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第12話 勘っていうのは経験である

題名が上手いこと思いつかなかったが、そこはあまり気にせずに

本編に

   どうぞ!

 時刻は夕方。


 自分の家にの前にようやく着いた健一はドアを開けようとした。


 しかし、この時健一はやな予感がした。そう自分の勘が告げていた。


(なんだこの感じは)


 するとドアの向こうから彩芽の声が聞こえてきた。


「なんだ彩芽が友達でも呼んで帰るところか」


 気のせいと思いほっと胸を撫で下ろし、ドアを開けた。


「あ、お帰り兄サン」


「ただいま!?」


 健一の予想通り彩芽の横にもう一人いた。


 しかしその人物は健一も知っている人物だった。髪を後ろでまとめいる野江鏡子だった。


「遅かったじゃない健一」


「野江なんで家にいるんだ?」


「なんでって、荷物届けたからに決まっているでしょ」


「それにしても頼んでからだいぶ時間が経ってるけどまさか、今来たところなのか?」


「違うわよ。ちょっと彩芽ちゃんと話してたのよ」


「彩芽ちゃん? え、どういうこと?」


 健一には訳が分からなかった。


「あんたも鈍いわね」


 鏡子が自分の頭を指でトントンとした。


「兄サン、私と鏡子ちゃんは前から知り合いだったのよ」


「そういうこと」


 彩芽のセリフに鏡子が便乗した。


「え、でも野江が彩芽と一緒にいる所なんて見たこと無いけど」


「いつもはあの店で会ってたからよ」


「それじゃあ、二人は最初から秘密のことも知ってたの?」


「ええ、知ってたわよ。けどまさか、健一の妹が彩芽ちゃんだったのは気が付かなかったわ」


「今日は鏡子ちゃんが来てくれて退屈しなくて面白かったよ」


「私も面白かったよ。それじゃあ、そろそろ帰るよ」


 そう言って鏡子は玄関から出ようとした。


「待って!」


 彩芽が鏡子を引き止めた。


「なに? 私、なにか忘れた?」


 鏡子が荷物を探るが何も忘れてはいなかった。


「そうじゃなくて……」


 彩芽が健一の方に向いた。


「兄サン、鏡子ちゃんを送ってあげなよ」


「野江は子供じゃないんだから大丈夫だろ」


「でも最近なんだか物騒だから。私の友達もこの前怪しい人を見たって言うし」


 彩芽が心配そうに言った。


「大丈夫、大丈夫。もし、そんな奴が出てきたら私がボコボコにしてやるんだから」


 鏡子は笑い飛ばしながら言った。


 もし本当に怪しい人が出てきてもその通りにするかも、と健一は思った。


「けどまあ、出てこないのに越したことはないわね。相手も一人より二人の方が出て来にくいと思うし……やっぱり送ってもらおうかな」


 面倒事になりそうな気がして健一はその場から離れようとした。


「兄サンどこ行くの?」


 彩芽の呼びかけに健一はとっさに複数の理由を考えて、その中で一番無難な理由を出した。


「いや、ちょっと……トイレに」


「そんなこと言って本当は面倒事になるのが嫌で、逃げようとしたんじゃないの」


 図星だった。


 鏡子の言ったことは見事に当たっていた。健一は痛い所を突かれ少し目を泳がせた。


「そうなの? 兄サン」


「ソ、ソンナコトナイヨ」


「じゃあ、私を送ってくれるわね」


 これ以上逃れられそうになく頷くしかなかった。


「じゃあ野江、行こうか」


「あれ? 健一、トイレは行かなくていいの?」


 鏡子が含み笑いしていた。


「戻って来てからする」


「二人ともいってらっしゃーい」


「またね彩芽ちゃん」


 彩芽に見送られながら、健一は家を後にした。


「私と一緒に歩けるんだからありがたく思いなさいよ」


 健一からはため息が出た。


(せっかく家に帰って寝ようと思ってたのに)


「はい、健一」


 鏡子は手に持っていた荷物を健一に突き出した。


「なにこれ?」


「なにって、荷物だけど」


「それはわかるけど……」


「気が利かないわね。女の子が荷物を持ってるのに男の健一は何もしないの? 早く荷物持って」


 健一は鏡子から荷物を渡された。というより押しつけられた。


 この時、女の子にも色々いるんだなと楓と比較して改めて思った。


「野江はいつから彩芽と知り合ったんだ」


「そ~ね~。あれは年末だったかな」


 鏡子は思い出しながら話し始めた。


「あの店で欲しいグッズがあって、それを買おうとしたら彩芽ちゃんに先に取られてたのよ。それで譲ってくれるように話してるうちにすっかり意気投合しちゃって、それからあの店でよく会うようになったのよ」


