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番外548裏 従魔反乱・後編

 魔法生物達は要塞の下――海溝にも魚人族がいる事に気付いたらしい。

 戦力を差し向ける事で要塞を守る敵戦力を分散させる事ができると、人間型が変化した魔法生物を中心に即席の部隊を組み上げると戦いの場を海中へと移す。


 それを追いかけるのは要塞周辺で戦っていた、長老と戦士長達率いる魚人の一団だ。

 集落は結界で覆っているし非戦闘員も転移で逃げられるよう準備を整えているが……変化した魔法生物達がどんな能力を持っているか分からない以上は、その行動を無視していて良いということもあるまい。いざという時は逃げるための時間稼ぎをする必要もあろう。


 魔法生物達は海へと潜りながら魚人達の追撃を無視して結界に取りついた。そうして、不可思議なマジックサークルを展開する魔法生物達。

 それは深みの魚人族も知らない術ではあるが――結界に対して何らかの干渉をしているのは一見して明らかであった。取りついた場所から結界に沿って波紋が広がっていたからだ。


 ……フォルガロ公国が敵拠点を制圧するために開発した術だ。しかし、結界を破るためには複数で取りつき、規模や強度に応じた時間をかける必要がある。行使中は動けないという欠点もあるので、本来なら隠密行動下か安全を確保した状況でしか効力を発揮しえない術だ。

 それ故フォルガロの騎士達も要塞攻略では活用できなかったが――魔法生物達にしてみれば相手に誘いをかける一手として使えるというわけだ。誘いだと分かっていても無視はできない。


「させぬぞ!」


 長老が魔力を込めた水の蛇を解き放てば――それは海中では不可視の力として働く。凄まじい勢いで水の蛇が伸びていって――目標と見定めた魔法生物の口腔内から体内へと入り込むと、急速に体積を膨張させ、内側から破裂させた。


 瞳の力によって魔法の射程距離や破壊力が遥かに増している。

 危険な敵と認識したのか、魔法生物達は一旦マジックサークルを引っ込め、長老に向かって一斉に弾幕を放つ。が、自らの座っている水球そのものを操ることによって、座ったままの姿勢での高速回避を見せた。


「続けえッ!」

「おおおおおおっ!」


 戦士長はオーラを纏い、凄まじい程の闘気を槍に帯びさせると、ブロウスやオルシーヴ達を引き連れて結界壁に取りつく魔法生物達へと突撃を仕掛けた。放たれる弾幕。槍を風車のように高速回転させる事で四方へ弾き散らして肉薄する。

 魔法生物達が近接戦闘用の魔力刃を展開すると魚人達と激突した。闘気と魔力とがぶつかり合い、干渉して火花を散らす。

 その時だ。突如戦士長達の背後――少し離れた場所にいくつもの魔力光の輝きが閃いた。魔法生物の別働隊……部隊を率いる個体の特殊能力で幻術を展開。結界を破ると見せかけて挟撃を仕掛けようとしたのだ。


 だが――背後からの魔力弾が魚人達に向けて放たれる事はなかった。

 要塞下部から白い何かが、凄まじい勢いで飛び出したかと思うと魔法生物の只中へと単身切り込んだからだ。


 アルクス。迷宮中枢の守護者、パラディンの本体だ。魔力光推進による飛行形態で飛び出し、有無を言わせない速度で接敵。敵中央で人型へと形態変化を成すと、勢いに乗せてブレードを振るう。

 さながら白い暴風。ブレードの光が煌めけば、巻き込まれた魔法生物達がバラバラになって吹き飛ぶ。アルクスの探知能力に魔法生物達の偽装は通じなかったということだ。だからこそ通信機を通して挟撃を承知の上で結界への攻撃を止めに向かうという、誘いの手に乗る事ができた。


