒモスは愉快そうに目を細めて喉を鳴らした。どうやら少し笑ったようだが、巨体なのでそれだけでも風が吹くといった有様だ。「彼らは自分を見ると驚いて離れていくから、案外災難かも知れんな」と、そんな風にベヒモスは伝えてくる。


 まあ……そういう面もあるかも知れないが。

 この際彼らの事情がベヒモス親子にとって受け入れられるものであるなら、許可を貰ってしまえばディアボロス族の今後にとって助けになる、かも知れない。お互いに危害を加える気がないなら、良好な関係を築く事もできるだろう。


 一旦彼らと話をしてくると言うと仔ベヒモスは「待ってるね」と喉を鳴らし、親ベヒモスは「困った物だ」と苦笑している様子であった。


 というわけで、一旦ベヒモス親子とは別れて、通信機で連絡を入れながらみんなと合流しに森へ向かう。迷彩フィールドを展開しつつ地下拠点まで飛んでいくと、みんなもそこで待っていてくれた。


「無事で良かったです」

「ただいま。ベヒモス親子とは……戦いにならずに済んだよ」


 そう言うと、みんなは嬉しそうに微笑んで頷いてくれた。


「オズグリーヴとガシャドクロも、ありがとう。ベヒモスはかなり頭が良いみたいだし、陽動も大変だったんじゃ?」

「確かに……陽動と気付かせないようにするのは少々骨が折れましたな。城から離れたがらないのが見えたので、そこを利用させてもらいましたが」


 と、オズグリーヴは先程の戦いを思い出したのか、苦笑して応じる。ガシャドクロも小さくなった姿で俺の言葉に応じるようにお辞儀をし、マルレーンもにっこりと微笑む。


 ガシャドクロは初撃の後すぐにマルレーンの送還術式で本拠地に戻ったが、オズグリーヴはそのまま陽動作戦だ。

 ベヒモス相手に本気ではないと悟らせてはいけないし、時間も稼がないといけないという……結構難しい仕事だった。煙の性質を持つからこそそうした立ち回りができるのだろうが、その辺はオズグリーヴの立ち回り方が上手かったからだとも言える。


 オズグリーヴは時折親ベヒモスを突破して城側へ向かおうとするような動きも見せて、それを防がせる、という動きもしていたからな。この辺は駆け引きになってくるが、そのあたりの経験が豊富という事なのだろう。


「それで……次はディアボロス族にも話を聞かないといけない、という話でしたかな?」

「そうだね。エイヴリルとアルクスには一緒に来て貰いたい」

「分かったわ」

「承知した」


 エイヴリルと、アルクスのスレイブユニットが応じる。相手の感情を読み取り、信用のおける相手か、どんな傾向の種族かを調べる必要がある。

 アルクス本体もまた交渉を有利にできるように精神感知系の能力を持っているが……おいそれと本体を見せるわけにはいかないのでスレイブユニットで同行して先達のエイヴリルの仕事を見てもらい、経験を積んでおく、というわけだ。同時に魔界の種族との面識も得られる。


「私もご一緒します。足手纏いにならないようにしますので」

「では、妾もかな」


 卵の呪法兵を従えつつエレナが言うと、パルテニアラもそう言って、エレナの側に付く。二人としては、魔界に関する事を他人任せにできないところはあるだろうからな。


「では――私がお二人の護衛役になります」

「ん。同じく」


 グレイスとシーラも護衛役として一緒に来てくれるとの事だ。

 エイヴリルの護衛としてカルセドネとシトリアもついていく、というのは当初から決めていた通りである。頭数が必要になった場合も想定して、ピエトロも一緒だ。


 ディアボロス族の待っているシェルターへ向かう人員を決め、みんなで迷彩フィールドの中に入って森の上空を飛んで移動する。程無くしてバロールの造った簡易シェルターに到着した。

 シェルターは自然の岩に偽装された隠れ家的なものだ。岩陰の部分が扉になっていて、内部は外部監視用の小部屋と、居住用の部屋があるといった程度の……割とシンプルなものである。

