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第28話 夕方の公園

昨日短編で別の物語を書いていました。そんなん書くなら、こっちの更新をしろってはなしですけど、書いてしまったものは仕方がありません。

それとこの作品で前話、題名を書き忘れてしまった自分がいて速攻で編集した自分がいました。あの時は焦りました。

さて、今回は前半は三人の視点で、後半は楓の視点になります。

それでは、どうぞ!

「……見失ったわね」


三人は人ごみを見渡すが、楓らしき姿は見られない。


「兄サン、橘さんとは連絡取れないの?」


「そういえば」


 言われて気付いた健一は楓の携帯を鳴らしてみた。すると彩芽が持っている楓の袋が鳴っていた。


 鏡子が荷物を調べた。


「携帯と財布もあるわね。それにこれは…」


 他にもないかと袋の中を調べる鏡子の目が見開いた。


「どうしたんだ野江」


 慌てて鏡子に聞き返した。


「これは私達も買う予定だった予約発売限定のじゃない。これを押さえてるなんてかえっちもなかなかやるわね」


 彩芽もうんうんと、頷いていた。


「んなこったーどうでもいいだろ!」


「ゴメン、ゴメン。とにかくこれ以上の物はないわね」


「それじゃ、ここはひとまず分かれて捜そうよ」


 彩芽の提案により三人はそれぞれ別々の方向に分かれた。


「なにかあったら連絡するから」


「ああ」


「わかった」


 健一は思いついた場所を片っ端から捜した。


 商店街、デパートの中、さすがにトイレの中までは捜さなかったがそれでも思いつく場所を捜した。


 しかし、まだ楓と知り合ったばかりの健一には捜す場所も限られていて思いつかずに悩んでいた。そんな時、健一の携帯が鳴った。相手は鏡子からだった。


「そっちにかえっちいた?」


「いや、そっちは?」


「だめ、いない。いまこっちに彩芽ちゃんもいるんだけど、彩芽ちゃんの方も見てないって。もしかして帰ったんじゃないかな?」


 もし、鏡子の言う通り楓が家に帰ったとすれば、家まで行きたいとこだけど家を知らない健一たちには打つ手がなかった。


 健一は諦めることができなかった。つい二日前に知り合ったばかりだけど、そのことが頭の中で蘇った。


 そこでまだ一か所だけ捜していない場所を思い出した。


「俺、最後に気になる場所があるからそこに行ってみるよ」


 それだけ言うと携帯を切り健一は走りだした。昨日、楓が寂しそうにしていた公園へと。





 小さい頃、今と違って体が弱かった自分は家の窓から公園で遊んでいる自分と同じくらいの子たちをただベットの上から眺めるしかなかった。たまの学校も周りに離されないため必死だった。けど、一緒に外で遊んだりはあまり出来なかった。

 

 あの時に眺めていた所に自分はいる。


 夕暮れ。もう公園で遊んでいる子供はいなかった。


 楓は一人そこのブランコに座っていて昔のことを思い出していた。


 そのブランコは古いのか軽く揺れるだけで音が悲しく鳴った。


 まるで今の心を現してるかのように。


「ほんとどうしたらいいのかな。高峰君たちに私がアニ天に行ってることばれちゃった。もう明日からどんな顔して会えばいいのかな」


 今の楓は状況を整理するかのように自分に質問をしながら、ただ涙を流すことしかできなかった。涙は頬を伝い膝の上に落ちていた。


 その涙は冷たかった。


 遠くの方から足音が聞こえてきた。


 楓は慌てて涙を拭き、早くこの足音が離れてくれることを願った。


 しかし、足音は遠ざからず、だんだんとこの公園へと近づいていた。そして、公園へと誰かが入って来た。


 子供が何か忘れ物でも取りに来たんだと思った楓は泣き顔を見られまいと隠すように顔を(うつむ)かせた。


 なぜか影が楓を覆った。少し顔を上げて見るとそこには健一が立っていた。走ってきたのか息を荒げていた。


 その姿を見た楓は涙を手で拭った。


「捜したよ橘さん」


 しばらく楓は黙っていた。それを健一は辛抱強く待っていた。


 やがて楓は重い口を開けた。


「びっくりしたでしょ高峰君。私、時々あの店に行くんですよ」


 楓は声はいつもと変わらず笑顔だった。


 でもあきらか無理をしているのがわかった。


「さっきだってあの店で今日の発売の予約を取りに行ってたんですよ。ネオランドで取ったこの賞品だって本当はすごく欲しかったんですよ」


 トレカを取り出して健一に見せた。


「好きなんだね」


「ええ、小さい時から家で毎日テレビ…いえ、アニメばかり見てましたから」


「そうなんだ」


「ええ、けどその頃の私はすっごく体が弱くて学校だってみんなと同じように毎日は通えませんでした。だから話しかけられることはあっても、自分から話しかけるというのはなかなかできませんでした」


 楓は続けた。


「それに趣味がアニメだなんてそれこそ話が合わなくて、一人にならないために周りと話を合わせるのに必死でした。そして、成長するにつれて体の方も今ではすっかり良くなりました。けど、アニメを見るのはやめられませんでした。変ですよね? 未だにアニメが好きなんていうの」


 楓の声がだんだんと震えてきた。


「……………」


「………どうして、どうして私なんかを追いかけて来たんですか? 私、あのアニ天で買い物しているんですよ。オタクなんですよ!」


 楓はもう投げやりになっていた。


「それって、そんなにだめなことなのかな? そりゃアニメの話とかはわからないけど、べつにそんなの気にしてないよ。そりゃちょっとは驚いたけど、だからってそんなので橘さんを嫌いになったりしないよ」


「え!?」


 驚いた。普通オタクなんていったら世間一般から腫れもののように扱われ、あまりいい印象を聞かない。現に私がクラスの子と話をしていた時にそれとなく話を振ってみたことがある。軽く触るぐらいだったよかったけど、深くまで話そうとするとけんえんされたことがある。


「ほんとう、ですか?」


「本当だけど」


「ほんとう? 本当ですか?」


 思わず楓は座っていたブランコから立ち上がり健一に詰め寄る。


「本当だよ」


「ありがとう。こんな……私を嫌いにならないでくれて。本当に…ありがとう」


 楓は抱きついた。といっても健一の胸に顔を埋めるという風なのである。


 楓からは再び涙が流れていた。


 けど、今の涙はさっきみたいに冷たくなかった。逆に温かかった。




視点を変えるというのは、難しいので上手くできているか不安です。上手くできてなくても皆様の寛大な心で受け止めてください。

それと前書きで書き忘れていましたが、短編は『ある夏のできごと』とい作品です。時間があればそちらの方もみて見てください。

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