第19話 昼食はこれからの始まり
なんか前につけたタイトルと被るが、
そんなの気にしねー!
本編にどうぞ!
足元がふらふらしていて、始めの頃の元気はどこかに行ってしまった。
その真悟からはため息が漏れていた。
「はあ~」
あれから目につく乗物を鏡子は片っ端から選んで制覇していった。もちろんそのほとんどが絶叫系で、乗れば乗るほど鏡子と彩芽は元気になっていった。逆に真悟は元気がなくなっていった。
「さて、次はどれに乗ろうかな」
鏡子が弾んだ声で次なる乗り物を探していた。
「ちょっと休憩しようぜ」
絶叫系の乗り物と、ハードな乗り方に真悟は参っていた。
「なに言ってんのよ。これからが本番じゃない」
「俺もちょっと休みたいんだけど」
真悟ほどではないけれど、健一も少し参っていた。
「まったく健一まで、だらしがないね。男のあんた達がそんなことでどうすんの」
「けど、野江が選ぶのって全部絶叫系じゃないか」
「じゃ私が選ばなければいいのね。それじゃあ、かえっちはなにが乗りたい?」
鏡子が横に振り向きながら楓に訊いた。
「そうですねー……」
ぐぅー
どこからかお腹の虫の音が聞こえた。
「おなかすいたー」
どうやら彩芽はのお腹が鳴ったようだ。
「そういえば腹が空いたな」
「そういえばそうね」
時計を見るともう一時を少し過ぎていた。
「ではお昼にしましょうか」
五人は遊園地内のレストランに向かった。
ホットドックを買って手軽に済ますという意見もあったが、他の客も考えることは同じで屋台には気の遠くなるような長い列が出来ていたため、その列に挑戦しようと言い出す者は誰もいなかった。
店内は「次どれに乗ろうか」「私あれが乗りたい」などの声が聞こえて賑わっていた。逆に店員は料理を運んだり片付けなどでせわしなく動いていた。厨房の方から聞こえてくる音はやむ気配がなかった。
店員が入口にいる健一たちの存在に気付くとすぐやって来た。
「何名様ですか?」
「五人で」
「こちらです」
定員は健一たち見て席に案内した。
「ご注文が決まりましたらお呼びください。なお、当店は水がセルフとなっておりますので」
それだけ告げると店員はまたせわしなく去っていった。
「疲れた~」
そう言うと真悟が椅子に座り込んだ。他の四人も座った。
奥に真悟が座りその隣に健一、そしてその隣に彩芽が座って、楓と鏡子はそれに向かい合う形となった。
メニューを広げるとそれぞれ「何にしようか?」など言って悩んでいたが、お腹が空いているのか選ぶのに時間がかからなかった。
みんなが決まったのを確認すると健一は脇にある呼び出しボタンを押した。
すぐに店員が奥から来て注文をそれぞれ取ると「しばらくお待ちください」と、言葉を残すとまた奥に去って行った。奥に行く間にも途中の席に「お下げしてもよろしいですか?」と、皿の回収にもしていた。実に無駄のない動きだった。
「さすが流行りの遊園地。店の従業員まで徹底しているな」
健一は思わず感心の言葉を漏らした。
料理が来る間みんな口々に「早く料理が来ないかな~」「次何に乗りましょうか」「次はやさしい乗物にしようぜ」など言っていた。
「ちょっと健一、みんなの分の水持ってきてよ。お願い」
鏡子が命令口調で言った。
「もしかして最初に言ってた一つだけ聞く願いのことか?」
「そうよ。」
(まあこんなので済むならいいか)
「はいはい、わかったよ」
「わかりましたでしょ」
「……わかりました」
健一が渋々言うのを見て納得したのか鏡子は満足そうだった。
冷水器の前まで来るとため息が出た。
(あと願いを三人から聴かなきゃならないのか。橘さんはともかく真悟と彩芽はまた変なことを言ってくるんだろうな)
そう考えるとまたため息が出た。
忘れよう。考えを振りほどき、気を取り直してコップに水を淹れ始めた。自分の分も含めて五人分淹れなければなれない。無理して持てないこともないが、無理はする必要がないので、往復するつもりだった。
三人分の水を淹れると両手で持って、自分の席の方に振り返るとそこには鏡子が立っていた。
「トイレか?」
すぐ脇のトイレに顔を向けた。
「そんなわけないでしょ」
「じゃなにしに来たんだ?」
「……ちょっと手伝いに来たのよ」
そう言うと鏡子は二つコップを手に取った。
「だからさっきのお願いはなしね」
「……なんかずるくないか」
「それより健一、あんたなんで一昨日からかえっちと知り合いなのよ?」
「誤魔化すなよ」
「いいから聞きなさい」
鏡子の目に力が入り真剣な表情をしていた。
「気になったんだけど、あんたとあのかえっちがどうやって知り合ったのよ?」
「一昨日のクラス替えの掲示板の前でぶつかっただけだよ」
鏡子は納得したような、してないような感じだった。
「それにしてはずいぶん仲がいいよね」
「そうだなそれがきっかけか知らないけど、一昨日と昨日も学校の後に会ってるし」
鏡子の眼光が細まった。
「私と知り合った頃なんかと随分違うじゃない。さっきなんか、かえっちがしがみついたりなんかしてたし」
「俺がいつ橘さんにしがみつかれたんだ?」
健一が慌てて聞き返した。
「最初のジェットコースタに乗った時よ」
健一は自分の記憶を掘り返した。
「あー、そんなこともあったかなー」
「あったかなーってあんたねー、とにかくかえっちに馴れ馴れしのよ」
「仲良くしちゃいけないのか」
「そうじゃなくて、まだ知り合ったばかりなのにその……羨ましいというか、みせつけてんじゃないわよ」
「どうしたんだ? 今日はやけに突っかかるな」
「ぐっ、もういいよ」
手にしていたコップに水を淹れ始めた。
「これ運ぶの手伝うのだから、お願いはまた別な時に聞いてもらうわ」
そう言い残すと席に戻っっていった。
なんか後半、鏡子のことを書いてしまった。
まあ、こう書いてしまったからいっか