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第六話 マオの選択

 結論から言えば、マイナたちは、魔王を仕留められなかった。

 

 ハッカーのせいでデスゲームと化したこの世界で、唯一の希望であった「魔王の撃破」フラグが立たなかったことはちょっと致命的と言えた。このままだと本体が眠り続けて、いずれ衰弱死してしまう。

 

 宿屋の一階にある酒場で、マイナたちは相談する。

 

「まさか魔王が逃げた後だったなんてな」戦士マイナはため息を吐いた。

「これまではそんなことなかったのかにゃ?」女盗賊キルファが問う。

「前代未聞だ。ハッカーがU2O(ユーツーオー)をデスゲーム化させたことが影響しているのかもしれない」聖職者クリスが言う。

「勝利条件が変わっちゃいましたからね。これまでは無謀でも正面から攻撃するしかなかったのが、逃げ続けるだけでも勝てると気付いてしまったのかも」魔女カタルは分析する。

 

「マオちゃん、洗い終わったアルよ♪」武道家のリンリンがマオを連れて風呂場から出て来る。マオが着ているのはフリルのついた白のワンピース。二人が並ぶと、マオが子供のように見える。


 キルファは「かわいいー」と栗色のソバージュっぽいマオの頭をくしゃくしゃ撫でる。

 クリスは紅茶を飲みながら「乞食を引き取るとは殊勝な心がけだ」などと言っている。

 カタルの顔は引きつっている。

 

「じょ、女性を引き取る!? こ、これはどういうことですか? あ、あれですか? 紫の上(むらさきのうえ)ですか? 幼い頃から自分好みの色に染めてやるーとかですか!?」カタルが攻勢を強める。

「いや、なんか最初見たとき普通のキャラじゃないっぽい雰囲気があったんで……」

「一目惚れですか! 一目惚れですか! じゃあ私は一体どうすればいいんですか? またメテオ降らしますよ! メテオ!」

「メテオはやめろって。そうだな。じゃあカタルが引き取ってくれ。それなら俺が変なことしないって確信できるだろ」

「女に別の女の世話させるとか、一体どういう神経してるんですか! 死ね女たらし!」


 マイナは連発されるライトニングボルトを紙一重で避けながら酒場の中を走り回る。それを見て、マオは初めてくすくすと笑った。

 

「あ、マオちゃん笑ったー」キルファが気付いて指差す。

 

「わ、笑ってなんかいません」一瞬皆に見つめられ、すぐに真顔に戻るマオ。


「で、マオちゃんは何の職業を選ぶの?」リンリンが問う。


「え、えーと……」言われてマオは困った。困った末に、なんとか自分にもできそうな職が思い浮かんだ。

魔物使い(ビーストテイマー)……?」


「すごーい!!」キルファが叫ぶ。


 このゲームにおいて魔物使い(ビーストテイマー)は、あまりのモンスターの種類の多さのために、極めることが困難な――かなりマゾっぽい――レア職だった。

 

 マイナは心の中でガッツポーズを取る。

「いける! 無一文から魔物使い(ビーストテイマー)を目指す女の子の冒険! これなら長編小説も夢じゃないぞ!」

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