第2話 ヒロインとのフラグ
サブタイトルの通り、この物語のヒロインが出てきます。
健一が通っている、『辰幻高校』は、他の高校と変わらない私立の高校だ。
学費や入学金が特別高くないし、校則も特別厳しくもない。かといって、スポーツや進学に特別力を入れているわけでもない。そんな普通の学校だけど、少しだけ変わっていることがある。
『自由な個性を磨く!』
それがこの高校(校長)の方針だ。そして、毎年クラス替えがある。
クラス替えの方法は、この学校の校長である辰幻勝正が春休み中に生徒の名前を書いた紙を男女別に箱に入れて、それを引いて決めるというものである。
本人はこれを一つの楽しみにしている。生徒からは不満と満足の半々である。
健一と彩芽はようやく学校に着いた。
彩芽にとっては新鮮な高校も、健一にとっては通い慣れた場所だ。
「久しぶりだな」
健一はしみじみと学校を見渡した。
靴箱の前にある掲示板にはクラス分けが貼られて、人だかりが出来ていた。新入生のクラスも一緒に貼られているが、遠目から見ても、まだ慣れてない一年生との違いがすぐ分かる。
「兄サン、写真撮ってよ」
彩芽が鞄からカメラを取り出した。
「なんで俺が……」
「仕方ないでしょ。お父さんもお母さんも今いないんだから」
ここで言っておくが、両親は別になくなっているとかそんなのではない。あまり家にいなくて、いつもどこかに行っている。
どこに行ってるか聞いてもいつも「ちょっと、ね♪」としか返事が返ってこない。
いつものことなので、健一も彩芽もいないのには慣れている。というかちゃんと仕事してるんだろうか?
「そうだったな。それにしても二人とも彩芽の入学式に来れないなんて残念だな」
「うん。ほんとは来て欲しかったけどいつものことだから仕方ないよ。それに兄サンといるから平気だよ」
彩芽は門の前に立って、ポーズをとった。
「早く撮ってよ」
「はいはい」
カメラを構えると彩芽は嬉しそうにした。
シャッターを押すとカメラを彩芽に返した。
「今度は兄サンと撮りたいな」
「やだよ恥ずかしい」
しかし彩芽はもう近くにいた保護者に頼んでいた。
「……まっ、いっか」
だけどこの楽観視が少し後悔することになる。
彩芽は右腕を前に出し、指を二本だけたてた。しかもピースって言いながらノリノリである。
対するただ横に立っているだけの自分は恥ずかしいことこの上ない。
「…………」
「おねがいしま~す」
保護者は苦笑いしながら、シャッターを切ってくれた。
お礼を言い、カメラをしまうとクラス分けの提示版に足を向けた。
「早く行こ、兄サン」
二人もその人だかりに加わった。
「じゃまず、私の名前から探してよ。そしたら兄サンのも探すから」
「わかったよ。俺は六組から探すからそっちは一組から探してくれ」
「うん。わかった」
彩芽と別れた健一は人ごみの中、掲示板を見ながら名前を探していた。
「あ、あった」
彩芽の名前が目に映った時、掲示板に気を取られていた健一は誰かとぶつかってしまった。
「きゃぁ!」
健一は転びはしなかったが、相手は軽く尻もちをついていた。
「ごめん、大丈夫?」
健一は慌てて相手の体を起こしながら言った。
その子は女の子だった。
立ち上がると背は健一と同じ位で髪が長く、プロポーションが良く、そしてなによりも美人だった。
「俺がよそ見していたから」
「ううん。私もぼーっとしていたのよ」
その女の子の喋り方から清楚で可憐で、気品のオーラを感じ取れた。
「本当に申し訳ありません」
と、言うとその女の子は校舎内に去って行った。
「兄サンあった?」
女の子と入れ違いに彩芽がやってきた。
「……ああ、あったぞ」
「どうしたの?」
彩芽が不思議そうに覗き込んだ。
「いや、なんでもない」
「で、私何組だったの?」
「五組」
と答えながら五組のクラスの紙を指さした。
「本当だ~。じゃ今度は、兄サンの番だね」
と、また分かれて探そうとしたら後ろから声をかけられた。
「おっはよ~健一」
健一の後ろから声がした。
「なんだ、真悟か」
「久しぶりに会ったのにリアクション薄いな」
「一昨日会ったばかりだろ」
「細かいことは気にするな」
このいかにもお調子者という言葉が合いそうなのは、佐藤真悟。健一とは中学の頃からの知
り合いだ。
もちろん彩芽とも面識があるが、彩芽の秘密は知らないでいる。
「おはようございます。真悟さん」
「おはよう。彩芽ちゃん」
「彩芽ちゃんは、何組だったの?」
「五組です」
「へぇ~、じゃあ結構クラス近いんだ」
「真悟、お前は何組なんだ?」
健一は訊いてみた。
「一組。お前も同じクラスだ」
「そうか」
こういうのは自分で捜すのを楽しみとしている人と、別にどうでもいいのとがいる。健一は後者で捜
す手間が省けてラッキーと思っていた。
「じぁ私は行くね」
そう言うと彩芽は校内に消えて行った。
「彩芽ちゃんっていい子だよな。あんな妹がいて羨ましいぞ」
幸せそうな真悟に、健一はボソっと呟いた
「知らないことって幸せだな」
「ん? なんか言ったか」
「いや別に、俺達も教室に行こうぜ」
二人は教室へと向かって行った。
投稿が昨日のうちに間に合わなかった……
出来るだけ早くこれからも投稿します。