第4話 球転がし遊び
まず、はじめに遅くなってごめんなさい。
少し大学や実家の方で色々あって投稿が今日になりました。
……いい訳ですね
とりあえず、書いてはいましたので、どうぞ!
結局集まったのは男女それぞれ五人の計十人だった。
それでもこの人数でボーリングをするのだから、多い方だ。
ここまで来るのにも道を十人で歩いてきたのだから周りからも注目されていた。
「じゃまず、みんな一ゲームずつやろうか」
もはや発案者である真悟が仕切っていた。
それぞれ思い思いにやっていた。
その間、楓はみんなから休まることなく質問攻めにあっていた。
「橘さんって普段何してるの?」
「好きな食べ物は?」
「好きな音楽は?」
「好きなタイプは?」
「今、彼氏っているの。いなかったら俺なんかどう?」
「ねぇねぇ、こんなの相手にしなくていいからさ。こんど私たち女の子だけでどこか行こうよ」
「こんなのってなんだよ。いま話の質問の途中なんだから割り込んでくるなよ」
「なによ。どうせあんたの返事なんて聞かなくてもNOよ」
「そんなことないよな? 楓ちゃん?」
「ごめんなさい」
「NOOOOO~~~~~~~~~~~」
なんだか大変だな。と思いながら、健一はその様子を見ていた。というか途中なにげに告白したのって真悟だよな。
そのせいで他の男子から袋にされていた。なにかして欲しそうな目でこっちを見ていたから、とりあえずその様子を携帯に収めた。
一ゲーム目のみんなのスコアは、110前後となかなか白熱していた。
中でも健一のスコアはみんなと変わっていた。
真悟がスコアを覗きこんだ。
「よくこんなスコア出せるな」
健一自身もそう思う。
それは、みんなが平均的に対して健一はGとストライクの数がダントツに多かったのだ。
どうやら調子の良い時と悪い時の差が激しいようだ。まあ単にやる気の問題だと思うが本人は自覚していない。
「さて、肩慣らしも済んだと思うから次のゲームは男女ペアでやろう」
「賛成~」
真悟の意見にみんな賛成だった。
「ペアはどうやって決めるんだ?」
みんなが疑問に思っていることを健一は聞いてみた。
「それはこれだ」
この時を待ってましたとばかりに真悟はポケットからヒモを取り出した。
「このヒモの端をそれぞれ持って繋がっていたのがペアだ」
「恨みっこなしだからな!」
真悟は気合十分に言った。
もちろん真悟を含む男子の狙いは楓だった。
だが健一だけはそんなのには興味がなかった。むしろどうでもよかったのだ。
「女子は先に選んでてね」
真悟がこう言ったのには訳があった。
実はどのヒモがどこに繋がっているのかを真悟は知っていた。
「俺はこれにする」
女子が選ぶのを見て真っ先に真悟はヒモに手を伸ばしたのだった。
それを見た残りの男子が一斉にヒモに手を伸ばした。
「うおおおおおおおおおおお――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
雪崩のように真悟の持っているヒモに集まった。この光景に女子はドン引きしていた。
あまりのすごさに健一だけが出遅れて残りは最後の一本になっていた。
「おっと、言い忘れたけどゲーム中はペアの人としか話してはいけないから。それと一番得点が高かったペアは、あっちのプリクラでツーショットを撮ってもらうからそのつもりでよろしく」
「え~」
この真悟の発言に女子は一斉に非難した。
そんなことはおかまいなしにヒモをひっぱった。
すると真悟のヒモの先はあらがじめ知っていた橘楓。
……ではなかった。どうやらヒモを一本隣のと間違えたようだ。(お約束)
では、橘楓の相手はというとなんと高峰健一だった。(これもお約束)
「よろしくお願いします。高峰君」
「こちらこそよろしく。橘さん」
健一はこの時後ろから放たれる男子の『羨ましいぞ』っていうオーラを感じ取っていた。
真悟はというとショックのあまりしばらくぬけがら状態だった。
そんなことはさておき、ゲームが始まるとみんな(特に男子)は健一に一位を取らせまいと必死にな
っていた。
「みんなさん、なんだかさっきより張り切ってますね」
楓は座ってみんなの反応を見ていた。
「そうだね」
こうして七投目まではみんな似たようなスコアで白熱していた。
「ふ~」
「何か飲み物ものを買ってきましょうか? 私も何か飲みたいですし」
一息いれていた健一に楓は訊いてきた。
健一たちのチームは最後なので回ってくるまで時間があった。
「なら俺が行くよ」
健一が行こうとしたが、楓にやんわり断られた。
