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第21話 イベントという単語は外来語

 会場の舞台は白い煙とともに司会者がマイクを握り締め出てきた。


 そして、その横にはなにやら布に被さっている台があった。


「みんな楽しんでるかい?」


 この言葉にノリの良い観客の声が上がった。


「それではただいまから今日のこのイベント『のって!のって!ハイ、チーズ!』を始めたいと思いますが、その前に今日の賞品はこちら!」


 司会者が勢いよく布を引くとその賞品が姿を現した。健一たちは遠目からだったので、形だけしか判らなかった。


「兄サン、もっと前に行こ」


 そう言いながら彩芽は人混みの中を前進していった。それに続くように健一たちも前進した。会場の舞台の手前まで来ると賞品の一つを彩芽は驚いたようにそして、()みを浮かべていた。それは横にいた鏡子も同じ反応をしていた。このことに気付いたのは健一だけで、同時にその笑みから嫌な予感もした。


「さて、今日の賞品の一位はこれ! ここのフリーパス券十枚セッート。家族でまた来るもよし、友達で来るのもよし。余った券を売り飛ばすのもよし。そして、二位は豪華お土産五点セッート。これを持って帰ればみんなが喜ぶこと間違いなし! さて、三位の賞品なんだけど、これは知らない人にはなんてことないがマニアには血が騒ぐほど欲しくなってしまう幻の年間トレカ十二枚セットだ!」


 この司会者の賞品紹介に周りからさらに歓声の声が上がった。


「では簡単にルールーの説明をする。今日のイベントのテーマの通り今回は二人一組の参加で乗り物にペアと写真に写ってそれをここに持って来るただそれだけ。だけど写真の顔がうつむいたり、目を閉じているのはNGだからそこのところ気を付けてくれ。参加と詳しいルールはそこの受付で聞くといい。みんな楽しんで参加してくれ。ではまたここで会おう」


 そう言い残して司会者は白い煙の中に去って行った。


「へぇ~、一位、二位の賞品は良さそうだな。なあ、健一」


「ああ。けどこれペア参加だからな」


 今日ここにいるのが五人だから必然的に一人余ることになる。


「そうだな。残念だけど行こうぜみんな」


 二人は会場を背にしていたが、他三名(・・)はその場から動こうとしなかった。


「三人ともなにしてんだ?」


 健一が呼んだが動く気配はなかった。


代わりにポツリと答えが返ってきた。


「兄サン、これに参加しようよ」


「だけど、そしたら一人溢れるだろ」


「そうだよ、彩芽ちゃん」


 真悟も賞品は欲しいだろうが


「けど、せっかくここに来たのにこういうイベントを逃すっていうのもなんだか尺じゃない」


「そんなに参加したいのか?」


「「もちろん!」」


 と、彩芽と鏡子の二人は声を揃えて言った。


 二人がここまで参加したがってる訳、健一には思いつく節があった。


「二人ともちょっと」




 真悟と楓を残して少し離れた所に来た。


「鏡子ちゃん、あれってあれだよね」


「そうだね。彩芽ちゃんはあれ持ってる?」


「持ってない。鏡子ちゃんは?」


「私もよ。けど、まさかこんな所で手に入るチャンスがあるなんて思わなかったわ」


 そんな二人を見て健一は呆れていた。


「そんなにあの三位の賞品が欲しいのか?」


「あら、私たちが欲しい物がよく判ったわね」


「そりゃ、あれだけ怪しい顔で見てたら分かるよ」


「じゃ、私たちがこのまま引き下がらないってのも解るわよね」


「またあのアニ天で買えばいいだろ」


「私だって買えるのだったら買いたいよ。けど売ってなかったし店の人に聞いても今のところ在庫が入る予定もないし、ネットでも調べたけど無駄に終わったのよ。あれは本当にレアな物で手に入れたくても手に入らないんだから。だから絶対手に入れるわ」


 この時の二人の意気込んだ目は本気(マジ)だった。


 始めはこのイベントに参加しないように言うつもりだったけど、二人の様子を見て健一の頭の中で説得不可という答えが出た。


 けれど一応の可能性に期待してみた。


「二人とも参加しないってことは……ない?」


「「ない!!」」


 と、二人は声を力強く揃えて言った。





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