「これが……アルクス殿の真の姿とは――」

「海底ならば人目に付かずに力を振るう事もできるというものです」


 常軌を逸した凄まじい機動力で縦横にブレードを振るい、拡散魔力弾を正確無比な精度でばらまきながら、いつも通りの調子で返答をするアルクス。

 その様子に底知れない程の実力を感じつつも、戦士長の顔に浮かんだ引きつったような笑みが……そのまま戦況の好転を喜ぶようなものに変化していく。


 テンペスタスに統率された魔法生物達は兵器として作られたからこそ戦いや殺戮を求めているようではあるが――彼らなりに作戦や戦略を組み立てて動いているのは間違いない。

 殊更強力な戦力であるアルクスが海底から動かないのを見れば、集落側への攻撃は一時的に断念して他の戦力を減らしにかかるだろう。アルクスが海底に控えているだけで後顧の憂いが無くなるというのは――有り難い話であった。


「心強いッ! このまま一気に押し切るぞ!」

「応ッ!」


 戦士長の言葉にブロウス達が咆哮するように答え――そして魔法生物達との戦いは更に激しさを増していくのであった。




 海原に打ち鳴らされるは重い剣戟の響き。

 伸縮自在の結晶の鞭が影すらも留めない速度で振るわれ、斧や戦鎚と激突して火花と衝撃波を散らす。結晶の魔法生物に相対するのはイグニスとマクスウェル。そしてチャリオットに乗り込んだローズマリーだ。


 イグニスとマクスウェルもまた、何ら見劣りしない速度で結晶の鞭と切り結んでいた。技術ではなく、純然たる身体能力に物を言わせて攻撃を叩き込む魔法生物。

 手数の不利を人数の有利、正確無比の反射速度と機動予測で補い、残らず打ち落とすイグニスとマクスウェル。


 薙ぎ払い、突き込み、搦めて巻き上げたかと思えば、技を外して踏み込む。踏み込まれた分だけ踏み込んで、勢いを乗せて激突し、弾き飛ばしてまた互いに踏み込む。


 本能対技術と経験という構図はシーラ達と同じだ。常軌を逸した速度の剣戟の中で、お互いに隙あらば必殺の一撃を叩き込まんと狙っている。

 周囲には他の者達もいるが、どちらの陣営も迂闊には加勢に入れない。


 テオドールやグレイスの戦いもそうだが、下手に割って入れば邪魔になるどころか、味方の攻撃に巻き込まれて死に兼ねないからだ。敵も味方も、仲間が割って入ったからと言って、途中で攻撃を止めるのは至難の業だろう。


 故に――遠巻きになって自分達の戦いを続けるしかない。そういう状況だ。

 ローズマリーのここでの役割は――時折ローズマリーに向かって叩き込まれる結晶の鞭を自身の術で撃ち落とし、敵の動こうとする方向に牽制の攻撃を繰り出して動きを阻害することだ。


 案の定埒が明かないと見て取ったか――。先に手札を切ったのは魔法生物の方だった。朝の陽光をその身の内に吸収して内部で反射増幅。鞭の先端から光弾を放ってきた。

 それを弾いたのは流星。ローズマリーの周囲を飛び回る魔弾。迷宮中枢の魔物、スターソーサラーから得た魔道具だ。


「振り出しに戻ったようね?」


 ローズマリーが羽扇の向こうで嘲るように笑う。結晶の魔法生物は――まるで憤りを示すかのように奇妙な高音を周囲に響かせると、結晶の鞭を使って己の両腕を自ら切り落とした。

 切り落とされた腕は空中を飛び回り――本体から放たれる幾条もの光弾を反射してからローズマリーに向かって撃ち放つ。


 イグニスが瞬間的に魔力光推進で押し込めば、接続されたチャリオットもぶれるように動いて光弾をやり過ごしていた。

 チャリオットと一体になったことでローズマリーが魔力糸を介して行っていた出力強化を、瞬間的、効率的に行うような運用が可能となっている。


 飛び回りながら切り結んで互いに位置を入れ変える。光弾が幾重にも反射を繰り返してローズマリー目掛けて放たれて――流星と爆裂弾がそれを撃ち落とす。光芒が閃き、大小様々な火花と爆発が巻き起こった。


