急展開なプロローグ A
主要人物
月神陽 狂気→人助け
月神桜 狂気→不明
御門晃 狂気→不明
鈴木幸村 狂気→不明
世界観
舞台は学校ではあるが、他生徒は存在しない
街なども彼らのみが描かれる。
人は誰しも心に狂気を抱えいる、その狂気は人それぞれで、発狂するに至る条件まで千差万別だ。
例えば家族を失い一人にされたり、人を殺してしまったり、許せない事があったり、いじめられたり、好きな人にふられたり、無理難題を押し付けられたり、例を上げれば様々だ。
その中でも僕は自分で言えるほど、特殊なケースだ。どこが特殊なのかと説明すると、僕は人を助けたいと思った時の衝動から発狂してしまう。
おかしいにもほどがあると言える、人を助ける時は冷静かつ慎重さが大切なのに発狂してしまうのだから。
ただし発狂していても行動までは狂ってはいない、主に言葉がおかしくなり、脳のセーフティーが一時的に外れて怪力が出るようになったりするのだ。
だが発狂している為、人を助けた後その人からは大抵逃げられてしまったりする、困った物だ。
これは、この僕「月神陽」が変わった自分の狂気を誠心誠意、他人に尽くして行く物語である 多分。
高校入学当日、僕はお気に入りのヘッドフォンから爆音をならしながら登校していた、校門の辺りで生徒会役員らしき人達が受付を担っている。
僕はヘッドフォンを外して音楽を止めて、受付で名前を言うと教室に行く為の案内地図を渡された、案内地図にはクラスの割り振りも出ていた。
「一年C組、ここか」
教室に入る、自分の名札が置かれている机に腰を下ろして、担任教師が来るのを待っていた、周りの生徒たちは緊張しているのか、誰もしゃべっている様子はない。こういう空気は若干、苦手だ。
しばらくして、担任教師が来て自己紹介を行った、その後すぐに入学式の為クラスの外で出席番号順に整列。
体育館にて入学の式典が長々と、執り行われた。
正直だるい誰しもがそんな事を口にだしそうな雰囲気の中、式典中の静寂を打ち破る女神が現れた。
「新入生代表、御門晃さん」
「はい」
落ち着いた返事をして彼女は壇上へ上がって行った、長い黒のストレートヘアーをなびかせて。
その場の空気が一瞬揺らぐような気がした、次第に静寂はなくなり、教師の静かにと言う言葉と共に再び静寂が訪れた。
周りがざわつくのも納得ができる程、御門晃という存在は容姿がよく、整った顔立ちをしていた。
入学式が終わる頃には彼女の話題が生徒達の間を駆け巡っていた。
そんな日々が続き、ある日の放課後、僕は部活に入部し帰りが遅くなった時だった、下駄箱を開ける御門晃の姿を見かけた、彼女は下駄箱を開けると手紙のような物を中から取り出した。
綺麗なその紙は、誰がどこから見ても分かるラブレターだった、やっぱりモテるんだな、そう思った時だった彼女はラブレターを開けずにその場で、力いっぱい引きちぎって破り捨てたのだ。
思わず僕は呆然としてしまう、そんな僕に気がついたのか彼女は僕を睨む。僕は我に返り、彼女をしっかりと見据えた。
「なんて事するんだ!」
「なんて事ってなに? これはあなたのなの?」
「違う、けどせめて読むのが礼儀ってものじゃないか」
その言葉を言った瞬間だった。
「がはっ…」
彼女の右手から僕のみぞおちにボディーブローが綺麗に決まる、そして往復ビンタのコンボ。
彼女は撃沈した僕を見下ろす、嫌な目つきが朦朧とする意識の中ハッキリと見えた。
「あなたに何がわかると言うの」
その言葉が意識を完全に失う前に聞いた最後の言葉だった。
意識が戻って目覚めた頃、僕は保健室のベッドで寝ていた、保健の教師曰わく目立った外傷はなく、何故気絶していたか検討もつかないらしい。教師に何があったか、問いただされたが僕は日頃の疲れですと誤魔化した。
「あの糞アマ」
保健室を出て僕は悪態をつく、いけない落ち着かなくては。さぁてどうしたものか、日はすっかり暮れて家に帰るのが遅くなった。
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいま、桜」
