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番外561 南国の魔法建築

 今日はガステルム王国で一泊。歓待を受けてから明日ネレイドの里と、グロウフォニカの王都へ向かう、という予定だ。


 空から街並みを見ると……ガステルムの人々は二度目の飛行船の来訪ということもあって、俺達を歓迎してくれているようだ。道からこちらを見上げて笑顔になっていたり、手を振ってくれたりと、王都の住人には明るい雰囲気があった。

 シリウス号を城の近くに停泊させ、城の中を案内してもらう。

 残念ながらまだステルス船に乗っている魚人族関係の一報は届いていないようだ。そのあたりの動きがある事に期待しつつも、魔法建築の作業を進めていくしかないか。


 城の建築様式に目を向けてみれば――コンスタンザ女王も道中言っていたが、グロウフォニカの王城と建築様式が似ているような気がする。建築様式にしても時代時代で流行り廃りというのはあるが、ガステルム王城とグロウフォニカ王城は建築された時代が近かったという事なのだろう。


 当時の最先端は今や歴史と伝統、風格を感じさせるものとなった、というわけだ。

 ただ、近い時代の建築様式であっても、装飾や色合い、置かれている調度品といった部分での雰囲気は結構異なってくる。


 ガステルムの方がやや実戦的な趣のある城というか。このあたりは城主の趣味が反映されたと言うよりは、グロウフォニカの国力が西方海洋諸国において他より一歩抜きんでていたのが表れた結果、という事かも知れないな。


 城の客室に手荷物を置いて、コンスタンザ女王と共に城の一角からバルコニーに出る。


「あちらに、塀に囲まれた少し大きな建物が見えると思います。あれは軍関係の施設で、新兵の訓練所として使われていたのですが……建物の老朽化が進んでいたので少し前に施設を移したのです」


 コンスタンザ女王がバルコニーから見える建物を指差して言った。


「つまり、あの土地に建築していけば良いという事でしょうか?」

「そうですね。建物の取り壊しは我が国の魔術師達に進めさせましょう。中の片付けも進んでいますし、魔術師達を動員すればいくらも時間はかからないはずです。如何でしょうか?」

「僕が取り壊しもしてしまって問題ありませんよ。寧ろ建材や資材を節約できて丁度良いかも知れません」


 この後にもネレイドの里とグロウフォニカで魔法建築するしな。元の建物を再利用する事で建材に余裕が出るならそれに越したことはあるまい。


「そんな事も出来るのですか。では……お願いできますか?」

「分かりました。歓待までには終わらせてしまいましょう」


 というわけで、早速みんなと共に再びシリウス号に乗り込んで場所を移動する。


「んー……。ほんとだ。ちょっと危ないところがあるよ」


 というのが建物を見たセラフィナの感想である。そうだな。見た目としても少し壁に亀裂が走っている箇所があったりするし。


「すぐに崩れたりはしないと思うけど……あと数年もすると危ないかも」

「それじゃ、今の内なら大丈夫かな。一応崩落なんかに気をつけながら、少し内部を見てこようか」

「ん。警戒しておく」


 セラフィナの見立てが確かなら今日明日の内は大丈夫だろう。崩落等が起こらないか、シーラも気を付けてくれるとの事で。

 というわけで、まずは建物の外観や内部を見て回り、どんな建材、資材が使えてどれぐらいの量になるのかを確認していく。

 老朽化しているとは言っていたが修繕の痕跡も見られ、内部は割と丁寧に使われていたという印象だ。


 恐らく魔法を使えばまだ建物を継続して使う事も出来ただろうが……まあ、そうだな。見えない部分で老朽化が進んでいるかも知れないし、そういった補修にも限界があるだろう。魔力ソナーのような技術があれば話も変わってくるけれど、新しい施設を作ってしまった方が、間違いがないのも事実だし。


 まあいずれにしても兵士達を思えばこそという事なのかも知れない。


 調度品や家具等々は運び出されて片付けは進んでいるので、これなら手間もかからなそうだ。ウィズに建材、資材の量を計算してもらい、元々運んできた量と合わせて、どのぐらいの建物を作れるかを見積もる。


