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番外593 魔法生物達の絆

 俺の周囲にいる人達の話。日常の様々な出来事や各地の料理、風土、文化といった一般的な知識から、戦い方に至るまで……色々な内容の対話を重ねた。

 対話から戻ってくると、もう周囲は夜になっていた。結構時間を忘れて話をしていたようだ。時間感覚がおかしなことになっているが、まあ、首尾は上々だ。魔法陣を停止させて立ち上がる。


「んん……。ただいま。対話は、結構上手くいったと思う」

「おかえりなさい。傍から見ていたら、魔法生物の反応もどんどん強いものになっていきましたからね」


 凝り固まっていた身体を軽くほぐすように動かすと、グレイス達も笑顔で迎えてくれた。それからグレイスは「初めまして」と魔法生物に挨拶をする。

 そんなグレイス達の挨拶に応えるように、魔石がぼんやりと光を放って宙に浮いた。


「こんにちは。初めまして、魔法生物さん」

「ん、おはよう」


 と、アシュレイやシーラがそんな風に声をかけ、みんなも次々に挨拶していく。マルレーンがにこにこしながらカーテシーの挨拶をして、魔法生物も明滅してそれに応える。

 対話が終わるのを見守っていた深みの魚人族や魔法生物達も新たな仲間を歓迎する為に、魔石の姿をした新たな魔法生物のところに行って挨拶をする。


「これは魔法生物殿。儂はレンフォスと申します」

「ヴェダルという。よろしく頼む。後ろの二人はブロウスとオルシーヴだ」


 レンフォスとヴェダルがそう言って、ブロウスとオルシーヴも丁寧にお辞儀をする。


「お初にお目にかかる。我はマクスウェルという」

「ライブラです。よろしくお願いしますね」


 マクスウェルとライブラがそう言って、ジェイクやアピラシアといった面々も、身振り手振りや仕草で挨拶をしていた。

 魔法生物もまた、みんなの挨拶に嬉しそうに発光して応えている。明滅が結構激しいのでテンションが上がっているのが傍目にも分かるな。

 何となくだが……こうして魔法生物達との付き合いを色々と重ねていると、核の発光するパターンで感情が分かるようになってきたというか。


「ふむ。普段使いの身体の魔道具――感覚器は少しだけではあるが、できておるぞ」

「五感リンクをしておけば会話ぐらいはできるかと思って進めておいたわ」


 と、お祖父さんとヴァレンティナが笑顔で教えてくれる。魔法生物はそれが嬉しいのか、明滅してお祖父さんの言葉に反応していた。


「ありがとうございます。日常用の身体ならある程度先に組んでしまっても問題ないですからね。五感リンクだけ済ませてしまいましょうか」


 というわけで魔法生物を連れてスレイブユニットとの五感リンクを構築するために、隣の部屋へと向かう。

 セラフィナの性質を与えた魔石を使って作られた魔道具は、魔法生物用の発声器官だ。感覚をリンクさせれば思うように発言できるようになるので、早速マジックサークルを展開して結びつきを作ってやる。


