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懐かしの我が級友たち(1)「ピアニスト茉莉」  作者: 石原裕


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7/12

第7話 茉莉と謙一、一年半振りの再会 

 高校卒業と同時に、茉莉はジャズピアニストを目指して、現役で合格した音楽大学へ通学する為に、家を出て東京へと旅立って行ったし、謙一は少しでも早く母親に楽をさせたいと、地元の(有)龍鳳印刻堂へ就職して印章彫刻師の道を志した。

二人が顔を合わせるのは、茉莉が夏休みなどで長期間帰省した折に、どちらかが家を訪ねる時だけとなった。

茉莉は帰省するといつも直ぐに、「今帰った。今夜家へ来てくれる?」と、謙一に携帯メールを送った。

「俺も忙しいんだ。帰る時間も判らないし、お前ん家へ行けるかどうかも判らんよ。二階の俺の部屋の灯りが点いたらお前の方からやって来いよ」

そう謙一が返信すると、茉莉は「だって、若い女の娘が男の子の家を、夜、訪ねたりしたら怪しまれるじゃないの。謙ちゃんの方から来てよ」と屁理屈を並べて再送信した。

 が、それでも、逢えば二人は時間の過ぎるのも忘れて話し込んだし、街へ出て食事をしたりコーヒーを喫んだりした。茉莉は益々自信に満ちて颯爽としていたし、その存在感は同世代の女の娘達とは比較に値せぬほど群を抜いていた。

 だが、茉莉は東京へ出て二年後から実家へ帰って来なくなった。今年の正月にも去年の夏にも茉莉は帰って来なかった。去年の冬休みに帰省して以来、既に一年半が経っていた。


 玄関口に顔を出した茉莉に、隣家の謙一が、やあ、という笑顔を見せた。

「いらっしゃい、謙ちゃん。久し振りね。でも、どうしたの?こんな昼間に」

「何を言っているんだよ、今日は土曜日だよ、仕事は休みだわな」

茉莉は毎日、月日の感覚も曜日の識別も無しに、ただ時間だけを過ごして来たのだった。

「さあ、お上がりなさいよ」

通された茉莉の部屋で二人は暫く、懐かしい昔話に花を咲かせた。

「ねえねえ、覚えている?修学旅行でブドー酒を飲んだこと」

「ああ、覚えているよ。あれは確か広島での晩飯の後だったな」

「酔いが回ってその後のフォークダンスがよれよれになったのよね」

「そうだったな、俺達だけじゃなく皆、結構脚に来ていたもんな」

「出しもしない年賀ハガキがお互いの家に届いたこともあったわね」

「そうだよな。隣同士で年賀状なんか出す訳が無いのに、あんな馬鹿な悪戯をする奴も居たんだもんなあ」

「謙ちゃん物凄く怒ってさ、今畜生!絶対犯人を暴き出してぶん殴ってやる、って憤慨していたものね」

 だが、懐かしいあの頃を思い浮かべて微笑みながら話し続けつつも、二人の会話は余り弾まなかった。

「お母さんから昨夜電話を貰ったんだよ、茉莉が帰って来ていますから遊びに来てやって下さい、って」

「そう・・・」

「お前のことは粗方は聞いたよ。大変だったんだなあ」

「・・・・・」

暫く、沈黙が流れた。

その場の重苦しい空気を換えるように茉莉が口を開いた。

「それで謙ちゃんの方はどうなの?仕事は上手く行っているの?なかなか大変そうな仕事じゃないの?」

「ああ。俺の方はまあまあだ、それなりに、だな」



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