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番外428 温泉国際交流

 城での歓待を終えてから、皆で火精温泉へ向かう。

 温泉内の設備を目にするなり「おお……」という声が漏れていた。


「あれがアウリア殿に聞いた水の上を滑る遊具か」

「うむうむ。あれは良いぞ」


 パルテニアラは空を飛んで高所から遊泳場の設備を見てきたのか、戻ってきて笑顔でそんな風に言うとアウリアが頷いていた。

 マルセスカやシグリッタ、それに妖精女王のロベリア、御前やコマチ、小蜘蛛達といった面々がうんうんと頷いていたりして。最近泳げるようになったカルセドネとシトリアも目をキラキラとさせている。


「遊泳場で遊ぶ場合、水中呼吸の魔道具の用意があるから、それを使うと良いよ。泳げなくても大丈夫」


 というとスティーヴンのところの子供達が、期待感を露わにお互いの顔を見合わせて笑顔になったりしていた。

 うむ。内陸育ちだから泳げない子も多いだろうとは思っていたが、このへんは的中したか。


「コルリスの持っている物が水中呼吸用の魔道具よ」


 ステファニアの言葉を受けて子供達の視線がコルリスに集まる。コルリスは腕輪型の魔道具を爪に引っ掛けて子供達に見せて回る。


「遊泳場の――あの監視塔に魔道具は置いてあるからね。バロールやティアーズも見張りをしているから、そこで受け取ると良いよ」

「はーい!」


 俺の言葉にバロールが目をぱちぱちとさせるように頷き、子供達の元気のいい声が重なる。ティールもフリッパーを動かして声を上げる。自分も遊泳場で泳いでいるから、安心して欲しいとのことだ。うむ。


「ならば私も遊泳場側の護衛にいきましょう」


 と、アルクスが言う。


「んー。気持ちは嬉しいな。うん。そうだな。見張りは交代でっていうのはどうかな? アルクスは後で休憩所の話にも加わってもらう予定だし、遊ぶ時間も作って欲しいからね」

「おお……。ありがとうございます」


 アルクスは笑顔でそんな風に答えていた。


「デイヴィッドは私に任せて、コートニーはのんびりしてくると良い」

「良いのですか?」

「君は昔から温泉が好きだっただろう? 普段から頑張っているし、こんな時には楽しんでくれたら私も嬉しい。それに……摂政の仕事でデイヴィッドと触れ合う機会が減ってしまったのが、少しね」

「ああ。それは――そうですね。確かに」


 クェンティンとコートニーがそんな会話をかわしている。コートニーは嬉しそうに笑うデイヴィッド王子の頬に触れてから、やがて微笑んで頷いた。


「それじゃあ、今回はあなたにお任せします」


 王子や貴族の子となると乳母がついているものだったりするが。クェンティンもコートニーも自分で積極的に育児に関わりたい派らしい。クェンティンはデイヴィッド王子を抱いて嬉しそうにしていて、子煩悩な様子なのが傍目にも分かると言うか。


 うん……。何となく、そういうのは良いな。


 そんな風に思いながら眺めていると、ふと視線を移した時にグレイスやアシュレイから微笑まれてしまった。むう。


「ふふ。それじゃあ私達もお風呂に入ってきますね」

「ん……。また後でね。多分、風呂から上がったら休憩所で話をしていると思う」

「分かりました」

「うむ。また後でな。国交に関する話などには妾から口出しはせぬが、立ち会いはしよう。アルクスともこれから長い付き合いになるであろうし、色々と腰を据えて話をしたいしな」


