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第7話 ランチの限定品ってそそられるよね

なんとか今日中に間に合った。(-_-;)

 日はサンサンと差していて小鳥の声が聞こえてきて清々しい天気、なのに健一の目覚めはいつも以上に悪かった。

 

健一からはため息を漏れていた。


「はあ~」 


「どうしたの兄サン。いつもより眠そうでそれになんだか疲れてない?」


(彩芽のせいでこんなに疲れてるんだろ!)


 健一は心の中で叫んだ。


 逆に彩芽はいつも以上に元気な感じだった。


 昨日、散々彩芽の話に付き合わされた後、まだ読んでない本の感想まで言われて夜寝ようとしても彩芽の話が頭から離れなかったのだ。


「そっか、昨日のボーリングで疲れたんだね」


 彩芽が勝手な解釈で決め付けた。


「違うって」


 健一はキッパリと言った。


「だって昨日したことってそれしかないでしょ」


「……………」


 健一は説明する気が起きなかった。


「おっはよー、健一、彩芽ちゃん」


「おはよう。真悟さん」


「おー、真悟、おは…よ」


「どしたんだ健一。疲れた声なんか出して」


「昨日のボーリングで疲れたんだって」


 横から彩芽が真悟に素早く説明した。


「なに贅沢言ってんだよ健一。昨日橘さんと一緒にプリクラ撮ったくせに、俺だって撮りたかったのに」


「えー、兄サン女の子とプリクラなんか撮ったの。昨日そんなこと全然言ってなかったじゃん。帰ったら見せてね」


 彩芽は口では楽しそうに言っているけど目はなんだか真剣だった気がする。


 なんだか嫌な予感がしたから適当に合わすことにした。


「わかったよ。帰ったら見せるから、な」


「それだけじゃダメ! 見せてくれなかった罰として、今度なんか手伝ってよ」


「えー」


「まあ、罰でなくても手伝ってもらうけどね」


 彩芽は小声で付け足した。


「彩芽ちゃん俺とも撮ろうよ」


「遠慮しときます。真悟さんなら私なんかよりもっと良い人と撮れますよ」


 遠回しに彩芽に断られたが、そんなことではへこまない、というより真悟は気づいてなかった。


「じゃ私は自分のクラスに行くから」


 学校に着くと、学年が違う彩芽は校舎の中へと駆けて行った。


 彩芽の後ろ姿を見ながら真悟は微笑んでいた。


「彩芽ちゃんってやっぱりいい子だよな~、私なんかよりもっと良い人と撮れますよなんて」


「……真悟お前って本当に幸せだな」


 健一は真悟に感心しながらも哀れみさえも感じた。


「おい! 健一なに独り言いってんだよ。俺達も教室に行くぞ!」




 教室に入ると昨日の話でちらほら賑わっていた。


「おはようございます。高峰君、佐藤君。昨日は楽しかったですね」


「ほんと、楽しかったな~楓ちゃんとは同じチームになれなかったのは残念だったけど。そうだ! 明日は休みだし、三人で遊びに行かないか?」


 真悟が今思いついたように言った。

 けど、本当は思いついたわけではない。昨日楓とあまり話せなかったので今度こそ仲良くなりたいと思って、昨日からずっと作戦を練っていたのだった。


「私は……高峰君はどうなの?」


「まあヒマだから大丈夫」


「なら私も(・・)大丈夫です」


「?」


 真悟は楓のなら(・・)という言葉に疑問を持ったが、すぐにもう一つの作戦の方に頭を切り替えた。


「よし、じゃあ決まり。後、連絡のために携帯の番号教えてくれない?」


 そう。真悟のもう一つの作戦。それは楓の番号を聞くことだった。


「ええ、いいですよ。ついでに高峰君のも教えてください」


「ああ、いいよ」


 こうして健一も楓の番号を知ったのだった。


『俺のおかげで楓ちゃんの番号分かったんだからな。ちょっとは俺に感謝しろよ』


 楓に聞こえないように真悟は恩着せがましく健一に言ってきた。


『はいはい。感謝してますよ』


 面倒くさそうな顔をしながら健一は言った。


「なに二人で話してるんですか?」


「いや、明日が楽しみだなあ~って話してたんだよ。なっ、健一」


「そうそう」


「はい、楽しみですね」


 別に悪いことを話していたわけではなかったけど、楓の笑顔に健一は少し後ろめたい気持ちになる。

 と、同時に始業のチャイムがなった。


「先生が来たぞ~」


 クラスの見張り役の声でみんな一斉に座った。


「あーみんなおはよう。じゃ昨日配ったプリント出して」


 話が一段落してまた健一に昨日の疲れが出てきだした。


(はぁー、早く授業終わらないかなー)


