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【追跡、こだま317号】  作者: 石田ヨネ
第三章 新富士駅から

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8 キンキン、だ……




          (2)



 

 西京太郎は、離席して、デッキへと移動していた。

 ドアの窓ガラスからは、曇天の合間の晴れ間か、白く雪化粧のかかった富士山が見えていた。

 それを見て、

「う~ん、これは、よく見えるねぇ……」

 西京が、感嘆の言葉をあげた。

 ただ、同時に、


「ん、ん――?」


 と、西京は、“あること”に気がついた。

 ちょうど、少し隔てた隣のドアのほうに、奇しくも、例のロシア帽の男の姿があったのだ。

 ロシア帽の男も、

「……」

 と、静かに、富士山のほうを見ているようだった。

 西京は、

「(む、う……)」

 と、なるべく気づかれないように、チラリ――と、男を観察する。

 手には、相変わらず17アイス。

(しかも、ティラミスと、ソーダか……)

 と、西京は、その組み合わせに驚く。

 さらにいえば、先ほどの、熱海からは暫く時間は経ってないか?

 そうすると、多少は溶けているはずなのだが……、チラリーーと見るに、

「(キンキン、だ……)」

 と、確かに、今しがた強力な冷凍庫から取り出したかのように、17のアイスはキンキンだった。


「(う~む……?)」

 西京は、疑問に思う。

 これは、熱海駅を出たあとで、またどこかで買ったのだろうか――?

 あるいは、ワンチャン、キャリーケースの中に、アイスがあるのでは?

 冷気を操ることができると思われる、彼らのことだ。

 それくらいは、やってのけるだろう。

 そのように、思考を巡らせていた。

 その時、


 ――ピ、ィィン――


「(ハッ――!?)」

 と、こちらの視線が気づかれたのだろうか? 西京は、“あちら”からも飛んできた視線に反応する。

「あっ……」

 思わず声が出ながらも、ゆるりと……、少しだけチラ見する。

「……」

 無言の西京。

 その、数メートル先、

「……」

 と、ロシア帽の男と、もしかすると目が合ったように思えた。

 覗くブロンドの髪に、白い肌。

 雰囲気は、北欧の“それ”に見える。

 ただ、どこかチャラけた、陽気そうな空気感をまといながらも、その青く氷のような目は冷たいという、謎の雰囲気が漂っていた。


 そのように、確認しながらも、

 ――フッ……

 と、西京は、目を逸らした。

「……」

 無言のまま、

 ――くる、り……

 と、背を向け、その場をあとにした。

 とりあえず、別の号車のデッキに行くとする。

 このまま、近くには、居ないほうがいい予感がしたからだ。

 まあ、そもそも、これからする電話の、会話を聞かれても困る。

 それが調査対象であろうと、一般人であろうと、調査に関する会話を聞かれるのはNGだ。


 ――そうして、西京は揺れる新幹線の真ん中の通路を通って、別の号車へと移動する。

「(二両分くらい、離れたほうが良いか――)」 

 念のため、すこし余計に移動しておく。

 車内は、座席は半分くらいは埋まっているだろうか。

 途中、車内を警備している、アラフォーくらいの警察の男に会う。

「(お疲れ様です)」

 西京が、声を抑えて挨拶し、

「(あ、あ……、お疲れ様です)」

 と、警察の男は、遅れて気づいた。

 やや草臥れて、そこまでやる気がないようにも見える。

 まあ、異界人――、冷界人などというものを調査してくれという話であり、仕方がないだろう。


「(どう、ですか……?)」

 西京が、いちおう聞く。

「はぁ、そう、ですねぇ……? 特に、これといって、変わったことはないですけど……」

 警察の男が答えつつ、

「ああ……? そう、いえば……?」

「う、ん」

「ちょっと、気のせいかもしれませんが……、何か、アイスを、しょっちゅう、食べているような気がしましたね」

「そう、ですか……」

 と、やはり、アイスのことには気づいているようだった。

 また、警察の男が聞く。

「その……? 本当に、異界人なんですか……? あの、カップルは?」

「うん。これは、わりと、可能性はあるね」

 と、西京が、そう答えながら、

「まあ、彼らが、何かコトを起こす可能性があるというのも……、“僕たち”の、取り越し苦労だと思うけんだけどね。とりあえず、このまま新大阪駅に着くまで、協力をお願いしたい」

「はぁ……、分かり、ました」

 と、改めて頼んだ。


 警察の男との話は終わり、西京は移動する。

 ふたたび、デッキに立つ。

 ――ゴォォォ……

 と、静かながらも、高速で走り続ける新幹線。

「……」

 車窓を見るに、まだ、富士山は見えていた。

 しかし、

「また、雪か……」

 と、再度、雪がぱらつき始めてきた。

 そうしながらも、

「……」

 と、西京はチラチラと、辺りを見回す。

 念のため、アベックたちや、他の乗客がいないことを確認してスマホを手に取った。

 そうして、西京は、丸の内にいる松本清水子に電話をかけた。




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