 そんな爆風と衝撃の只中にあってもローズマリーの髪すら乱れない。心も冷静なままだ。堅牢無比な防御能力と馬鹿げた程の慣性制御は、イグニスと共に前線で戦う事が可能なようにと、稀代の大魔術師達と共に心血を注いで作り上げたものだ。


 彼女が言葉にして自分から伝えようとする事はないだろうが、少年の魔法を初めて目にした時に見惚れてしまったのだ。

 あの時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。余りにも流麗で精緻な魔法行使だった。だから、こうして剣林弾雨の戦場に身を置いても、自分を見惚れさせたものを信じるだけの話で。


「ローズマリー殿ッ!」


 核を明滅させ、マクスウェルが合図を送ってくる。


「ええ。わたくし自身の力で防御を行った後、攻撃態勢に移るわ」


 その言葉と共にローズマリーの足元にマジックサークルが輝く。魔法生物が光り輝く目を見開いたようだった。これからが攻撃だとするなら、今までの攻防は何だったのか。

 瞬間、何もかもが動きを変えた。マクスウェルがイグニスの手を離れ、ローズマリーの周囲を守るように舞っていた流星が軌道を変えて攻撃に加わる。


 当然、ローズマリーの守りが薄くなるかと思いきや、四方八方から飛び交う光弾をチャリオットが全て弾き散らしていた。危険を感じた魔法生物が、その力を振り絞ったにも関わらずだ。ローズマリー自身が練り上げた魔力を込めて防御能力を強化しているのだ。


 宣告通り、その防御過程すら長くは必要としない。


「――計算式起動。迎撃に移る」


 後の防御は全てマクスウェルが行う。周囲一帯に無数の磁力線が展開。結晶の鞭も光弾も、全ての行動をマクスウェルが弾き散らす。

 マクスウェルが――今までの戦いの最中で行っていたのは分析と演算だ。

 味方の動き、魔法生物の動き――。こう打ち込めばどう切り返すか。受けられない攻撃ならばどう凌いで反撃に転じるか。それらを全て計算に入れた上で幾通りものパターンを組み上げ、後は電磁加速によって味方を軌道上から避けながら、敵の攻撃全てを叩き落とす。


 防御が完璧であるならば――攻撃はイグニスと流星が行えばいい。ローズマリーからの魔力供給と磁力線展開によってイグニスとマクスウェルは馬鹿げた速度で魔法生物を押し込む。マクスウェルの動きで手詰まりになったところを流星が四方八方からすれ違いざまに攻撃を加える。戦鎚が叩き込まれて右に左に弾かれる。


「――詰みだわ」


 魔法生物の反応速度が――追いつかない。流星に注意が逸れた瞬間、イグニスの手から光り輝く魔力糸が放たれて魔法生物の身体や鞭を拘束していた。

 チャリオットとイグニスを魔法の発動体と見立て、ローズマリーの術をイグニスが杖代わりとなって行使する。


 魔力糸で動きを止められたとしても、ほんの刹那の事だっただろう。だがイグニスとマクスウェルにはそれで事足りる。


 爆発と一閃とが、重なる。イグニスのパイルバンカーが胸を貫き、頭部をマクスウェルが刎ね飛ばしていた。撃ち込んだ勢いそのままに頭上に掲げたそれを、爆裂の術式が容赦なく内側から粉砕する。結晶の魔法生物は朝焼けの海に光と共に散った。




 3隻の大型船に一体ずつ配置された大型魔法生物は、いずれも特別製だ。

 但しアダルベルトの旗艦に配置された大型魔法生物、プラエトールだけは他の二体に比しても、明らかに一線を画す力を有していた。


 というのも、テンペスタスが攻撃に出るならプラエトールが本陣――アダルベルトの防御を行い、逆にテンペスタスがアダルベルトを守るならば、プラエトールが主体となって攻撃を行うという運用法を想定していたからだ。


