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番外567 同盟大結集

 タームウィルズ側の転移門も完成させ、あちこちに連絡を入れる。人によってタームウィルズに滞在中だったり一旦国に戻っていたりするが、通信機や水晶板モニターへの返事や反応はすぐにあって、全員の出席が確認された。


 東国組の時差に関しても既に魔道具で調整済なので問題無いとのことで。まずはタームウィルズの転移港で俺達が出迎えてからグロウフォニカ王国へ向かう、という事になっている。

 グロウフォニカとも同盟各国でも多少の時差はあるが、まあ魔道具もあるし許容範囲内だろう。


「――いやはや。出発当初は戦いにはなるまいと思っていたが、相当な激戦であったようだな」

「そう、ですね。また面倒事を増やしてしまって……そこは申し訳なく思っておりますが」

「そんなことはない。同盟各国の分担であるし、余らは今回の一件について、戦後処理には深く関わる立場でもない。それよりも……そなたらが無事であった事が喜ばしい」

「転移港の管理はあるけれど、人員を少し増やせばいいだけの話だからね。西方海洋諸国との友好的な形での交流が増えるのはヴェルドガルにとっても同盟にとっても嬉しい話だね」

「ありがとうございます」


 王城セオレムから転移港にやってきたメルヴィン王とジョサイア王子に旅の報告をしつつ、みんなの到着を待つ。今回はメルヴィン王、ジョサイア王子もグロウフォニカ王国を訪問して宴会に参加する予定だ。

 西方海洋諸国との交流が始まるということで、冒険者ギルドも今後話に絡んでくることもあるからか、アウリアも一緒であった。日頃の労いの意味も込めて、フォレスタニアや工房の面々――シャルロッテやフォレストバードのみんなにも声をかけてある。


 メルヴィン王がグロウフォニカに来る、という事もあり、ヘルフリート王子は落ち着いたのを見計らって話を切り出さないと……と、悩んでいる様子であるが。そこは俺達が良いタイミングがあれば教えると、サポートする予定だ。


「おお。これは……メルヴィン陛下と、ジョサイア王太子殿下であらせられますか。テオドール公も」

「こんにちは、皆さん」


 旧フォルガロ首都の転移門から元大使のエメリコ、武官のエステバンやマルセロ、ヘッセニア達と……グロウフォニカ王国の面々が現れる。エステバン達は宝冠からメルヴィン王とジョサイア王子だと気付いたのか、まず丁寧に挨拶をしていた。


 戦いに参加したエステバン達はグロウフォニカ王国から派遣された武官、文官の代表として暫く現地に残る事になっているらしいが、宴会に参加するために戻ってきたわけだ。

 この辺はデメトリオ王の気遣いというか、戦いへの労いの意味があるわけだな。


 エステバン達が一時不在になるが、グロウフォニカから旧フォルガロへは追加の補充人員が向かっているので問題はないだろう。


 エステバン達をメルヴィン王、ジョサイア王子に紹介する。ヴェルドガルの王と王太子という事でエステバン達はやや緊張しつつも、そこは規律正しいグロウフォニカの武官、文官達。丁寧に自己紹介をして、メルヴィン王とジョサイア王子も上機嫌に応対していた。

 それが終わると、エステバン達は転移魔法への驚きを示しつつ、周囲を興味深そうに見回していた。そうしている内に次々宴会参加の面々が転移港に姿を現す。


「今回は――転移門も随分と増えたな」

「意匠とその由来も含めて楽しみにしている」


 と、シュンカイ帝とヨウキ帝がそう言って笑う。前回の戦闘には参加していなかったセイランやリン王女、ユラやアカネも姿を見せて、俺達の姿を認めると嬉しそうに駆けてきた。


「お久しぶりです!」

「ご無沙汰しております……!」

「こちらこそ」


 と、四人を笑顔で迎える。アシュレイとマルレーンもにこにことしながら、リン王女やユラと互いに手を取り合って嬉しそうに微笑んでいた。


 リン王女は、前よりも雰囲気が明るくなって、少し大人びた印象があるかな。セイランと共にシュンカイ帝を支えたいと言っていたから、その辺りで色々と頑張っているのかも知れない。ユラは落ち着いた雰囲気なのは変わらず。ただ、ユラが再会できて嬉しそうにしているのをヨウキ帝とアカネが微笑ましそうに見ていたりして。


 ヒタカノクニやホウ国だけでなく、同盟各国から集まってくる面々の中には、今回戦いには参加できずに留守を預かっていた面々も多い。


「父上。刀の具合はどうだったでしょうか?」

「実に素晴らしいものであったよ。切れ味も相当だが、離れた相手に治癒魔法を飛ばせるというのは想像以上に便利で心強い。恐らく斬りつけながら治癒魔法で殺さずに、という事もできるのではないかな?」

