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第9話 昔ながらの商店街は少ない

 真悟ん家を出た健一はアニ天までの道を思い出していた。


「確かあそこに行くのは、商店街の小さな路地に入んなきゃなんないんだよな。路地に入ってしまえば後は店まで一直線なんだけど、問題は路地に入る瞬間と出る瞬間だな。これを誰かに見られたら言い訳するのがかなり苦しくなるからな」


 そんな独り言を呟きながら商店街まで来ていた。


 そこには人がたくさんいて、賑わっていた。


「相変わらずここはいっぱいいるな」


 ここにはフードショップやゲームセンターや映画館、さらに近くにコンビニやスーパーなど様々な物がある。


 ここに行くと大抵の物が買えるので、町内に住んでいる人は一度はここに足を運ぶ。


 辺りを見渡した健一の目に遠目からでも誰もが見てしまうような、辰幻高校の制服を着た女の子の姿が映った。何か荷物を持っているようだけど、そのせいで見たのではない単純にきれいだったからだ。


 段々近づくその子は健一も知っている人だった。それは橘楓だった。


「橘さん、何してんの?」


 健一は早速楓に声を掛けた。


「あ、高峰君。わ、私はただちょっと買い物に来ただけです」


 健一に気付いた楓は何故か動揺していた。


「そうなんだ。なにか買ったの?」


 楓が手に持っている荷物に視線を送った。


「こ、これはちょっと色々……」


 楓は慌てて荷物を後ろに隠しながら答えた。


 この楓の反応に健一は、はっ、とした。


「ゴメン、なんか変なこと聞いて」


「いえ、でもこれは下着とかそんなんじゃ、ではないですよ」


 良かったー訊かなくて、じゃあ何を買ったの? と言いたかったけど、自分が間違えて想像した物に恥ずかしくなって訊けなかった。


「ところで、高峰君の方は何しにここに?」


「俺は妹に買い物を頼まれて」


「そうなんですか」


「あの、買い物の後って予定とかありますか?」


「いや、特に無いけど」


「だったらその後私の買い物に付き合ってくださいませんか?」


「え、だって今それ買ったんじゃ……」


「これとは別に買わなくちゃいけない物があるんです」


「そうなんだ。けど、俺が買い物をした後になるけどいいの?」


「はい。多分それ位が丁度良いと思いますから」


 何が丁度良いかこの時健一には分からなかった。


「では、私はいったんこの荷物を家に置いてきます。高峰君の方も終わったら携帯に連絡してください」


 こうして楓はいったん帰って行った。


「さて、俺の方も買いに行くか」


 独り言を漏らすと健一は店へと向かって行った。


 店に行く路地の前まで来ると健一は辺りを慎重に見渡した。


 右、左、もう一度右、さらに背後とまるでサバイバルでもしているかの様に慎重だった。その様子は他人から見たら不自然で怪しかった。


(よし、辺りには誰も居ないな)