 その上で周囲の建築様式に合わせて縮小模型を作り、コンスタンザ女王にも見て貰って――問題ないとなったところで作業開始だ。


「起きろ」


 建物の上の方から建材の種類ごとにゴーレムに変えて、訓練所の広場に降ろしていくというわけだ。石材、木材、ガラス等々。老朽化していても再構築して構造強化してしまえば大丈夫だ。通常の修繕と違って一旦全部解体してから再構築という形になるので、老朽化部分の見逃しもない。


 訓練所なので土地も広く、建材、資材を置くのにも困らないというのもこちらとしてはやりやすい。角ばったゴーレムに変わった建材は、体育座りをすればブロック状になる作りだ。広場に整列し、後で使いやすいようにブロック形態で重なり合っていく。


 建物の上から半分程をゴーレムとして分解したところで見物人も集まってきた。

 上から解体しているので空を飛びながらの作業だ。どうしても人目についてしまうが……まあ問題はあるまい。ガステルムと同盟の友好を示す上でも効果があるだろうしな。


 俺のゴーレムに合わせるように見物人に向かって笑顔で手を振るコンスタンザ女王である。見物人達も顔を見合わせて、笑顔になっていた。


 その一方で、みんなには足りない建材や資材をシリウス号から降ろしてもらう。運搬用ゴーレムに指示を出していくだけだし、量も大した事がないからそんなに手間はかからないが。


 そうして解体と資材搬入を終えたら次は建造である。

 ガステルム王都に見られる建築様式に調和するような迎賓館を建てるということになるが、こうした普通の屋敷は今までにも結構建てているので慣れたものだ。


 土台をしっかりと作ってからマジックサークルを展開。光球に溶かすようにして各種設備等々を建築していけば……程無くして母屋が出来上がった。各種設備に魔道具も敷設。土地を囲う塀も、無骨なものよりは迎賓館の様式に合わせて作り直していく。

 内部の照明にコルリスの作り出す水晶を使ったりというのもいつも通りだ。


 訓練場なので土地が余っているが、そのあたりには庭園を造っていけばいいだろう。噴水と東屋は構築したので、植え込みや花壇等の造園はガステルム王国側に任せる、ということで。


「噴水の周辺の造園をお願いしても良いでしょうか? 木魔法でそれらしく終わらせてしまうというのも味気ないですし」

「ふふ。それは腕が鳴りますね。迎賓館に似合うような素敵な庭にしたいものです」


 コンスタンザ女王に造園を頼むと、そんな風に言って嬉しそうに笑っていた。先程ゴーレムと一緒に手を振っていたのもそうだが……気を張っていない時のコンスタンザ女王は割と親しみやすい人なのかも知れない。


「さてさて。どんな植物を植えるのが良いでしょうか」

「椰子の木だとか、暖かい場所に見られる植物も良いですね。転移で他国に来たという雰囲気が感じられますし」

「ああ。それはあるかも知れません」

「屋根の色と合わせるならさっき見たお花が合うかしら?」


 といった調子で。コンスタンザ女王は性格的にもステファニアやアシュレイ、カティアと合うようで……庭園の構成についてあれこれと笑顔で話をしていた。


 肝心の転移門については――女王や騎士、人魚、魚人達が庭園の東屋に座って、和やかにお茶会をしているというような意匠だ。陸の民と海の民の友好的な意味合いだな。


 やはり本人をモデルにするのはコンスタンザ女王としても些か遠慮があるようなので、あくまで女王風の意匠ということになるが。


 転移門が出来上がれば、一先ずガステルムでの仕事も終わりだ。そんな頃合いになって、建築現場に兵士が駆けこんで来た。

 コンスタンザ女王は兵士の報告を受けると、笑顔になって言った。


「深みの魚人族が4人――揃って保護を求めてきたそうです」

「ああ……それは何よりです」


 グレイスが言うとマルレーンがにこにこして頷く。みんなが女王の言葉に笑顔になった。

 それはまた良い報せだ。ステルス船2隻に2人ずつで4人。グロウフォニカで合流する予定の2人と合わせて残り6人全員の無事が確認されたことになる。

 ガステルム王国での諜報活動中と聞いていたが、固まって行動していたのだろう。2隻だったのは報告すべき事ができた時に1隻が国に向かうだとか、そういう役割分担をしていたようだな。

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