この子猫のような愛くるしい笑顔で迎えてくれるこいつは「月神桜」簡単に言えば僕の妹だ、中学二年生だが大人顔負けの運動神経と知識を内に秘めている。以前舐めてかかった不良達が病院送りになるという謎の珍事件が発生したことがある、無論原因はこいつだ。
「学校どう?」
「そうだな、大きな壁にぶち当たった感じかな」
「あ、わかったお兄ちゃん女の子の悩み?」
なんという第六感!我が妹ながら尊敬に値する。
「さすが探偵、じゃ僕はその女の子に何をされたか分かるか?」
「う~ん、保健室で…押し倒されたの?」
「違うな、全力で違うな、しかし保健室はあってる」
「そうだよね、薬品の匂いがするし」
「ま、推理は夕飯の後にしよう、桜今日は唐揚げだ」
「本当に!やったー」
趣味で探偵までやっている癖に以外に子供なところが憎めない。
夕飯を食べ終わる頃、妹は考え込んでいた。
「難しい顔をしてどうした」
「お兄ちゃんの彼女について」
おいおい、面白いくらい変な勘違いを起こしてないか?
「お兄ちゃんが女の子で悩むなんて初めてだからなぁ」
あながち、間違いじゃないのがちょっと悔しい。
「お兄ちゃんが女の子で悩むって事はまさか恋ですか!」
そろそろ、抑えるか。
「違うよ、答えはその女の子が僕にボディーブローをして更に往復ビンタで失神させたってところだ。」
「何やら複雑だね、わかった! ふられたんだ」
なにひとつわかってないじゃないか迷探偵。
「もういい、暴力をふるわれた理由は僕が彼女のラブレターに対する礼儀をだな…」
「お兄ちゃんラブレター出しだの!」
「ちょっと待て! そうは言ってないだろ、そしてお前絶対わざと間違えてるだろ」
「なぜバレた!」
「バレるわ、そりゃ」
「私のお兄ちゃんが御門晃って人にボディーブローと往復ビンタで失神させられ、保健室で目を覚まし、先生に失神理由を問いただされた、なんて推理をしていた事がなぜバレた!」
前言撤回! 百発百中で正解しちゃってるよこの子!
話しを戻そう、桜は僕の事情を知った上でアドバイスをくれた。
「容姿端麗、成績優秀、ラブレター、なる程そういう事か」
「なにか、わかったのか?」
桜は紅茶を啜りながら僕をしっかり見据えて言った。
「一筋縄じゃいかないよ、その子何かヤバい事情ありって感じだよ」
「普通にこういう経験に呆れたとかじゃないのか?」
「そうだね、成績優秀なら真面目、真面目ちゃんならラブレターを破いたりなんかしないよ、それに破いたってのが一番引っかかるね、それこそ差し出した人間が女でもなければ」
意味がよくわからない、多分こういう事なのだろう。
御門晃はラブレターをもらうなどの経験を呆れた訳ではなく、他の事情で受け取る訳にはいかない、または読めないと言ったところなのだろう。
「気をつけて、お兄ちゃん、これは普通じゃないんだよ、お兄ちゃんみたいな人間が関与してる可能性すら、あるんだ」
「そりゃ尚更、僕の出番じゃないのかな」
そんなこんなで夜はふけて桜は自分の部屋に入って眠った、時刻は深夜零時を回った頃だ。
僕は御門晃が破り捨てたラブレターの回収に向かった。
「やっぱりまだ残ってたか、細かく破れていなくて良かった」
僕は懐中電灯を片手にラブレターと思わしき紙片をかき集めてポケットにしまった。
家に帰り一人ラブレターの修復作業に励んでいた、要した時間は二時間、深夜学校の行き帰りを合わせて深夜三時ちょうどになっていた。
修復した手紙を読んで僕は驚いた。
「不幸の手紙じゃないか! これは!」
内容はこうだった。
あなた、に不幸の手紙が届きました
なんで?そう思っても仕方ない事この手紙を
他人の人に五枚書いて送ってください
がんばってください、じゃないとあなたの
好な人や、あなた自身に不幸が起きます
気を楽にしてやってください、バレないように
では、後ほどお会い致しましょう。
鈴木幸村より。
差し出した本人の名前がかかれちゃってるよ! 普通不幸の手紙ってバレないようにやるんじゃないの? バレないようにとか手紙の内容にもあるのに!