 方々に手を尽くして集められた素材――魔獣の因子を惜しみなく注ぎ込まれたプラエトールは、故に身体強化系の術と共に闘気も扱う。そんな魔法生物が、テンペスタスの暴走と共に覚醒したのだ。紛れもない怪物であった。


 漆黒の闘気を纏うグレイスの一撃を、プラエトールは闘気を纏った爪と強靭な被毛の傾斜で受け流していた。

 すぐさまプラエトールは反撃に転じる。自身の何倍もの体躯を持つ獣の打ち下ろしを、しかしグレイスは真っ向から受け止めた。

 もう一方の斧が閃く。黒い獣の身体は柔軟だ。上体を大きく逸らして回転するように避けながら、天を突くような膝蹴りが跳ね上がる。側転して躱し、斧による横薙ぎの一撃が獣に迫る。


 闘気を集中させた爪で斧を受け止め、グレイスの側頭部に目掛けて蹴り足が跳ね上がる。漆黒の闘気が生き物の様にうねり、その足を捕らえようとするも、脚部から放たれた術――爆炎の反動で無理矢理に後ろに跳ぶ。そんな術の使い方をしてもプラエトールにダメージは無いようだ。


 その動きは――闘争本能に根差すものなのだろう。獣の反射速度としなやかな柳を思わせる柔軟性を以って、一流の武芸者にすら匹敵するような動きを見せる。


 グレイスの斬撃を避け、或いは爪を叩きつけ。弾き弾かれては砲弾のような速度ですれ違う。互いの闘気、魔力の残光が空中に刻まれた。


 真っ向からの激突。互いに退かない。斧と爪とで足を止めての斬撃の応酬だ。グレイスとプラエトールの戦域から離脱し損ねた小型の魔法生物が、さながら水風船でも割るように粉々に砕け散る。


 頸動脈を狙って空を引き裂く爪。斧の腹で逸らして、もう一方の斧が天を切り裂くような逆風の斬撃を見舞う。皮一枚で避けて、プラエトールは身体を回転させる。尻尾がグレイスの足を掴んでいた。尾とて鋼鉄をひしゃげさせるほどの筋力を有するが、グレイスの華奢にも見える足は漆黒の闘気を帯びていて、傷つけるには至らない。しかし――。


 咆哮と共にグレイスの身体が振り回された。遠心力をつけて、天高くから下方へと投げ落とされる。

 シールドを足場にグレイスは空中で留まる。上空のプラエトールは全身から膨大な量の闘気を噴出させ、マジックサークルを展開すると己の身体能力を爆発的に強化させる。そうして腕を頭上で交差させ、巨大な爪撃を見舞う構えを見せた。


「……なるほど」


 グレイスは――その場から動かない。背後にフォルガロの船団があったからだ。プラエトールはにやりと口の端を歪ませる。その間にも闘気が膨れ上がっていく。


「ま、まさか――」


 状況を悟った船団の乗組員達が顔面を蒼白にして悲鳴を上げる。

 そう。プラエトールはテンペスタスの副官となるべくして作られた存在。魔法生物を通して戦いの様子を見ていたのだ。

 強敵ではある。それは認めよう。だがこの戦場にいる敵達は、貧弱な者達――フォルガロの将兵達も殺すまいと動いている。


 同種の死を忌避する、戦闘者として不完全な存在だとプラエトールは断じる。


 ならば話は簡単だ。攻撃を準備する為の僅かな隙――逡巡させる程度の時間を稼げれば、それで良い。もっとも、これだけの力。広大な範囲を一切合財薙ぎ払うような一撃だ。プラエトールの反射速度と瞬発力を以ってすれば、即座の回避を選択したとしても命中させられる自信があった。


