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SCENE  作者: 恵奈
6/13

桜と夢と恋

入学式。

 



 今日から私が通う学校。


 校門を入ったところであたしは立ち止まった。

 入学手続きに来た時一度見たきりだった、大きな大きな木。

 樹齢百年ゆうに超えてるという大木は、見事なほどの淡いピンク色の花を全身にまとっていた。


「綺麗だね」


 一緒にこの高校へ進学した親友の和美がつぶやくように言った。黙ってうなづく。

 風に枝が揺れて、ちらちらと花びらが散る。


 その時、唐突に今朝見た夢を思い出した。


 ピンクの小さな花びらに埋め尽くされた景色と、その向こうの人影。

 そして嬉しくて切ないような心のときめき。

 何かを発見した時の高鳴りと衝動。


 いったい何の夢だったのかは、よくわからないけど。

 不思議な感覚の夢だった。

 そして、今日は朝からわくわくしてたまらない。


「行こっか」


 和美が元気に歩き出す。だけど、私はその場から動けなかった。

 目の端に捉えた人影に、すべてを奪われて。


 低く下がる桜の枝の向こう側。


 長い足。

 無造作にポケットに突っ込んだ両手。

 スポーツ選手特有の広い肩幅。

 私と同じように新入生の名札をつけていて。

 顔だけが桜ににじんで見えない。


「!」


 強い風が桜をさらっていく。私の長い髪が、花びらと一緒に舞う。

 一瞬見えたその人が、笑ってるように見えて。

 でも確かめようとした私を、風が阻む。

 胸が締め付けられるように、痛んで、……思わず目を閉じた。


「すごい風!ね、早く行こうよ」


 和美の声に、私の体は動き出した。一歩一歩、ゆっくりと歩き出す。


「ホントに……すごい風」


 二人並んで、校舎に向かって歩いていく。

 そして、和美に気づかれないように、そっと振り返った。


 その人がいた。

 桜の大きな幹に手を当てて。

 桜に向かって何かをつぶやいてから。こっちを見た。

 まっすぐに、私を見てる。


 その優しい笑顔に、心が震える。


「ねえ、聞いてるの?」

「……聞いてるよぉ」


 嬉しくて、どうしてもこぼれる笑顔に、和美が気づく。


「何かいいことあった?」

「何?」

「なんか、すっごい嬉しそうだよ、気持ち悪いくらい」

「ひど!」


 そう言いながらも、顔は笑顔が止まらなくて。


「あったんじゃなくて、あるような気がする……かな」

「何よ、わかるように言いなさいよ」


 私につられたように、和美まで笑い出す。


「えー、どうしようかなっと」


 ふざけてそう言いながら。

 親友の和美には、一番に報告しなくちゃ。



 あたし、桜こずえ。

 この高校の、桜の夢の伝説を信じてる。

 なんてったって桜って名前だし。

 夢を、本当に見たもの。


 なんてカッコイイ人なんだろう。

 さっき見た桜の木のとこにいた男の子・・・。


 ヒトメボレ?

 オモイコミ?


 どっちだっていい。

 だってもう動き出してるんだから。


 この胸のときめき。

 いいことありそうな予感。



高校の校門脇にある桜には伝説がある。

その桜に気に入られると見ることができる「特別な夢」。

その夢に出てくる人を見つけられると幸せになる。とかゆう設定。


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