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番外456 宴と交流と

「沢山の方々にお集まりいただき、温かい祝福の言葉を賜りまして、皆様には深く感謝を申し上げます。友人であるテオドール公にも、今回の披露宴に際してこうして快く宴の会場を用意して下さったことを有り難く思っているところです。私や妻からの感謝の意として、此度の宴の席を楽しんでいっていただけたなら望外と存じます」


 と、アルバートが丁寧に挨拶をし、一礼したところで拍手が巻き起こり、ゴーレム楽団の楽しげな演奏と共に披露宴が幕を開けた。


 アルバートの結婚式に関しては新郎新婦の2人が主体であれこれ企画する形だ。

 だからその披露宴に際しても俺に会場を貸してもらえないかと打診されたわけだ。

 勿論、俺としても異存はない。というわけで、フォレスタニア城本棟の大広間がその会場として決定されたというわけである。


 アルバート側が主催の宴会という事で――楽士はゴーレム楽団、扱う楽器は魔法楽器だ。各国で集めた楽器や魔法楽器やらも用意して演出用の魔道具を仕込んだ特設ステージも用意しているが……イルムヒルト達も、ハーピーやセイレーン達も演奏には乗り気なので食事等々が落ち着いたら交代して演奏していく、という方向で考えている。


 話を聞いてみれば、新しく作ったキーボード等の魔法楽器にも習熟した者が現れ始めたそうで、みんなの前でお披露目できるのなら嬉しいとのことだ。


 料理に関しても企画はアルバートとオフィーリアだ。冒険者ギルドに食材調達。実際の料理に迷宮村の住民達、フォブレスター侯爵領の料理人やコウギョク達など、あちこちにアルバートとオフィーリアが助力を頼み、そうして助っ人として駆けつけてきてくれているというわけである。


 そんなわけで、俺がルーンガルド側で再現した料理の他にも、西方諸国の料理、東国の料理を好きなように味わえるという、かなり国際色豊かな宴会になっている。


 アルバートとオフィーリアの考えたコンセプトとしては異国情緒を味わうもよし、食べ慣れた料理を味わうもよしといった感じらしいが、やはりというか、みんな明らかに他の地方の料理であるとか再現料理のように、普段あまり食べられないものをという方向で動いているようだ。

 ヴェルドガルの面々もヒタカやホウ国の料理を口にできるということで、楽しんでもらえる良い企画なのではないだろうか。


「ほう。海の幸のカレーか」

「あちらにありましたよ」

「こちらの物は激辛なのだとか。子供向けに甘口というのもありましたが」

「ふうむ。どれから試したものか」

「激辛は気になるな」


 と、レイメイの言葉にツバキとジンが答え、御前とオリエが思案しながらカレーコーナーの方へと進んでいく。


「あー。勝負事にはしないようにな」


 レイメイの釘を差す言葉に、シホが肩を震わせ、御前とオリエも「分かっておる」と、笑っていた。

 子供達と妖怪達は明らかにカレーに食いつきが良いようで。この辺はヒタカでカレーを広めたからやや責任を感じなくもないが……。まあ、各種カレーレシピを用意しておいて正解だったな。


 イグナード王やイングウェイは肉料理が好みのようだし、エルドレーネ女王達は魚介系と、好みが垣間見えて面白い。

 オーレリア女王達、月の面々はヨーグルトであるとか、新鮮なサラダや果物を受け取ってきて「大地の恵みは素晴らしい……!」というような反応だった。


「いや、良い反応じゃないかな」

「喜んで貰えたなら嬉しいね」


 俺の言葉に、アルバートが笑う。


 今回は工房と迷宮商会の商品を陳列する特設会場を、披露宴の会場の一角にも設けていたりする。前日からミリアムが冒険者ギルドと共にやっていたものを、披露宴の会場にも用意したわけだ。今は東国の料理に舌鼓を打っているミリアムも、状況が落ち着いたら特設会場で魔道具の実演や説明など始めるのではないだろうか。


 そうして食事の席も和やかに進んでいき――一通りの演奏を終えたゴーレム楽団が、まずはハーピー達と交代する。

 キーボード担当はまだあどけない印象のある、年少のリリーだ。人化の術で腕を人間のものに変えて、身体を大きく動かしながらも楽しそうにキーボードを弾きこなしていた。かなり見事なものだ。

