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SCENE  作者: 恵奈
8/13

Call Me

ガラケー時代。

 


 ――― 今日も、電話は鳴らなかった。



 私の携帯のメモリの中には、ちゃんとあの人の番号が登録されている。

 用事があるなら。

 もしくは声が聞きたいだけだとしても。

 私から電話をすればいい。

 ……でも、それができないでいた。


 彼は、私の恋人ではない。

 友達?

 それもけっこう微妙かも。

 メル友、なのかな?


 ずいぶんメールのやり取りをしているけど、実は……一度も会ったことは、ない。



 出会いはあるサイトのチャットルーム。

 最初の何度かは大勢の中の1人としてしか会話できなかった。

 だけど気が合って、いろんなことで盛り上がったりするのはとても楽しくて。

 そのうち二人だけで話したりもするようになった。

 そのうちパソコンでのメールのやり取りが、携帯でのメールのやり取りになるのにたいした時間はかからなくて。

 いつでもどこでも彼との接点を持てる分、とても身近に感じるようになっていった。

 それがたぶん、『トクベツ』になっていったってこと。



 彼には話したいことがたくさんあった。

 その日あったこととか、読んだ本の話、見た映画の話。

 みんなたわいもないことだったけど、彼はいつも返事をくれた。

 メールでお互いのことを話すことだってある。

 彼が乗ってる車の名前。

 彼が今聞いている音楽。

 彼が吸ってるタバコの銘柄。

 彼が住んでる街の、今日の天気。

 私が聞けば、彼は何でも答えてくれた。


 そして、私は思う。

 彼を、もっと知りたい。


[一度、話してみたいな。今度、電話して? 私の番号は…]


 なけなしの勇気を、そう文字に変換する。

 それが、私の精一杯。


[OK 今はムリだけど今度するよ。俺の番号は……]


 メルアドは知っていても、電話の番号までは知らなかった私たちの、第一歩。



 数日待っても鳴らない電話に、私は待つことをやめた。


 彼が電話してこない理由は、いくつも浮かんだ。

 そのどれもが私にとって都合の悪いものばかり。


 ―――だいじょうぶ。まだ……大丈夫。


 ダメージを受けてないふりをするのは簡単だった。

 いつものようにメールを送ればいいだけ。

 私から彼の姿が見えないように、彼に私の姿は見えない。


[今日はね、映画見に行ってきたよ]


 当たり障りのない話題。

 面白そうな映画だと、つい最近チャットで話してたの覚えてる。


[俺も実は今日見てきた]


 彼からの返事。

 それは、いつもと変わらなくて、私を安心させてくれる。


[あの結末、どう思った?]


 そう送るつもりで打ち始めた文字は、不意にかかってきた電話に中断された。

 慌てて出た電話の向こう、知らない声がした。



『俺。分かる?』


「え……!?」



 初めて聞く、彼の声。


 あまりに驚きに真っ白になった頭。

 くすくすと笑う声。

 ……気がつくと、私も笑っていた。




ネット恋愛等の経験はありませんが

送られてくる言葉にのぼせ上がる自信はあります(自慢できない。

そういう出会いから、

本当の「恋」になることってあるのでしょうか。

相手の姿が見えないぶん

そのやり取りは純粋かもしれないし

まったくの嘘かもしれない。

だけど、

そこでしか在りえない出会いもあるのですよねきっと

時代は変わった(笑)

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