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第14話 休日は有意義に過ごすもの

 二人は商店街まで来ていた。


 彩芽が急かしたせいで早く着いた。


 今日は休みとあって昨日以上に人ゴミもすごかった。


「やっぱり休みだから人が多いね。店に入る時は知っている人に見られないようにお互い注意しようね」


 路地の前まで来ると二人は辺りを見渡した。


 この動作は通い慣れている彩芽の方が素早く、健一みたいに不自然で怪しくもなかった。まるで周りの風景の一部となっているようだった。


「私は誰も知っている人いないよ。兄サンの方も大丈夫?」


「ああ、大丈夫誰も知り合いはいないようだ」


「なら、1、2、3で一気に行くよ」


 二人は声を合わせた。


「1、2、3!」


「1、2、3、それ!」


 二人は素早く路地に入った。


「やっぱり入る時はいつもドキドキするね」


「こっちはドキドキって言うより、ハラハラだけどな……」


 店に入ると昨日と何も変わってなかった。(当たり前か)


「それにしても、いつ来てもここは楽しいね」


「そうか? 俺はいつ来てもここの雰囲気には慣れないけどな。それに昨日は大変だったし……」


 小さく言葉を付け足した。


「あ、それは今日もか……」


「昨日って私のを買いに行った時に鏡子ちゃんと会ったんだよね」


「そのおかげでこっちは助かったような、大変だったようなだったよ。あ、そうだお金まだ返してもらってなかったよな」


「そうだったね。兄サン昨日帰って来た後、すぐ休んじゃったからね。それで、いくらだったけ?」


「8500円」


「はい、8500円」


 彩芽はお金をポンと出した。この金額は高すぎでもないけど、安くもなかった。現に健一はお金が足らずに鏡子に貸してもらったほどだ。


「よくお金あるな。前借りでもしてるのか?」


「そんなことしてないよ。私だってそんなにお金があるわけじゃあないよ。買う物だって本当に欲しい物だけ買うし、他にも割引券とかを使ってるんだから」


「そっちも色々苦労してるんだな……」


 けどそんな彩芽に少しも同情はしたくなった。


「で、なに買うんだ?」


「鏡子ちゃん」


 この言葉に健一は衝撃を受けた。野江がオタクだと知った時ぐらいの衝撃だった。


(なに言ってんだ彩芽の奴。そうか、アニメばっかり見てるからとうとうおかしくなっちゃったんだな)


 健一は彩芽を悲しい目で見ると優しく説明した。


「人はお金では買えないんだよ」


「鏡子ちゃん」


 彩芽はオウムのように言葉を繰り返していた。


「だから………」


「もう兄サン、なに勘違いしてるの。あそこに鏡子ちゃんがいるのよ」


 彩芽が指差す方向を見ると鏡子の姿があった。また同時に、向こうもこちらの存在に気付いた。


 鏡子の方へ彩芽は近づいて行った。


「おはよう鏡子ちゃん」


「おはよう彩芽ちゃん。それと健一」


「ついでかよ」


 そんな健一を無視して鏡子は彩芽と話した。


「彩芽ちゃん達は、いつ来たの?」


「さっきだよ。鏡子ちゃんは今来たの?」


「ええ、そうよ。休みだからゆっくり寝てたのよ。おかげで元気ハツラツだよ」


(野江の場合いつも元気だと思うけど……)


 健一は鏡子を見ながら思った。


「なによ健一、こっちをジロジロ見て。あ、そうだ昨日貸した1000円返してよ」


「兄サン鏡子ちゃんからお金借りてたの?」


「ああ、昨日彩芽のを買いに行った時に足りなかったから貸してもらったんだ」


「そうだったの。ゴメンね、鏡子ちゃん」


「彩芽ちゃんが謝らなくてもいいよ。悪いのはあの時お金持ってなかった健一なんだから」


「俺のせいかよ」


「当たり前よ。大体、女の子からお金を借りるって情けないと思わないの? 唯でさえあんたは凄いとこなんてないんだから、そういうことだけはちゃんとしなさいよ。まだ他にも……」


 鏡子の説教は続いた。果てしなく続いた。


 健一は耐えていた。あまりにも長かったため、彩芽が止めに入った。


「鏡子ちゃんもうそのぐらいでいいじゃない」


「そうね。せっかくの休みでいい気分なのに台無しになるところだったわ。健一、また今日も荷物持ってね」


 この鏡子の命令に、健一は勝ち誇ったような顔で言った。


「無理だな。この後、用事があるから荷物なんて持ってるヒマなんてないだ」


「用事ってなによ?」


「まあ、色々とな」


 説明するのが面倒だった健一は、一言で済ました。


 しかし、これがいけなかった。鏡子は疑いの眼差しで健一を見ていた。


「本当に用事があるんでしょうね。本当は私に荷物持たされそうになったから、嘘ついてんじゃないでしょうね」


「兄サンの言ってることは本当だよ鏡子ちゃん。ここだって無理して私に付き合って来てくれてるんだから」


「まあ、彩芽ちゃんが言うのだったら……」


 どうにも納得できない健一だったけど、男として堪えた。


「せっかく私の荷物を持たして鍛えてあげようと思ったのに……残念」


 鏡子は本当に残念そうな顔をしていた。


「仕方ない、今回は自分で持つか」


 鏡子は『今回は』の部分を強調しながら健一に向って言った。


 そして彩芽と鏡子はそれぞれ自分が欲しいアニメグッズを探し始めた。


 その時、健一の携帯が鳴りだした。





みんなは休日どうしていますか?


自分は昼に起きてそれからダラダラしてます。

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