 確認した健一は一気に路地へと入って行った。


 無事に入れた健一はほっと一息入れて店を見た。


 店は一目で何が売っているか分かる様なデザインだった。


「はあー、とっとと彩芽に頼まれたものを買ってここからとっとと出よ」


 ため息を吐きながら健一は店の中に入って行った。


 店の中に入った健一は驚いた。


 健一が驚いたのは、内装とかそういうのじゃない。会計の所にいる人物に驚いたのだった。


「あれ?」


 確認するかのように健一はその人物の顔を覗き込んだ。


 この声にその人物も健一に気付いた。


 健一は始め見間違いかと思って見直したけど、見間違いではなかった。


 その人物とは放課後、健一達に嵐を巻き起こした野江鏡子だった。


「や、野江なのか?」


「健一、な、なんであんたがここに居るのよ!?」


「俺は妹に頼まれて……てか、野江の方こそなんでこんなことにいるんだ?」


「わ、わた、私は……。そう私も妹に頼まれて」


 嘘を吐く時は必ず目を泳がす癖がある。


 そして今、野江の目は激しく泳いでいた。


「野江、確か一人っ子って言ってたよな」


「………………」


 この健一の言葉に鏡子は何か言いたそうだったけど言葉が出なかった。


 しばらくの沈黙の後、鏡子が重たい口を開いた。


「け、健一の妹もここで買い物してるんだ」


「ああ、今日は訳あって俺が妹の予約した物を取りに来たんだけどな」


「そ、そうなんだ」


 放課後、強気だった鏡子とは思えないほど声は動揺していた。


「野江もここに買い物に来たんだろ?」


「そ、そのことについてなんだけどその……お、お願いがあるの。今日ここに……その…私がいたことはそのなんて言うかその…秘密にしておいてほしいの……」


 後半、声が小さくなり自分の服を握ったまま俯いていた。


「いいよ」


「ほ、ほんと本当に? 絶対、ぜ―――――――――ったい誰にも言わないでよ」


「い、言わないって」


「さっきいたのにも言わないでよ」


「さっきいた? ああ、真悟のことか。言わないよ。その代わり、条件がある」


「な、何よ。もしかして…今後、健一の言うことには、絶対服従とか。それとも財布をよこせとか。それとも……」


 頭の中では色々な考えが出てきた。


「俺はどこかのチンピラか!」


「そうよね。あんたがチンピラだったら私がボコボコにしてるよ」


 鏡子は笑い飛ばしながら言い終えると、真剣な目つきをした。


「で、条件って何?」


「条件は、この店で俺の妹が買い物をしてることを誰にも言わないこと」


「な~んだそんなことなの。それなら全然大丈夫誰にも言わないから。大体、私はあんたに妹がいるってことは知ってるけど、会ったこと無いからどんな子か知らないもん」


 鏡子は胸を張って言った。


「それにしても野江は何を買ったんだ?」


「なんだっていいでしょ。私が何を買おうと私の勝手なんだから。それより健一の妹はなにを予約してたのよ?」


「さあ、俺も詳しいことは聞いてないからな」


 そう言うと健一は会計の方へと向かった。


「すみません。今日、高峰彩芽が予約しといた物を取りに来ました」


「高峰彩芽様ですね。少々お待ちください」


 定員の女の人はそう言うと奥に引っ込んだ。


 そして商品と一緒に出てきた。


「あ、これか」


「野江これ知ってるの?」


 健一は商品を指差しながら訊いた。


「私も今それと同じの買ったのよ」


 鏡子は手に持っている袋を少し上げた。


「お待たせしました。こちらになります。お会計は8500円になります」


 この言葉に健一の意識が一瞬飛んだ。


 聞き間違いかと思いもう一度、定員に聞いた。


「すみません。もう一度言ってくれませんか?」


「8500円です」


 やはり、聞き間違いではなかった。


 定員は笑顔で答えていた。だが、健一には笑顔が無かった。


 健一の顔は引きつっていた。


「ちょっと健一早く買っちゃいなさいよ」


 鏡子の言う通り健一も早く買いたかった。


 だけど一つ問題があった。お金という問題が。


「野江、お金足んないから1000円貸してくれないか?」


「なんで足んないのよ!」


「こんなにするとは思わなかったんだよ。それに今日はあまり持って来てないし」


「しょーがないわね。今度返しなさいよ」


 こうしてなんとか買うことができた健一達は店を後にした。


「いい健一、素早くこの路地から出て大通りまで行くのよ。誰か知っているのに見られたら一環の終わりなんだから」


 健一は黙って頷いた。


「よし、今よ!」


 この鏡子の声で二人は一気に駆け出し、商店街まで出た。


「はあー、疲れた。あそこに行く時、毎回あんなことしているのか?」


「まあ、ね」


「それにしてもまさか野江がオタクだったとはな」


「健一、オタクって言うな!! 今度言ったらその口を縫い付けてやるから!」


 そう言いながら鏡子は、健一の口をおもいっきり(つね)っていた。


「いででで、ふぁるかったって」


 鏡子が抓っていた所はかなり赤く腫れていた。


「お~いたー」


「オタクって言った罰よ」


「ま、それにしても今日は助かったよ」


「私は最悪だったよ。放課後ぶつかったあの後、数学の遠藤(えんどう)に捕まるしそのせいで遅れるは、健一に店に行ってることがばれるはでもう最悪だよ」


「まあ、そう言うなよ」


 ここで鏡子は少し考えた。


「あ、もしかして健一にぶつからなかったら遠藤にも捕まること無かったし、店であんたとも会うこともなかったんじゃないの。そうよ! 全部あんたのせいじゃない。この責任どうとってくれるの!」


 またもや妙な言い掛かりをつけられ、健一からはため息が出た。


「もういいじゃん。知ってしまったんだから」


「そうよね。おかげで健一とこうして一緒に歩けてるんだから」


 もっと怒ると思ってた健一は意外そうに鏡子を見た。


 健一と目が合い赤めながら、慌てて鏡子が言い直した。


「あ、べ、別に深い意味とかそういうのじゃないからね」


 この時、健一には鏡子が慌てていたのが謎だったが、そんなことはお構いなしに健一は喋った。


「野江、ちょっとお願いがあるんだけど」


「な、なによ」


「俺この後ちょっと用事があるから、この荷物俺ん家まで届けてくれないか?」


「なんで私が………まあ、いいわ。これも人助けと思ってやってあげるよ。それに健一の妹っていうのも見てみたいし」


「見るのはいいけど妹にはただ届けたってことにして、野江は中身知らないっていうことにしといてくれよ」


「わかったわかった。この私に任せときなさい!」


 鏡子はそう言いながら平らな胸がドンと叩いた。


 少し心配値が上がった。


「じゃ頼んだよ」


「でも、このお礼は必ずしなさいよ」


 鏡子は抜かりなく言葉を付け足した。


「はい、はい」




祝!! この小説に初めて感想が来ました。


いぇ~ドンドンパフパフ~


いやー、嬉しくてつい感想を読んだときは、舞い上がってしまいました。


【Spis様ありがとうございます】


他の人からも感想くださると嬉しいです。


次回の更新は土曜か日曜になると思います。それでは

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