醒めた夢
現代。
………こんなつもりじゃなかったのに。
仕事が出来て、気が利いて、優しくて、オマケに顔が好みで。
女の子に人気のある、憧れの上司だった。
そんな人が一生懸命口説くもんだから。
つい、出来心で。
何であの時冷静な判断が出来なかったんだろ。
酔いにまかせて。……勢いで寝ちゃって。
そのあともズルズル……。
私は絶対こんなことするタイプじゃないと思ってた。
だって、不倫なんて、いくら流行ってるっていってもろくなもんじゃない。
所詮人のものに手を出した方の負けよね。
不倫しても誰も幸せにはなれないし。
みんな傷つくだけ。
私の場合。
傷ついたのは、自分だけだったけど。
ズルズルと関係を続ける自分に、いつもいつも言い訳してた。
彼もいないし、身体がさびしいだけ、とか。
彼の面倒見なくて済むし、おいしいとこどりじゃない、とか。
愛とかそんなんじゃなくて、もっとクールな関係なのよ、とか。
でも、彼は私に優しかった。
だから、苦しかった。
二人だけで会えるのは、せいぜい月に2回。
無我夢中で抱き合ったりするのかと想像してたけど、求められない日もあったりで。
ただ食事を一緒にして話をするだけ、とか。
近くに来たから、とケーキを持ってきて、部屋にはあがりもせずに帰ったり。
身体だけの関係じゃないなら、私はいったい何?
私たちの間に、何があるの?
……愛?
苦しかった。言い訳が、だんだんと通じなくなって。
優しくしてくれるから、愛されてると思ってた。
会えない日がつらくて泣けて、愛してると気づいた。
なのに……。
ある日突然そうじゃなかったと知る。
ショックを受けた。
あれは会社に彼の奥さんが訪ねてきたとき。
ばれたわけじゃなかった。
ただ、忘れ物を届けにきただけのこと。
……奥さんの顔を見て私はショックを受けたの。
すごく……似てた。私と奥さん。
私が年を取ればきっと……、奥さんそっくりになる。
奥さんの若いころ、きっと今の私とそっくり。
馬鹿にしてる。馬鹿にしてる。こんなのって……。
私を通して、彼は若いころの奥さんを見てたの?
40にもなって、20年前の気持ちを取り戻そうとか思ってるわけ?
優しくしてくれたのは、私にじゃなく、奥さんの面影に?
なんて、なんて、………ひどい男!!
夢を見てたわけじゃない。
いつか奥さんと別れて、私と結婚して欲しいなんて思ったことない。
家族や奥さんを優先すること、うらんだりしてない。
いつか別れる時が来るのは知ってた。
だけど、二人の間にほんの少しの愛があったと思ってた。
愛されてると思ったのは……私の錯覚。
傷ついた。
痛かった、心が。
……涙が止まらないの。
こんななら、遊ばれて、捨てられたほうが、きっとずっとマシだった。
情けない、私。
馬鹿な、私。
私自身を見てもいなかった男にこんなにも心を預けて。
あの人の優しさに、何も見えなくなっていた。
子供のように笑う顔。
いつまでも少年のように夢見た瞳。
オジサンだと思ったことは一度だって無かった。
私にとっては、ただ一人の好きな人だった。
泣いて泣いて、しおれるまで泣いたら。
そうしたら、この気持ちも消えちゃったらいいのに。
……つらいよ。
私一人が好きだったなんて。
全部は、いらない。
だけど。
ほんのちょっとだけでも、いいから。
私を好きでいて欲しかった。
こんなつらい恋は、もう二度としない。
もう。
夢は、見ない。
はいつぎいこー