「どうかな?」

「あ、あー。おお……声が出せる……!」


 と、感覚器から魔法生物が声を発した。また……随分と感動したような、嬉しそうな声色だな。


「先程は――ありがとう。温かくみんなに歓迎されて、とても嬉しい」


 そう言って、本体である魔石の方が宙に浮かんだままお辞儀をするように傾く。そんな様子にみんなも表情が綻んでいた。


「なるべく早く身体を作るからね」

「ありがとう。楽しみにしている」


 アルバートがにっこりと笑って言うと、魔法生物は本体を明滅させつつ応えていた。


「名前は……どうしようか。姿形とか能力とか、そのあたりは大体決まっているから、今からでも名前は付けられると思う」

「マクスウェル殿達も、名前は身体が出来上がってからだったと聞いている。できるなら、私もそれに倣いたい」

「我らに遠慮する必要はないぞ?」

「いや、そうであるほうが嬉しく思うのだ」


 マクスウェルの言葉に、そんな風に答える後輩の魔法生物である。


「確かに、その気持ちは分かるような気がします」


 アルクスがうんうんと頷く。


「そっか。分かった」

「それじゃ、その時のお楽しみね」


 俺が頷き、イルムヒルトが楽しそうに笑ってそう言うと、魔法生物も明滅して応じていた。

 対話の中で他の魔法生物達の事も聞かれたからな。マクスウェルやヴィンクル、アルクス、ライブラの名付けの話もその時に伝えたのだったか。


 炎熱城塞の巨人、ワーウルフ原種にケルベロス。ドラゴニアン、カボチャの庭師にパラディン、ラストガーディアンに、それからワグナーの司書と……。一度俺達と戦って、その魔石や素材を元に再構成して仲間となった面々は多い。

 新顔である魔法生物としては、対話の中で彼らと共通点がある事を知るとかなり嬉しがっていたっけな。その辺りの事もあって、先輩であるマクスウェル達と同じようにして欲しいというわけだ。


 では、名前をつけるのは身体が出来上がった時だな。イルムヒルトも言っていたが、その時のお楽しみという事で、俺も今からじっくり考えておくとしよう。




 魔人化の解除。深みの魚人族との約束と新たな魔法生物。時計作り。

 工房で進めていく事柄は色々あるが、ドロレスと色々相談して外洋を航行する船舶の設計や、中継拠点の建造計画もその一つだ。


「――というわけで、船体に合わせて木魔法や土魔法の魔道具を組み込むか船内に積んでおく事で、船体が損傷を受けた時に修復する事も可能になるかと」

「浸水した時に水魔法を利用した排水もできると良いかも知れないわね。船内部の区画が水没していたら修理もままならないもの」


 ドロレスの案にクラウディアがそう言うと、ドロレスもなるほど、と納得したように頷いていた。

 色んな状況を想定しつつ安定して外洋を航行できる船、というのを考えているわけだ。今は助けが来ない外洋で魔物に襲われた時の対処法についての話をしていたが、損傷自体をリカバリー出来ると安心だろう。


「それなら船を安定させる重しの水を入れる層に、導水管で送ってしまうのがいいかな。余剰分は契約魔法で判定して自動排出できる仕組みを作るとして……」


 所謂バラスト水だな。船の喫水を深くして横波、横風から安定させる効果がある。バラストは海水に限らず砂や石等が使われる事もある。

 船は積荷の有無や乗客の多寡でもバランスが変わってくる為に、バラストを利用してその辺の釣り合いを丁度良くしているというわけだ。


 バラストを海水にすれば調整が容易にはなるが……そのバラスト水の入れ替えで生態系に悪影響が出てしまったなんて話も景久の記憶にはある。バラスト水に紛れ込んだ生物、海藻が別の海域で排出されて、大繁殖してしまう、というような事例だ。そのあたりは問題が起こるのが分かっているのだから、事前に何かしら対応策を考えておきたいところだ。


 例えば……塩と水を完全に分離させてしまってバラストタンクの中を淡水に保っておき、排水時だけ塩分濃度を同じにして排水する……といった方法で生態系への悪影響は抑えられるだろうか。或いはバラスト水を沸騰させて蒸気を何かしらの形で利用するとか……。


 船の蒸気利用というとタービンによる蒸気船か。それも悪くないが、水流操作による推進方法があるから、蒸気船も殊更コスパが良いというわけではないな。魔法で水を沸騰させてタービンを回すのでは二度手間だし、かといって本物同様の機構で石炭等を使うと環境にもよろしくないだろうし。


 コマチの魔力充填機構は人力でペダルを回す必要があるのでこれには利用できない。どういうわけだか風や水を利用して回しても魔力が充填されないのだ。あれはあれで魔術師不在でも魔石に魔力補給できるので便利だし利用価値は高いが。


 と、思考がやや脱線したか。まあ……時間はあるから色々と考えていこう。

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