「ありがとうございます。王の持つべき剣を、と考えたので……意図的に手加減ができるというのはその通りです。私としては刀としての完成度を更に上げつつ、治癒魔法と破邪の力の相性がいいので、そのあたりも組み込みたいと思っているのですが――」


 と、ファリード王と再会したエルハーム姫が刀の使い心地をリサーチしていた。

 エルハーム姫にとってはまだ完成形ではないようだな。あれはあれで一国を代表する宝剣レベルだと思うのだが。

 ファリード王は身振り手振りを交えて説明するエルハーム姫に苦笑しつつも、どこか楽しそうな様子であった。技術協力をしているコマチもエルハーム姫の隣でにこにこと嬉しそうだ。


 イグナード王もオルディアやレギーナと言葉を交わして相好を崩していたりするし、レアンドル王とペトラ、オーレリア女王とエスティータとディーンの姉弟、エベルバート王と七家の長老、魔法騎士やエリオットといった各国の主従、知己も、あちこちで再会とお互いの無事を喜び合ったりしていた。かと思えば同盟間で仲良くなった者達同士、笑顔で言葉を交わし合ったりと、賑やかで楽しそうな雰囲気だ。


「パルテニアラ様! ガブリエラ様! クエンティン様も!」


 と、エレナの表情が明るくなる。

 パルテニアラ、ガブリエラ、クエンティンとコートニー夫妻、デイヴィッド王子に青いカラスのロジャーと……ベシュメルクの面々が姿を現したのだ。


「おお。エレナ! テオドールも! 息災で何よりである!」


 そう言ってにっこりと笑うパルテニアラである。デイヴィッド王子は俺の事を覚えていてくれたのか、声を上げながら俺の方に小さな手を伸ばしたりしてくれて。


「お久しぶりです、デイヴィッド殿下」


 と、笑みを向けると嬉しそうに声を上げて手足を動かすデイヴィッド王子である。相変わらず快活な王子様だな。うん。

 ドリスコル公爵家のオスカーやヴァネッサ、ライブラであるとか、他にも複数の参加者が来ている。まあ何というか……相当な大所帯なので宴会を行うグロウフォニカとしては大変そうではあるかな。

 エルドレーネ女王を始めとしたグランティオスの面々、ハーピーや妖怪達もやってきて、中々カオスな様相を呈してきたが。……まあ諸々グロウフォニカ側には通達済みなので大丈夫だろう。元々俺達一行でさえバリエーション豊かなのだし。


「おお。これが転移……。というか、これは……人が集まって大変な事になっておりますな!」


 と、深みの魚人族、長老のレンフォスが言う。転移で深みの魚人族もやってきたのだ。

 戦士達は網に大量の魚介類を詰め込んで肩に担いでいたりして、各国の面々もその様子に「おお……」と歓声を上げていた。シーラやティールも目を閉じてうんうんと頷いている。「こいつはすげえな! いや、やるもんだ!」と素直に膝を叩いて称賛の言葉を口にする河童に、魚人族の面々も何となく水属性で親近感を感じ取ったのか、笑顔で応じたりしていた。


 そうして参加者が一通り揃ったところでグロウフォニカへと移動する。グロウフォニカの転移門を出て迎賓館の中庭部分に連れ立って出ていくと、そこにはデメトリオ王やコンスタンザ女王、バルフォア侯爵達、それから隷属魔法から解放された六人の魚人達が俺達を待っていた。


「いやはやこれは……。錚々たる顔触れだな」


 こちらの個性豊かな面々を見て、デメトリオ王は驚きつつも明るく笑って歓迎の言葉を口にする。


「ようこそ、グロウフォニカ王国へ。余はグロウフォニカ国王、デメトリオ=グロウフォニカ。誇り高き王、女王と英雄達の来訪を、国を挙げて歓迎する」

「ガステルム王国女王、コンスタンザ=ガステルムです。こうして沢山の方々と知己を得られた事を嬉しく思います」


 まずは初対面の面々を紹介という事で、デメトリオ王、コンスタンザ女王、バルフォア侯爵が名を名乗り、対して各陣営の代表格がそれぞれ自己紹介をしていく。


 深みの魚人族もこれで全員が揃った。最後の六人が家族や恋人らしき魚人達と抱き合って再会を喜び合う。そんな光景にみんなも微笑みを浮かべていた。


「深みの魚人族の皆さんが運んできた魚を宴の料理として饗しなければなりませんな。夜の宴まではまだ間がありますが、積もる話もおありでしょう。早速王城へ移動しましょうか」


 そんな光景に穏やかな笑みを浮かべつつバルフォア侯爵が言うと、みんなも頷くのであった。そうだな。今回の一件の話もあるし、みんなも話題は尽きないだろう。

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