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「これ以上は、ダメ」
え?
「これ以上は、ダメ」
深くなりかけたキスを指先で押しとどめて、彼女が言った。
間近で交わす視線。
軽く諌められたように感じたのか、彼は伏し目がちに身体を離した。
名残惜しげに。
ふんわりとした髪。大きな瞳。ぷっくりとした印象の唇。
こんなにも男心をくすぐるのに、と彼は恨めしく思った。
キス、それも触れ合わすだけのもの―――それ以上は、一度も許してもらったことはなかった。
「怒ってる……?」
彼女の白い指先が、彼の頬に触れる。
反射的に彼は身体を少し引いた。
彼女の表情が罪悪感のようなもので翳る。
「私のこと……キライになった??」
キスの向こう側を許さないから? ばかな。
彼のついたため息は、彼女の杞憂を振り払うため。
「それが目当てで付き合ってるわけじゃないから」
何度その言葉を口にしただろうか。
確かに目当てではないが、好きだという気持ちの行き先は彼女の身体に自分を刻むことでもある。
―――俺は嘘つきだな。
彼は顔に出さずに自嘲する。
安心したように笑顔を見せる彼女のことがとても好きだ。大事にしたい、そう思っていることには変わりはないけれど。
そっと身体を預けてくる彼女を、改めて自分を戒めながら抱きしめた。
くっ!




