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06.神楽と王

 「あんた、国王のこと、嫌ってるのか」

しばらく見詰め合って、白夜が出した質問はそれだった。やはり、そこが一番気になるところらしい。

「まあね」

神楽は遠くを見ながらそう答える。

 これ以上聞いてもいいのか、白夜は迷ったように神楽をちらりと見ながら、だが気になるのかまた問い出す。

「・・なんで嫌いなんだ。嫌いというよりも、なんか恨みがあるみたいな顔をしてたけど」

神楽は苦笑しながらゆっくりと語る。

 「ああ。恨みはあるよ。俺の・・・母親はね、俺を嫌っているんだ。俺のこの青い瞳が化け物みたいに見えるらしくて。そして、俺の母親は、あいつと手を組んでる。本当は駄目なことだ。いくら王だからって、一族の中に足を突っ込んではならない。けれど、俺の母親はそれを許した」

 それだけを言い終わり、神楽はため息をつく。

「それで。あんたが嫌ってる理由は、それだけじゃないだろ」

 やはり鋭い。

 この後の事は、誰にも言ってはいない。ここで終わろうと思っていたのに。やはり、無理らしい。

 「・・・そうだよ。それだけじゃない。むしろ、それはあいつを嫌っている理由にはならないしな」

 少し、言葉につまる。脳裏に蘇ってくる、過去の自分。

 白夜は少しためらったが、それでも聞くべきことだと判断したのか、それで、と小さく聞いた。

 「俺達は、小さい頃よく遊んでいた、親友だった。神宮一族と、王族。この二つの一族は、この国の中でもっとも権力を持っているところだ。俺達の保護者はお互い、いいことだと言って俺達が遊ぶことを否定しなかった」

 段々と蘇っていく、十歳の自分。あの頃の自分は、どうだっただろうか。ちゃんと、的確な判断を下していただろうか。

 十歳にもなると、もう訓練を始めているところだ。剣術や、学問でも、すべてに秀でておかなければならない。

そういう世界に生まれてきたのだから。

 「いつものように・・・遊ぼうと思ってた日。俺は待ち合わせの場所に、少し遅れてついた。寝坊してしまったんだよ」


 《ごめーん。遅れた》


「そういって、待ち合わせの場所に行ったとき、俺は声が出なかった」


《あっ、遅かったな、神楽・・・ああ、これ?別に気にしなくていいよ》


 「あいつの足元にあったのは、無数の『死体』。それを見て、笑顔で蹴飛ばした」

あの時のことは、絶対に、忘れない。忘れることはできない。その時初めて思ったのだ。

 怖いと。

 昔から、自己中心的で、自分の言ったことが実現しないとすぐに怒るような奴だった。

 瑠樹亞の傍に転がっていた死体は、近くの悪がきのものだった。きっと、そいつらが何かを言って来たのだろう。瑠樹亞も、神楽も、後ろ盾のおかげで逆らう奴は居なかった。しかしたまにいるのだ。一族なんて関係ない、気に入らないからちょっかいを出そうとする子供。

 「それで、あいつはなんていってたんだ」

 言葉を発してからしばらく時間が経っていた。白夜も少し青い顔をして、続きを聞こうとする。きっと、自分はこの白夜の顔よりもだいぶ青い、暗い顔をして話しているのだろうと、神楽は思う。

 「なんで、そんな青い顔をしているんだって。こいつは気に入らなかったから、殺した。それだけだって。俺は何を言ったらいいのか分からなくて、ただその足に転がっている死体を見ていた。そして、その後俺は言ったんだ」

《瑠樹亞は、化け物だったの》

「するとあいつは何事もなかったような顔をして、もしそうだったらどうする?とまるでゲームをしているかのように言って来たんだ。俺は、批判した。人は人を殺したら駄目だと。そしてお前は人なのだからと、十歳の俺は、なんとか言ったんだ。すると、あいつは顔色を変え、言い出した」

 それが、神楽には忘れられない。

《人じゃなければ駄目なのか。化け物で何が悪い。体がもし、人だとしても、俺はきっと化け物になる。それにお前も、化け物じゃないか》

 十歳の子供が言った言葉ではなかった。当たり前のようにそう言ったあいつは、神楽の方へと歩き出す。

《神楽も化け物だろう。こっちへきなよ。楽になるから》

「差し伸べられた・・・その手を、俺は却下した。手を振り払ってお前とは、違う。そういって、俺は駆け出した。それから俺はあいつに会ってない。一回も」

 そこまで言うと、神楽はゆっくりと深呼吸する。白夜は支えるように神楽の腰に手を回し、しっかりと抱きしめる。悪鬼の類なのだから、神聖なものに触っていい気分はしないだろうに。

「思い出さしてすまなかった」

 そう謝った、金色の髪をした悪鬼の顔は、とても悲しそうで、それでいて美しかった。本当に悪鬼の類かと思うほどで、神楽はやさしく微笑んだ。

「疲れた。ちょっと寝かして」

そういい、瞳を閉じていった。





久しぶりの更新でーす。校外学習に行ってたもんですからね。広島へ!関西の私達にとって、広島っていうとなんか遠い気がしましたぁ。(しただけですが)

 もうすぐ期末テストなんです。だから更新はちょっと遅れると思います。ですが、また書くので見てくださいね。

以上、愛夜でした。

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