「いえ、私が行きますよ。何がいいですか?」
ここで言い返すのは失礼な気がしたので楓に任せることにした。
「じゃカルピスでお願い」
「わかりました。では」
そう言うと、自販機の方に楓は向かった。
「ふ~」
再び一息いれながらディスプレイのスコアに目を向けた。
すると机の上に財布があることに気付いた。
さっきまで楓が持っていたのと同じ財布だった。
「忘れて行ったのか」
そう呟きながら、財布を持って健一も自販機に向かった。
自販機に行くとそこにはやっぱり財布を捜している楓の姿があった。
「あれ? 財布がない」
制服の中に手を入れてみるが財布の感触はどこにもなかった。
「向こうに忘れたのかな?」
そう思って引き返そうとすると健一がやってきた。
「はい、これ」
「私の財布」
健一から財布を受け取ると楓は深く頭を下げた。
「わざわざ持って来てくれたんですね。ありがとう高峰君」
「そ、そんなことより早く買って行こ」
楓の笑顔とお礼を言われた健一は体がむず痒かった。
「結局二人で来ちゃったね」
「そうだね。こんなことなら始めから二人でくればよかったな」
なんてムードのまま二人は戻った。
戻って来ると健一はさっそく買って来たジュースを開けてゆっくりしようとした。
が、ゆっくりは出来なかった。
「次、高峰君の番だよ」
そんな楓の声にジュースを飲まないまま慌てて準備をした。
「それ」
慌てて投げた玉はピンに向かうことなく溝に一直線に向かった。
「ドンマイ」
楓はやさしく励ますが、他のチームはここぞとばかりにストライク・スペアの高得点を連発して投げ
た。
こうして最後の回になりトップとの差は9ピン差があり、勝つにはスペアを出さなくてはならなかっ
た。
「まず、私からいくね!」
そう言うと楓は指を玉に入れそっと力をいれて投げた。
「えい!」
この時手首にも力が入り、玉は中心から弧を描くように曲がりレーンの溝へと消えていった。
「すみません。私のせいで」
申し訳なさそうに楓は謝った。
そのせいで他のチームからルール上、言葉は飛んでこなかったが非難の視線が健一に突き刺さった。
その視線の大半は嫉妬に燃えている男子のものだった。
それを感じ取った健一は慌てて楓を励ました。
「気にすること無いよ。それにまだ負けと決まったわけじゃないんだから」
「そうですね」
楓は気持ちを切り替えすと健一の応援に回った。
「がんばってください。高峰君」
この言葉にプレッシャーがかかったが、やる気も出てきた。
「ふー」
健一は深呼吸をしてピンを見つめていた。
この姿にみんな注目していた。
特に男子はこれが決まると健一と楓とのツーショットが完成するのだからなおさらだった。
「おりゃ!」
手から離れた玉はピンの真ん中に一直線に向かっていった。
パコーン、と気持ち良い音が響いた。文句ナシに全ピン倒れたのであった。
「くそ~負けた」
「くやしい~」
「やるね~」
他のチームから声が聞こえてくると同時に健一達は喜んだ。
「やったー」
「やったね。高峰君」
この時二人は喜びの余り手と手を握っていた。
このことに気付いた二人は慌てて手を引っ込めた。
「ゴメン、なんだかうれしくなってつい」
「いえ、こちらこそ」
二人はうれしはずかしで頬が赤くなっていった。
ペア決めですっかりぬけがら状態だった真悟。今ではすっかり立ち直っていた。
「で、では始めの約束通り、高峰・橘ペアにはあちらのプリクラでツーショットをと、撮ってもらいます」
楽しそうに言っている真悟の目は何故か潤んでた。
「あ!」
二人は勝った時のことなどすっかり忘れていて顔を見合わせた。
「なあ真悟、やっぱりプリクラはやめにしないか。橘さんだって俺なんかと一緒に撮るの嫌だと思う
し」
「そんなことありません! 私、高峰君と撮りたいです!」
「ほら、楓ちゃんもああ言ってるし行ってこいよ健一。それに断ったら失礼だろ」
「でも…」
「健一、楓ちゃんと撮るのそんなに不満なのか?」
真悟の目は血走っていた。
「別にそんなことはないけど…」
「なら、素直に行け! こっちは男子一同顔には出さないけど、心の中で泣く泣くお前を見送ってんだ。もし、このまま楓ちゃんと撮らなかったら健一、俺はお前のことを明日からキング・オブ・ティキンと呼ぶからな。そう呼ばれたくなかったら」
真悟は息を吸い込むと手に力を込めた。
「さっさと行って来い!!」
言葉と同時に真悟は健一の背中を思いっきり叩いた。
景気の良い音とともに二人は一緒にプリクラコーナーへと向かった。
書いていた分があるので、次話もすぐに投稿できます。