落ち着こう、一旦落ち着こう、僕が馬鹿だった。
そう、これは差し出されて怒って破り捨てたくなるに十分値する手紙だ。
彼女、御門晃が怒るのも当然の事、仕方ない事なんだ、今日はもう疲れた寝よう。
翌日。
「お兄ちゃん、おーきーてー!」
「どぶろふぁ!」
朝、目覚ましの代わりに妹が僕をパイルドライバーという技で起こしてくれる。
正直ものすんごく痛いのである、しかもヒットした場所が場所、昨日痛めたみぞおちである。
「お兄ちゃん?」
「う、うん?」
「ごめん」
「気にするな…」
まぁ元々起きない僕が悪いのだ、朝支度を早めに済ませ、高校に行く。
僕はクラスのドアを開けて自分の机に座る、昨日あった事なんてまるで嘘のように清々しい朝だ。
なんだ? この違和感? まだ何も終わってないような…悪寒がする。
そうだ、御門晃は彼女はなにを考えてるんだ? 「あなたに何がわかると言うの」この言葉…妙だな。
気になるな本人に聞いてみるか。
幸い御門晃は同じクラスにして、隣の席なのだ。まだ登校してきていないようだ、仕方ない登校するまで待つか。
呆気なさすぎる程に御門晃は登校してきた、僕が待つ事を決意した実に数秒後だった。
「あの~御門さぁん?がはっ!」
席を立って話しの内容を聞く隙すら与えない速さでボディーブローが僕に決まる。
駄目だこの人に関わると身体的ダメージがひどい、先に手紙の送り主を探してみよう、教師にあたればすぐにでも、鈴木幸村という人物の居場所はわかるだろう。
教師に聞いた結果、彼もとい彼女は一年B組に在籍しているらしい。
彼女と言う事は、当然女性な訳で女性が女性にラブレター…もとい、不幸の手紙を書いたのだ。
何だかおかしな感覚がするぞ? 昼休みにでも鈴木幸村のところへ行ってみよう。
昼休み
「鈴木幸村さんいますか?」
「私がそうよ、あなたは?」
「僕は月神陽といいます、つきましては例の手紙の事でお聞きしたい事が」
「な、なんであなたが?」
「御門晃さんは、あの手紙を…」
「晃ちゃんが手紙を読んだんだね! やったー私の気持ちはきっと伝わった筈」
なにを言ってるんだこの人は、内容は不幸の手紙だぞ、せいぜい伝わるのは私が差し出し人で、ボディーブローをしてくださいってドエムな告白くらいだ!
駄目だ、この人に付き合っていても今度は精神的ダメージを食らいそうだ。
がはっ! わき腹に覚えのある形の痛みが!
「死ね」
御門晃が僕のわき腹を通り過ぎ様に、かました一撃だった。
そんなに僕は嫌われるような事をしたのだろうか、覚えがない。ていうかもうどうにでもなれ。
放課後になり、帰りの準備をしていた所で携帯が鳴るメールの着信を知らせる音だった内容は…。
【桜:気をつけて】
「昨日とは比べものにならない何かが、その学校でおきるかも! 早めに帰った方がいいよ?」
案ずるな妹よ、お兄ちゃんは特別な人間なのだ、不死身っぽいのだ槍でも爆弾でも降ってきやがれってんだ。
「誰か助けてー!」
ドクン…あ、やばい…ドクンドクン! 血液が沸騰するような全身に走る違和感、助けを求める声に反応して、ほぼ同時に発狂の胎動が全身を包む、抑え込める物ではない。
僕は叫び声の方向へ走りだした、誰かが助けを求めてる! それだけで十分だ!