「へぇ~。そうなんだ」


 たいして興味がなかったので、適当に答えた。


「じゃあ、これからも彩芽と仲良くしてくれよ」


「もちろんよ」


(よし! これで小さい頃から話されていた彩芽のアニメ話の負担が少しは減るぞ)


 健一の顔はにやけていた。本当はこれからは鏡子の分も手伝うことが(強制的に)決まっているが、自分の知らないところで決まったことなので知ることはできなかった。


 ここで健一はふと疑問に思った。


「なあ、野江」


「なに? もしかしてまた私に 頼みごとがあるの」


「違うって」


「じゃあ、なに?」


「聞くけど、野江ってなんでアニメ好きなの?」


「なんでって面白いからよ」


「本当にそれだけ?」


 健一は深く追求してみた。


「そうよ。まあ、昔は少し違ったかな」


「どんな風に?」


「私、小さい頃……人見知りが激しくてなかなか人と話せなかったの」


「野江が!?」


 今の野江からは想像できない健一は驚きを隠せなかった。


 鏡子は睨み返した。


「なによ! そんなにおかしい!」


「いや、だってさ……」


「私だってそんな頃があったんだから。それでま~変わったのは、その頃見てたアニメだったの。あれから勇気をもらって段々と人見知りも直ってきたんだから」


「それでこんなになっちゃったのか」


 健一はボソッと呟いた。


「ん、なんか言った!!」


 鏡子が鋭く睨んできた。


 健一はその視線の餌食にならないためそっぽを向いた。


「いや、アニメってすごいなあーって」


「でしょー。そうだ! これを機会にあんたもアニメ見ない?」


「絶対に遠慮しとくよ」


 きっぱり遠慮なく確実に断った。


「遠慮しなくっていいのに」


 鏡子は残念そうな顔をした。


(まったく彩芽といい野江といいどうして俺をオタクの世界に引きずり込もうとするのか。そんなに話し相手が欲しいのかな)


 そんなこと考えると健一は鏡子のことを少し不敏(ふびん)に思った。


「野江はアニメのこと話せるの彩芽しかいないの?」


「他にもいるよ」


 鏡子はあっさりと答えた。


 この意外な答えに健一は魚のように食い付いた。


「え、誰?」


「それは健一、あんたよ」


 この答えに健一は足に力が入らず転びそうになった。


 しかし、健一は耐えれた。


「なんだ。じゃあ他にはいないのか」


「ま、まあね……」


「言っとくけど、俺にアニメの話をされたってわからないぞ」


「そこは大丈夫よ。健一には買い物とかを手伝ってもらうから」


「はぁ? なんで俺が」


「なによ~彩芽ちゃんの買い物は手伝って、私のはダメっていうの? 仮にもこんなかわいい女の子と一緒に買い物できるっていうんだから少しは喜びなさいよ。それでなくても私の秘密を知ったんだからその罪滅ぼし位をしなさいよ!」

 

 教室で会った頃よりも意味不明で、さらに今度は強引さも加わった。


「罪滅ぼしって……」


「そうよ。だから今度からは手伝ってよ。というか健一が返ってくる前に私と彩芽ちゃんで決めたことだからもう決定したことなの」


(冗談じゃないぞ! ただでさえ彩芽の買い物で俺の自由な時間が削られてるのにこの上、野江まで手伝ったらそれこそ時間が無くなる)


 そう思った健一は長期戦覚悟で鏡子に言った。


「やっぱり兄妹でもないのに手伝うことはできないよ。それに俺じゃなくても彩芽がいるじゃないか」


 と、本当はそう言おうとしたが、「やっぱり」のところで鏡子の声に先を越された。


「私の家この近くだからもういいわ。じゃあ、今度から手伝いよろしく」


 そう言うと鏡子は健一から早々と荷物を取って、早々と帰って行った。


「…………」


 健一の中にはもどかしい気持ちだけが残った。


 その時、健一の気持ちを埋めるかのように携帯にメールが来た。


 それは真悟からだった。


『明日の予定が決まったぞ! 最近隣町にオープンした遊園地のチケットが五枚手に入ったからそこに行くことにする。時間は十時半に駅に集合! 他の二人はこっちで適当に誘っとくから。絶対、時間に遅れるな!』


「遊園地か久しぶりだな」


 健一はさっきのことを忘れるかのように明日のことを考えながら家に帰った。


 



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