 合わせて歌うラモーナや男衆の鳥人達。ハーピー達の歌声は流石という印象である。


 ハーピー達が終わると今度は東国からのお返しということでホウ国のシュンリン王女が幻想的な二胡の音色を響かせたり、ヒタカの巫女、ユラが神楽と共に舞を踊る。

 それならば今度のお返しは海の音色をと、セイレーン達がハープを弾き鳴らす。

 イルムヒルト達もしっかりとその中に参加して――演奏の方も交流があるものだから結果として実に国際色豊かな事になっていて、各国の面々も楽しそうに様々な音色に聴き入っていた。


 ベシュメルクのデイヴィッド王子も聞こえてくる歌声にきゃっきゃと喜んで手足をばたばたとさせている。


「素晴らしい、ですね。こうして各国の皆さんと笑顔で交流できるというのは」


 コートニー夫人に抱かれた王子の笑顔を見て、エレナも微笑んで言う。


「国が変わればこそ、か。このような日が来るとは妾も想像してはおらなんだ」

「折角ですし、私もベシュメルクの曲を何か奏でて参ります」

「良いですね。ご一緒します」


 ガブリエラが立ち上がると、エレナも応じる。2人でどんな楽器が扱えて、郷土のどんな曲が弾けるのかと相談してから特設ステージの方へと向かって行った。


「巫女姫と巫女達は空いた時間に歌や演奏も嗜む者も多かったな、そう言えば」


 と、パルテニアラがその背を見送って笑う。

 イルムヒルトからリュートを借りたガブリエラが楽しそうな音色を奏で、エレナが澄んだ歌声を響かせたり、二人で並んで弾き語りをしたりと、楽しそうにみんなと演奏の輪に加わっているようだ。


 動物組も各々に食事をとりながら、リズムに合わせて鼻先をふんふんと動かしたり尻尾を揺らしたりと、場の空気を楽しんでいる様子であった。




 そうして宴も一段落して、自由に歩き回って話をしたりといった、交流に主眼を置いた流れになる。アルバートとオフィーリアのところに沢山の人が来て、改めて祝福の言葉を口にしたりと、和やかな雰囲気で進んでいく。


「おめでとう、アルバート。オフィーリア様も。末永くお幸せに」

「ありがとう、ヘルフリート兄上」


 と、ヘルフリート王子も祝福にやってくる。そうして挨拶の言葉を交わしてからアルバートが言う。


「今なら、グランティオスの人達にも、気軽に聞きたい事を聞けるような雰囲気なんじゃないかな?」

「そう、だね。それは確かに。気を遣って貰って助かるよ」


 ヘルフリート王子は元々海王討伐に参加しているからな。メルヴィン王の目を気にせず挨拶回りがてらに聞きたい話も聞けるというわけだ。


「うん。兄上の事も、応援してるよ」

「ああ、ありがとう」


 というような会話を交わして、ヘルフリート王子はエルドレーネ女王やロヴィーサ、マリオンに真剣な表情で質問したりしていた。やがて聞きたい事も聞けたのか、丁寧に一礼してからこっちにやってくる。


「有用なお話は聞けましたか?」

「そう、だね。ネレイド族とグランティオス王国の交流について聞いてみたけれど。昔から時々顔を合わせる事はあったらしい。大体友好的ではあるんだけどお互い領分を守っていて、物々交換をしたりなんて言うのが主だったらしいね」


 と、俺の質問にヘルフリート王子がそんな風に答えてくれた。


「それは……何というか幸先のいい話なのではないでしょうか?」

「グランティオス王国の方々と友好的なら、色んな状況に対応できますからね」


 ヘルフリート王子の言葉に、グレイスやアシュレイも顔を見合わせて笑顔で頷き合う。


「そう、かも知れない。それに、エルドレーネ陛下も面白そうな話だから、後で色々聞かせて欲しいと」


 ヘルフリート王子の言葉に視線を巡らせば、エルドレーネ女王はそれに気付いてにやりとした笑みをこちらに向けてきたのであった。


「ん。エルドレーネ陛下なら色々事情を話しても大丈夫そう」

「そうね。心強い味方になってくれるのではないかしら」


 と、シーラの言葉にクラウディアが微笑むのであった。そうだな。後でエルドレーネ女王も交えて話をしてみるとしよう。

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