 健一がこんなことを考えても時間は早く流れなかった。





「真悟、弁当にしよう」


 ようやく学校で至福の時がやってきた。


 楽しい時間は早く過ぎるのに嫌なことは長く感じるものだ。


 健一は勉強は好きではないから長く感じた。かといって真悟みたいに授業中に寝るなんてことはできない。なぜなら真悟は先生に注意される前に起きるという器用なことが出来るからだ。まあ、できなくても多分寝ているが。


 お昼時、ランチタイムで教室は賑わっていた。


「……ああ昼か、なら俺購買に行ってくるからちょっと待っててくれ」


「真悟いつものあれ買えたら頼む」


「ああ頑張ってみるよ」


と言うと真悟は寝起きのまま教室を出て行った。


 健一が真悟に頼んだあれというのは、お昼ここの購買で買える1日20個限定のカステラクリームパンという、聞くだけで甘いものが好きな者にとっては嬉しい、カステラ生地で作っているパンである。おまけに砂糖がふんだんに使われているから、女子だとそれだけでお昼をすますことが多い。もちろん女子に大人気のパンである。これを買う時だけは、女子は男子顔負けの力を出す。


弁当持参の健一はというと真悟を暇そうに待っていた。


「高峰君。お昼ご一緒させてもらっていいですか?」


 この声のする方に向いた。

 

 横を見ると弁当を持っている楓がいた。


「……ああいいよ。けど今、真悟が購買に買いに行ってるからそれまで待たなくちゃいけないけどいい?」


「はい、構いません」


 楓は笑顔で答えた。


「そういえば橘さん、昨日用事に間に合った?」


「え、ええギリギリ間に合いました」


 健一の質問に楓はなぜか少し動揺しながら答えた。


「高峰君の方はどうでしたか?」


「それが…昨日妹に色々手伝わされて、おまけに楽しみも奪われて大変だったんだよ。そのせいでなかなか眠れなくて……。あ、ゴメン。なんだか愚痴みたいなこと言って」


 本当は彩芽のアニメの話だったけど、そこは手伝いってことに変えて説明した。


「いえ、全然。それにしても私の方は楽しく見れたけど、高峰君の方は大変だったんですね」


 この会話で『楽しく見れた』という言葉を聞き逃さなかった。


「もしかして橘さんの用事って、テレビを見ることだったの?」


 この瞬間、楓は不自然に目の視線を逸らし、机の上に手を置いた。その際に机が傾き、床に教科書をばら撒いた。そのことでクラスのみんなが注目したが、気にする様子もなく教科書を拾った。


 その姿は普段のおしとやかな楓とは想像のつかないくらい動揺していた。

 

 注目されていたことに気づいた楓はなんでもないですと言い、机を挟んで健一の向かいに座った。


「橘さん大丈夫?」


「え、ええ大丈夫です。それよりどうして高峰君がそれを?」


「だって今、橘さんが楽しく見れたって言ったから」


「す、すみません。実は昨日どうしても見たい番組がありまして、それでつい用事があるなんて言ってしまって。高峰君、お願いです。このことはみんなには、言わないでください」