 グレイスもまた、避ける気はなかった。赤く染まった目を見開くと漆黒の闘気を噴き上げて斧に纏わせる。


「オ、オオオオオオオオオオオオオオッ!」

「はあああああああああああッ!」


 咆哮と裂帛の気合とが重なる。プラエトールの全身のバネを用いて、十字交差の爪撃が放たれた。爪撃などという生易しいものではない。辺り一帯の空間ごと引き裂くような、巨大な闘気の奔流がグレイスに迫る。グレイスは迷わず、一方の斧を両手で構えた。


 激突。一瞬後に行き場を失った闘気がひしゃげて視界を埋め尽くすほどの巨大な爆裂が起こった。

 放ったプラエトールの方まで爆風の余波がやってきて――満足げに笑う。


 そして果たして――そこに見る。驚愕に目を見開く。

 そこにあったのは渦巻く漆黒を纏う城壁――いや。城壁と見紛うような巨大な斧の腹だった。

 ――神珍鉄。漆黒の闘気を纏った斧の刃が、さながら城壁のごとく巨大化していた。広く、厚く。グレイスは足元に展開するマジックシールドにも漆黒の闘気を纏い、身体を固定して支える事でプラエトールの渾身の一撃を受け止めてのけたのだ。


 爆風に紛れて既にグレイスは動いていた。大きく迂回してきた鎖がプラエトールの身体に触れたかと思うと、生き物のように巻きついたのだ。

 あちらこちらから漆黒の雷が迸る分厚い鎖。プラエトールが闘気を振り絞り、引き千切ろうとしても千切れない。力を入れた分だけ、どこかに抜けて行ってしまうようだった。


「……無駄です。鎖自体を私の闘気が覆っていますし――触れている限りは闘気も魔力も、吸収してしまいますから」


 漆黒の闘気に宿る、吸血鬼としての能力。それはつまり、グレイスの闘気が込められた鎖から逃れたいのなら、闘気も魔力も使わない素の身体能力で引き千切れと言っているのに等しい。いや、相手から吸収した闘気と魔力を鎖の強化に用いているから、それ以上の力が必要となるのか。


 ゆっくりと、グレイスがプラエトールの視線の高さまで浮かんでくる。先程の一撃を止めるのに相当な負荷がかかったのか、グレイスの指先からは僅かに血が滴っていたが、それを払うように腕を横に振るう。そして黒い火花を散らしながら、拳を握った。


「ああした手段に出るような輩であれば――私としても気兼ねはいりませんね。再生能力を持つ相手に斬撃がどこまで有効かは確信を持てませんので……徹底して面で叩き潰します」


 次の瞬間、爆ぜるような速度でグレイスが前に出た。動きを封じられ、繋がれているプラエトールには逃げる事もできない。ただ絶望の咆哮を上げただけだ。


 漆黒の闘気を纏った拳がプラエトールの顔面を捉えた。打ち下ろしの一撃に、プラエトールの身体が流れ星のような速度で弾かれて海面に激突。馬鹿げた高さの水柱を上げた。

 殴り飛ばすと同時にシールドを蹴って、追う。海へと吹き飛ぶ獣を追う。

 追って、打撃を叩き込む。迷わずに海中に飛び込んだと思えば、無数の打撃と共にいくつもの水柱が弾けた。


 プラエトールの身体が海底に激突した。地面に闘気を流し、鎖を握り、めり込まないように固定。後はただ――完全に動かなくなるまで打撃を叩き込むだけだ。

 立て続けの衝撃に舞い上がる膨大な量の海水。海が爆ぜてグレイスのいる海底までが空気に晒され、周囲に舞い上がった海水が雨となって降り注いだ。

 周囲を揺らす地響きのような振動が幾度も響いたが――やがてプラエトールの身体があちこちひしゃげて再生も始まらない事を確認すると、グレイスは静かに海から上がってくるのであった。

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