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第八話 チートの限界

 無精ひげを生やし、黒っぽいサングラスを掛けたハッカーは、ゲームからの脱出の可能性を探っていた。無数の情報端末ウィンドウが緑色に光る。


「お、俺は衰弱死なんてまっぴらごめんだぜ!」


 ハッカーは自分で仕掛けた設定を解除しようとして、また失敗する。何度やっても失敗する。もしかして最初にパスワードを打ち間違えたのか。

 

「クソ! かくなる上は、俺が直々に出向いて魔王を倒してやる! こっちはチートが使えるんだ! 最強の装備も、魔王の居場所も、俺には思いのままだ! 負けるはずがない!」


「えーと、魔王の現在位置は……オフィニシュの街に潜伏しているだと!? 一体どうやって……まあいい。座標さえ分かっていれば問題ない」


「空間移動〔セル・テレポート〕!」


 ハッカーは、白銀の最強装備で身を固め、オフィニシュの街に飛んできていた。ここから x+20 z-44 進んだところに、魔王はいる。座標どおりに進んでいくと、そこには深夜の宿屋兼酒場があった。


「魔王がこの宿屋に泊まっているのか? まあいい。俺は魔王を殺すだけだ」


 ドアと壁をすり抜け、ハッカーは座標通りの場所に辿り着く。

 

「ああなるほど……小娘に化けていたわけか……ははは! どうりで見つからないはずだ! だが逃避行もここで終わりだ! 死ねィ!」


「いいえ! 終わるのはあなたのほうよ! ライトニングボルト×6!」魔女カタルの雷撃が荒れ狂い、部屋の外にも轟音と衝撃が伝わる。

「無駄だなぁ! これは魔法耐性200%の防具だ! 蚊に刺されたほどにも感じないね!」


 咄嗟に跳ね起きたマオの短刀ナイフが、喉元に突き刺さる。かのように見えた。

 

「無駄なんだよぉ! 物理耐性300%! どんな武器でも俺は傷つかない!」


 だが衝撃で跳ね起きたのはマオだけではなかった。


「そこまでだ!」扉が開かれ、マイナとキルファが現れる。


「増援か! だが無敵の俺様に何をするつもりだ?」

「武装解除!×9」「装備解除!×8」


 無敵の装備にも、弱点はあった。実は、相手の装備品を一時的に剥がすネタスキルが存在するのである。低確率だが、繰り返し唱えることでその成功確率は増す。

 

「な、なんだと!? お、俺の装備が!?」不正に作り出された装備は、剥がされた瞬間 異物イリーガル・アイテムと判定され、システムによって消滅させられる。


「俺たちがチーターに出会ったのが、初めてだとでも思っているのか? お前はチーターの中でも、最低のチーターだ!」


 マイナの鞘から抜き放たれた刃は、すぐまた元の鞘に収められた。スキル抜刀術。胴体を真っ二つに切り裂かれ、ハッカーはヴァルハラへと転送されていく。

 

「そいつが……そいつが魔王だ!! 俺はゲームを終わらせに来たんだぞ!!」


 指差す先にいたのは、マオ。その顔は、今にも泣き崩れそうであった。

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