 監視用の小部屋が分かれているのは、内部の光が外に漏れないようにするためだな。


「やはり不安が強い、ようね。使命感は変わらずといったところかしら」


 能力の射程距離に入ったところでエイヴリルが教えてくれる。なるほどな。


「一先ず巨獣達の方は落ち着いてくれたから、仲間と合流して戻ってきた。話を聞きたいんだけど、大丈夫かな?」


 と、声をかけると上部のハッチが開いて監視用の小部屋からヴェリトとバロールが姿を見せ、横の扉が開いて残りの三人が顔を見せてくれた。


「無事だったようで何よりだ。俺達がへまをしたばかりに……危険な橋を渡らせる事になって済まないな」

「助けてくれた事に礼を言う」

「ありがとう」

「助かったわ」


 と、ヴェリト達は丁寧にお礼を言ってきた。

 ディアボロス族は見た目の厳つさとは違って、割と理性的な種族、というのは分かっていた事ではあるな。

 エイヴリルは……見た目と内心が激しく乖離していたり、強い敵対心を見せない限りは特に口出ししない、という事らしい。


「まずは自己紹介かな」


 そう言って、お互い1人1人名前を名乗っていく。


「ヴェルドガル王国……知らない名だ」

「まあ……ここからは簡単にはいけない距離にある国だよ。あの遺跡は少しヴェルドガル王国と過去に関係があってね。こっちに赴くついでに調査をしたかったんだ。だからまあ、助けたにしても打算的なところがなかったわけではないよ」


 こちらの目的も少し伝えておく。全く目的が分からない相手となると、ディアボロス族としてもどう接したらいいか手探りになってしまうからな。

 それと、後々の事を考えるなら嘘も吐かない方が良いという事で、ヴェルドガルの名前は出す。ルーンガルドから魔界に渡ってきたというよりは、離れた所にある知らない国から来たといった方が分かりやすい。


「では、テオドール達は遺跡の情報が欲しい、というわけか?」

「そうだね。差し支えなければ、何であの遺跡にいたのか、教えて貰えると助かる」


 そう答えると、ヴェリト達は顔を見合わせ、頷き合う。


「あの遺跡は……巨獣が来る前は他の大きな魔物が住みついていて、危険な場所である事には変わりは無かった、らしい。ただ、あの遺跡の地下には上質な魔石の鉱床があるという情報を掴んでいてな」


 魔石の鉱床――。地下は見ていないが、魔界ではそんなものが自然形成されるのか。


「当初は遺跡に住み着いた魔物が襲ってきたら撃退して、鉱床の魔石を採掘して持ち帰る予定だったんだ。まさか……あんな巨獣が奪って陣取っているなんて思わなかったが」


 ヴェリト達は――口裏を合わせていたわけではない。エイヴリルが何も言ってこないという事は本当の事を言っていると見ても良いだろう。

 そして、運が良い。城の中で仔ベヒモスと鉢合わせていたら、また今とは全然違う状況になっていただろうし。


「なるほど。少し突っ込んだ事を聞くようだけど、魔石は何の為に? 勿論、話したくないなら構わないけれど」

「他人にとってみれば、意外でも何でもない話だ。売って薬代にする。俺達の世話になった恩人が病気で、高額の魔法薬が必要なんだ」


 ヴェリトは眉根を寄せ、遠くを見るような目になってそう言った。他の3人も少し苦虫を噛み潰したような表情で……。そう、か。それなら、使命感を抱いていたというのも理解できる話だ。エイヴリルは――何も言わない。

 ヴェリトの言葉は……これも真実なのだろう。ここまでの情報は、助けた事への対価のようなものだ。今後良好な関係を築いておけば魔界の情報を他にも得られる。彼らとの繋がりを……ここで終わらせるべきではないだろう。


「そういう事なら、力になれるかも知れない。ベヒモス――あの巨獣の事だけど、彼らとは話がついているんだ」


 そう言うと――ヴェリト達はきょとんとした表情で目を瞬かせた。

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