「ケヒヒヒヒふぁははははは!僕が助ける助ける助ける助ける助ける助ける助ける助ける!」
叫び声の主は鈴木幸村だった、彼女の前には黒いコートを着た、何者が立っていた、黒いコートを着た奴の回りの空気はやけに重い。
コンクリートがパキパキと音をたてているのが、聞こえる。
「とっとと、ケヒヒヒヒ!逃げなケヒヒヒヒ!」
「うわぁ! こっちも変な人来ちゃったぁ!」
幸村さん、すいません後で謝りますに行きます。
幸村さんは僅かな隙をついて逃げて行く。
「…ない…いらない…お前いらない」
「あぁん?」
それだけ言うと黒いコートを着た何者かは、風にさらわれるようにして消えた。
それとほぼ同時に体の熱が低くなって、しおれた花の様に、しゅんという感じになる。
「いなくなった…あ、狂気が収まってる」
自分の体と精神に以上はないか動かしみる、異常なし。
逃げて行った幸村さんを追いかけて、階段の踊場にて彼女を発見する。
「うわ、変態」
「変態じゃない!」
「なら、なんなのよ!」
そうだ、なんなんだろ僕はいきなり発狂して彼女の前に立って怪しい奴と対峙した訳だ、変態以外に表現方法があるわけがない、どう説明する? 彼女に自分の事を打ち明けても、信じてもらえそうにない、だからと言って変態扱いされるのも嫌だ。
覚悟を決めろ! 僕は彼女の肩をつかみ吐息のかかる距離まで壁に寄る。
「その僕は…人を助けようとすると、発狂してしまうって言うか、とりあえず…あなたを助けたくてしょうがなくて」
「え? え?」
「見苦しい所を見せちゃいましたけど、あなたを助けたい気持ちは本当なんです。」
「そう、なの」
「はい」
「わかった信じてあげる、その代わりちゃんと責任とってね?」
何を顔を赤くしてるんだろう、この子…まぁいいか変態扱いは避けられたら上、理解してもらえたから。
彼女は僕に連絡先をメモした用紙を渡した後、去って行った。
急展開すぎて僕の頭がついていけない、ここまでの状況そして情報を整理しよう。
幸村さんは御門晃に不幸の手紙を出した、御門晃は…手紙を読んでない! あいつ確か「これ、あなたのなの?」と言っていた。
だが手紙には差し出し人の名前がしっかりあった! つまり読まずして捨てやがったんだ!
まだ他にもあるはず、なにか見落としてる事が、そう言えば差し出した幸村さんは妙に嬉しそうというか、「私の気持ちはきっと伝わった筈」って言っていたな…。
……………………………………………ああああ!
幸村さん手紙を縦読みしてもらうつもりだったんだ! 縦読みにすると「あなたが好きです」こんな微妙なネタを仕込んでたんだ。
理由はおそらく、万が一他の誰かが間違って受け取ってもいいようにする為。
成績優秀な彼女に渡れば即理解されるが、他の人間はわからない。皮肉にも読まれず捨てられてしまったが。
これでは幸村さんがあまりにも可哀想じゃないか。
明日、御門晃に言ってやらないと…まてよ? 言ってどうなる? 女の子同士で…幸村さん…あなたレズビアンだったんだ。
問題は、なぜ読まずに捨てたかという点だ。
彼女は経験に飽きてる訳ではない、真面目で読むはず。
まてよさっきの黒いコートの奴。
「ただいま」
「面倒な事になってるみたいだね、目充血してるよ」
「そうか? 今日の夕飯は昨日の残りだ、支度は桜がやってくれ」
「もう寝るの?」
「ごめんな、お前の言う通りだった。勘が冴えてないとこれはヤバい怪異だよ」
帰宅した僕はそのまま、ベッドに倒れ込んで眠ってしまった。
初めてです
そして急展開です。
スイマセん!
陽「作者が疲れたから手抜き」
桜「あら、そうなの」
陽「桜の狂気は…」
桜「ネタバレはやめて」