 と、パルテニアラ。


「私もです。まだまだ修行不足ではありますが」


 パルテニアラの言葉にアルクスがそう言って頷いていた。


「まあ、話があるって言っても時間もあるからね。のんびり入ってきて大丈夫だよ。集まってからゆっくり話そう」

「ありがとうございます」


 そう言ってエレナやガブリエラも微笑む。

 というわけで男湯、女湯に分かれて、みんなで入浴ということになったのであった。




「コレ良イ。気ニ入ッタ!」


 と、マルブランシュ侯爵の使い魔である青ガラスのロジャーは、打たせ湯を少し浴びたり離れたりしながら嘴で羽毛の手入れなどをしているようだ。

 その横で魚人達が普通に打たせ湯を楽しんでいたり、ケウケゲンとサトリが洗髪剤を使ってお互いの背中の毛を流していたり、ジャグジー風呂で河童親子がピエトロと一緒に脱力していたりと……色々カオスな光景になっているが、王や領主の面々も随分馴染んでいるようで、その光景を楽しそうに眺めたり、一緒にジャグジーや打たせ湯を楽しんだりもしているようだ。


 サウナには先程イングウェイ、ゲンライやレイメイ、ジンやイチエモンといった面々が一緒に入って行った。忍者頭巾は相変わらず外せないイチエモンなので割とシュールだが。


「しかし、良い湯ですな。疲れが湯に溶けていくようです」

「いや、全く」


 マルブランシュ侯爵やマルコム達もそんな風に湯船を堪能していた。王や、領主や各国の重鎮達は温泉でということで、随分リラックスしているようで何よりである。

 そんな光景を見ながらも、俺達も湯船に浸かりながらのんびりとする。


「スティーヴン殿は髭を剃ったのだね」

「王城に出入りする以上は、多少は身綺麗にしておいた方がいいかと考えてな。元々王城に仕掛ける際、人相を分かりにくくする目的があってのものだった。まあ、テオドール達に会う以前に騎士に覆面を切られて顔を見られていたからな。なし崩しにではあるが、啖呵を切るのに正当性が増すかと思ってやっていた部分もあったが……それも必要なくなった」


 エリオットの言葉に、スティーヴンは自身の顎に触れてそんな風に答えていた。

 確かに、顔を見せて騎士や兵士達に啖呵を切るスティーヴンはインパクトが強いものがあったな。


「顔を見せて、か。うん。確かに仮面だと最初に信用を得るのは色々と大変だった場合も多かったな」


 エリオットはスティーヴンの言葉に何かを納得するかのように頷いていた。エリオットならではの苦労があったのだろう。イチエモンも共感できる部分、だろうか? まあ、イチエモンの場合は変装してしまえばいいのだろうが。


「――というわけで、日取りも決定しました」

「ほほう。アルバート王子は結婚とな。目出度いことだ」


 と、イグナード王がアルバートの言葉に相好を崩す。


「そうなのです。招待状も用意しましたが、直接お会いする機会に恵まれましたから。ご挨拶に回っておいた方が良いかと思いまして」

「なるほどな。必ず式には顔を出すと約束しよう」

「何せ、アルバート王子には空中戦装備もそうだが、普段の執務でも工房の魔道具に世話になっているからな」


 レアンドル王が言うと、領主や王達もうんうんと頷く。

 アルバートの結婚式への招待も、中々順調なようだ。女湯ではオフィーリアもああしてエルドレーネ女王やオーレリア女王、御前やオリエといった面々にも声をかけているのだろうと予想されるが。


「押印機等には随分助けられているからな。あれが無かった頃には今更戻れんよ」


 と、エベルバート王が笑う。事務用品も相変わらず好評なようである。

 そんな風にして、男湯の時間はのんびりと過ぎていく。

 プールの方は――バロールとの五感リンクで確認してみれば、子供達がティールやコルリス、ホルンの背中に乗っていたり、カルセドネやシトリアも一緒にウォータースライダーで滑って行ったり、色々賑やかな事になっている。


 アウリアとロベリア、御前とオリエ、そしてパルテニアラが一緒にいたりして。子供達に混ざってウォータースライダーを滑ったりもしているようだな。笑顔が絶えないようで何よりである。


 さてさて。もう少し湯船に浸かって身体を温めたら、休憩所へ向かうとしよう。みんなが集まったら色々話をする予定だからな。

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