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【追跡、こだま317号】  作者: 石田ヨネ
第三章 新富士駅から

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9 ラノベにでも居そうな、あまり特徴のないややM字型ヘア




 そのパク・ソユンが、続けて、

「たぶん、さっきも言ったけど……、何か、変形させる力じゃないの?」

「ま、まあ、それは、そうだと思うけどさ……、大丈夫、なのかい?」

 と、ドン・ヨンファが改めて心配すると、

「さあ……? まあ、大丈夫なんじゃない? その、クパァッ――て、逝ってないし……。それより、ところでさ? ヨンファ?」

「ん、何だい?」


「アンタ? 今、便意はどうなの?」


「――は、っ……?」

 と、間を挟んで返された質問に、ドン・ヨンファが、目を点にした。

 頭上からは――、例の、寄〇獣式に“変形した”、ヒトであったものが、ガサガサ……と、まるでゲジゲジのごとく徘徊しており……

 また、横には、シュシュ、シュシュ……と、ムカデ人間列車が来るとともに、スッ――と隣で減速しつつ、まるで辺りを点検するように、動いていた。

「い、や……? 何……、また、人の便意なんか、確認してんだい……? こんな状況の、この中の中で……?」


※※『トランス島奇譚』より







          (3)



 

「――もしもし? 松もっちゃん?」

 電話はつながって、西京太郎は松本清水子に呼びかけた。

『うい、うい~。調子は、どうなん? 西京?』

 と、松本は返してきた。

「う~ん……? ちょっと、そうだねぇ……?」

 西京は考えるように、外を、少し仰ぎながら見た。

 すると、

「あっ――」

『おっ、どうした?』

「いや、さっきね? 富士山が見えて、実に、良かったんだったんだけど、雪が、ぱらつき始めててね。それで、もう、半分くらい、見えなくなってちゃってね」

『はぁ、』

 と、松本清水子は相槌しつつ、

『富士山ってことは、もうちょいで、新富士駅?』

「うん。ちなみに、ね? 富士山が見えると、得した気分になるんだよ」

『はぁ、何言ってんだ、てめ』

 と、つっこんだ。

 なお、そう話していると、

 ――ヒ、ィィン……

 と、モーターの回転音が低くなり、減速して、新富士駅へと滑り込んでいく。

「あっ、ちょうど、新富士駅に着いたね」

『ほいほい』

 と、新幹線は止まった。

 

 開いたドアと、反対側のドアにもたれかかりながら、西京はそのまま通話を続ける。

『――で? 今のところ、何か、変わったことは、あるん?』

 松本が、尋ねてくる。

「いや……、それが、特に……、まだ、なくてね」

『はぁ、』

「まあ、強いて言えば、熱海のホームでね……、いや、それ以前の、東京駅からかな? アベックの、男性のほうがね、すごい数の、アレは17アイスなのかな――? を、手にしているのを見てね」

『は、ぁ、』

 と、松本が、電話の向こうからでも顔をしかめているのが伝わる相槌をしながら、

『すごい数って、どんくらいよ?』

「うん。たぶん、ひと駅あたりでね、だいたい、少なくて3つ……、多くて5つか、6つ手くらい、食べていると思うんだ……」

『は、ぁ、……』

 と、こんどは、「だから、どうだってんだ……」と、困惑気味に相槌した。


『何? それで、そのカップルたちが異界人だってことの、補強になるって言いたいわけ?』

「うん。そういうことに、なるね。ちなみに、僕と瑠璃さんは、彼らを、冷界人って呼ぶことにしているよ」

『冷界、人……? ああ……』

 松本は合点して、

『まあ、ほぼ、その冷界人ってので、間違いはないだろうな。まあ、ワンチャン、すっげぇアイスが好きな、ただの、一般地球人の可能性もあるけどさ』

「そうすると、キャリーケースに、冷凍庫みたいな機能がついていることになるのかな?」

『うん。たぶん』


 アイスのことに言及するのは、そこまでにして、

「それで、だね……? 彼ら、アベックたちが、冷界人だと確定した仮定でね、」

『うん』

「この、今回の彼らの来訪が、何か、悪意をもったものだとすると、だ――」

『……』

 と、沈黙を少し挟んで、

「いったい? 彼らは、どんなコトを、し得るのか――?」

『……』

「そして、“それ”を、ね? どんな規模で、行うのか……? テロ程度の、ちっちゃい規模から……、もっと大きく、最悪は、軍事的な作戦の規模で」

 と、西京は、やや表情が険しくなりながら言った。

『う~、ん……」

 松本は、考えるように唸った。

 

 ――――

 ――ここで、電話を隔てて、松本たちの居る特別調査課の調査室に、フォーカスを切りかえる。

 松本の調査室には、部下の、ふたりの姿があった。

 カラフルな、ワイルドおかっぱ頭の20代女子の、零泉円子れいぜん・まるこ

 相方の、ラノベにでも居そうな、あまり特徴のないややM字型ヘアの男子、黒桐廉太郎くろきり・れんたろう

「ちょっち、円子ぉ~、黒桐ぃ~」

 松本が、ふたりを呼ぶ。

「は、はぃぃ~!」

「は、はい! 室長」

 ふたりが、ビクッ――! と、なりながら反応すると、

「ちょっち、さ? この部屋でいいからさ? VR室につないで、シミュレーションしてみてくんない」

 松本が、“あること”を頼んだ。

「は、はい」

 と、返事する黒桐と、

「シミュレーションって、いま、西京さんたちが調べているヤツ、っすよね?」

 と、零泉が確認した。

 ちなみに、部下の零泉円子であるが、VR室を使いこなせるオペレーターでもある。

 その際は、顔半分を覆うヘルメットと、某ボーカロイドの袖のようなVRギアを身にまとう。

 なお、今回は、この調査室でVR室につないだ形で簡易的に行うため、サングラス型程度のVRギアだけ身に着ける。


 それはさておき、 

「その、何て、言うんだろね? あいつら、冷界人――、ああ、霊界通信じゃないほうの、冷たいの『冷界』ね。もし、そんな、冷気や雪を操ることのできる、“邪神みたいなナニカ的な連中”が、何か“コト”を起こすとしたらさ? どんな感じのが、想定できるかなって」

 松本は、先の零泉の問いに答えた。

「冷界人、っすかぁ~……」

 零泉が、そのワードを口にしつつ、

「ちょっち、やってみますわ~」

「うい、頼む」

 と、松本は言いながら、うまい棒を2、3本投げてやる。

「あっ、あざ、まぁ~すぅ!」

 零泉は受け取りつつ、コーラのボトルを片手に、シミュレーションを始めた。

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