第15話 ドタンバキャンセル略してドタキャン
電話の相手は真悟からだったけど、すごく慌てている様だった。
『健一、どうしよう』
「どうしたんだ真悟? そんなに慌てて」
『とにかく、足りなくなったんだ。健一の方で誰かいないか?』
真悟の話がまったく見えなかった。
「落ち着けって真悟。まず、なんの話なんだ?」
『実は今日の遊園地に行くことになってた二人が、急に来られなくなったっていうんで他の奴にも色々聞いてみたんだがみんな駄目みたいで、それで連絡したんだ。そっち、誰かヒマそうな奴いないか? 誰でもいいんだ』
「そんな急に二人を集めるって言ったって………」
健一にはまったく思い浮かばなかった。
そんな健一が困っていた時、彩芽と鏡子ののん気な声が聞こえてきた。
「あった! 鏡子ちゃん、私の方はあったよ」
「私の方もあったよ」
「じゃあ、レジに行こっか」
この二人を見て健一は思いついた。
「真悟、もしかしたらなんとかなるかもしれない」
『本当か? なら、誰を誘うのか健一に任せるよ。じゃあ、また駅で』
健一に問題を任せた真悟は、とっとと電話を切った。
「二人ともちょっと待って」
レジに行こうとしている二人を健一は止めた。
「なに? 兄サン」
「せっかく、今から買うとこだったのに」
「まあ、そう怒るなよ。野江」
「で、なんなの健一?」
「これから隣町の遊園地に行かないか?」
「え、でも用事があるんじゃなかったの?」
「そんなことはどうでもいいんだ。行けるか、行けないか、どっちなんだ?」
この健一の問いかけに鏡子は顔はみるみるリンゴみたいに赤く染まっていった。
「い、いきなりそんなこと言われてもこっちにだって心の準備がいるし、それになにも彩芽ちゃんがいるこんな所で言わなくったっていいじゃない。女の子を誘うのだったらちょっとはムードってもんを考えなさいよバカ! まあ、健一がせっかく誘ってくれたんだから練習で行ってあげてもいいわよ」
鏡子が答えを言い終わる頃には顔はさらに赤くなっていた。
そして健一と遊園地に行ったことを想像しながら照れながらも喜んでいた。おもわず笑みがこぼれるほどだった。
「本当か? よかったー、予定とかあったらどうしようかと思ったよ」
健一は一安心していた。
「彩芽も大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ」
喜んでいた鏡子の頭上に?マークが浮かんだ。
「彩芽ちゃん、ちょっとここで待っててね。健一ちょっとこっち来なさい」
「え、なんだよ」
「いいから、来なさい!」
鏡子は少し離れた所に健一を強引に引っ張って来た。
「なんで彩芽ちゃんも誘うの?」
「え、なんでって人数が足りないから」
「別に私はそんなにいっぱいで行かなくたってもいいのよ」
「けど、もう彩芽と約束したし。それに真悟も橘さんも多い方がいいと思うんだけど……」
「真悟? ああ、昨日健一と一緒にいた男子ね。それとあの橘さんがどうして今出てくるのよ」
「え、だって一緒に行くからに決まってるからだよ」
鏡子の頭上の?マークが数を増していた。
「え?」
「あれ? 言ってなかったっけ。真悟が遊園地のチケット五人分あって、五人で行くはずだったけど、急に二人行けなくなってそれで彩芽と野江を誘ったんだけど……」
ここで鏡子はようやく理解した。
「そ、そうだったの」
「もしかして俺と二人で行くと思ってたのか」
冗談半分で健一は聞いた。
「そ、そんなはずないじゃない。私は………そう、チケットがそんなに余ってるのかなと思って」
図星だった鏡子は慌てて言い訳を考えた。
「そうだったのか。悪かったな気を使ってもらって」
「本当よ。そういうことは始めにちゃんと説明しなさいよ!」
「悪い悪い」
「ちょっと期待したじゃない、バカ!」
鏡子は小さく呟いた。
「なんか言ったか?」
「バカって言ったのよ、バカ!」
鏡子は健一の口を抓りながら言った。
元の所に戻ると彩芽は自分が買おうと思っていたアニメグッズを眺めていた。
「おまたせ」
「二人でなに話してたの?」
「ちょっとな……」
鏡子に抓られた所を抑えていた。
「それにしても、買い物はまたになるね鏡子ちゃん」
「そうね」
買い物をして家に帰っている時間はないから二人は手に持っている商品を返した。
「まあ、また来ればいいじゃないか。それよりそろそろ時間だから行くぞ!」
鏡子と彩芽の二人が加わって店を後にした
この話とは関係ないけど、いつか健一と鏡子の出会いの話を書いてみたい。
まだ、全然考えてないけど……