 必死に楓はお願いした。


「いいよ。俺の用事も似た様なものだったから」


 この言葉に楓はホッと胸を撫で下ろした。


「あの、高峰君」


「大丈夫。真悟にも言わないから」


「いえ、そうじゃなくて佐藤君遅くないですか?」


 真悟が購買に行ってから十分位経つがまだ戻って来てはいなかった。


 と、そこへようやく真悟が帰って来た。


「よう…待たせたな。楓ちゃんも一緒なんだ」


 真悟が妙にへこんでいた。


「!!」


 二人は真悟の姿を見て驚いた。それは、真悟がまるで使い込んだボロ雑巾のようになっていたからだ。


「どうしたんだ真悟!」


「それがさ~購買に行ったらお前に頼まれたあれ、最後の一個を見つけたんだけど、手にしたのが女の子と同時になっちゃってしばらく交渉していたんだよ」


「一体誰と取り合ったんだ?」


「あの子は……確か隣のクラスの野江鏡子(やえきょうこ)だったかな。確か去年、健一も一緒のクラスだったんだろ。よく一緒に居られたな」


「ああ。確かに野江は気が強かったよ。でも、なんだかんだ言ってもみんなの相談に乗ったりして助けたりしていたし、優しいところもるよ」


「あの子が?」


 真悟は信じられないって顔をした。


「まあ、普段は気が強いけど。それはそうと真悟、一体どんな交渉したらそんなにボロボロになるんだ?」


「これか? これは帰りにバケツにつまずいてんでもって階段からこけた」


「……………」


 健一は哀れな目で真悟を見た。


「で、でもよかったじゃないですか。カステラクリームパンが手に入って」


 楓のフォローが入った。


「それが……相手の気が強さに負けて結局、諦めたんだ」


 真悟がガックリ肩を落とした。


「……………」


 二人は真悟にかける言葉が見つからなかった。




 そして、放課後。


 ようやく終わったか~という感じで健一は立った。


 その隣では、楓がせっせと帰り支度をしていた。


「あれ、楓ちゃんもう帰るの?」


 同じく帰り支度の用意をしていた真悟が言った。


「ええ、この後行く所がありまして」


「じゃあ、明日のことまたメールするから」


「では、高峰君、佐藤君、明日楽しみにしてます」


 そう言い残すと楓は足早に教室を出て行った。


「なんかあるのかな? それはそうと健一、お前は今日この後ヒマか?」


 真悟が振り返りながら言った。


「まあ一応ヒマだけど」


「だったら俺んこないか?」


(帰ったら朝のことでまた彩芽がうるさいだろうしな)


「いいよ」


「そうと決まったら早く行こうぜ」


 二人が教室を出ると彩芽が待っていた。


「兄サン、一緒に帰ろ」


「悪い、今日もダメなんだ」


「え~なんで~。あ、まさかまたあの楓って子と遊ぶじゃないでしょうね」


 彩芽がじとっとした目で健一を見た。


「違う違う、今日は真悟ん家に行くんだよ」


「ふ~ん。じゃ私は今日()、家で待ってるから」


 皮肉っぽく健一に言って彩芽は去って行った。


(あの様子だと、帰ってもまたうるさいことになりそうだぞ)


 そんなことを考えながら歩いていた。


「それにしても、こうして健一と帰るのは中学以来で久しぶりだな。一年の時はクラスが別々だったからな」


 真悟は懐かしむように言った。


「たまには一緒に帰ってだっただろ」


「たまにだろ。一年の時は俺が帰りを誘いに行ってもほとんど健一いなかったし」


「あれは訳があったんだよ」


「どんな?」


「それは……」


 健一が説明しようとして二組の前を通った時、教室から走って出てくる存在に気が付かなかった。


「どいてどいてー」


 その人は健一に向かって一直線に向かっていた。


 当然そんな反射神経が良くない、健一に避けられるはずがなかった。


「いったーい」


「った」


 相手の肩がぶつかり健一がよろめき、隣にいた真悟にぶつかり真悟がこけた。結果的に一番真悟にダメージが大きかった。


 昔あったCMの『mother、mを除くとother他人です』みたいなあのカチカチ鳴る球みたいな感じの光景だった。

 

 相手は起き上がり頭に怒りマークを作っていた。その人物は購買で真悟とカステラクリームパンを取り合った野江鏡子。髪は後ろでひとまとめにしていて、顔は楓とはまた違った美人であった。唯一何か言うことがあるとすれば、それは鋭い目つきである。その目に映った獲物は逃がさないという目つきをしていた。


「ちょっと、どこ見て歩いてんのよー」


「それはこっちのセリフだ。健一にぶつかったおかげで俺まで被害にあったじゃないか」


「なんださっきのか」


「さっきのってなんだよ。俺には佐藤真悟っていう名前があるんだ」


「うるさい!」


 この鏡子の言葉に真悟の勢いは一刀両断された。


「まあまあ二人とも」


 二人を止めようと割って入るけど、このせいで怒りの矛先が健一に向いた。


「もとはといえば健一、あんたが避けられないのが悪いのよ」


 すごい言い掛かりだった。ここまでキッパリ言うと清々しいくらいだ。


「悪い。考え事していてつい。それより野江、怪我は無い?」


「怪我は無いけど、時間が無いのよ」


 意味不明だったが、大丈夫そうなことだけはわかった。


「あ、こんなところで油売ってる場合じゃなかった」


 そう言うと鏡子は走り去って行った。


 まるで嵐が通過したような後だった。


「健一、あの子が本当に優しいのか?」


「まあ、時と場合によるけど……」


 健一は自信なさそうに言った。


「ま、こんなこと話してもしょうがないや。健一、さっさと俺ん家に行こうぜ」




書いてて思ったんですが、

昔あったCMのmother、mを除くとother他人です、ってあったカチカチ鳴っていたあれ名前が思い出せません。

良かったら誰か知っている人がいましたら、教えてください。


あ~思い出せん ガシガシ

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