表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

6 うん。取り急ぎ、ルビィちゃんが好きとかいう、チョコミントを頼むよ


 また、少しの間をはさんで、

「それ、とも……? これから、その、工作活動をしようとする場所を、どこにするべきか――? こだま号で、ゆっくり調べようとしている、とか……?」

 ふと、瑠璃光寺が思いついたように言った。

 それを聞いて、

「……」

 西京が、しばし、ピタリ……と沈黙する。

「たろ、さん……?」

 瑠璃光寺が、声をかけると、

「ふ、む……、そう、だねぇ……? その可能性も、いちおう、考えておこうか」

「い、いえ……、そんな、軽い気持ちで、言っただけですけど」

「いや、いいじゃないか。何事も、いろいろな可能性をね、考えておいたほうがいい」 

「そう、ですか……?」


「だって? もし、彼ら、冷界人――だったかい? ――が、この日本のどこかで工作活動しようとしているけど、“まだ、場所を決めておらず、どこにするべきか迷っている”っていうパターンも、あり得るかもしれないじゃないか」

「はぁ、」

「そうすると、ね? こんな、こだま号なんかで調べるってのは、ゆっくりと調べるには、いいかもしれないんだ」

「まあ、それはそうですね」

 と、瑠璃光寺は同意しながら、

「でも、何って、言うんでしょうか? そんな、悠長というか……、もし、あのふたりが、冷界――でしたよね? ――の、エージェントや工作員だとすると、こちらの世界に来る前に、どこを破壊工作で攻撃するかっていうのは、ある程度、決めているはずですよね? まさか、そんな、ノープランな、」

「まあ、ノープランな可能性も、あるかもよ。それこそ、旅行ついでに、調査して――」

「旅行ついでに、ですか……」

「それで、旅行ついでに、思いついて、破壊工作を実行する――、なんてことも、ね……」

「……」

 と、西京の言葉に、瑠璃光寺は沈黙した。


 そうしているうちに、こだま317号は、熱海駅に着く。

 チラリ――と、アベックのほうを見るに、

「あっ? あのふたり、降りるみたいですよ」

「む、む――?」

 瑠璃光寺が気づいて、西京が目を細める。

「そうすると、この、熱海で、降りるわけか?」

「い、え……、何か、荷物は、席に置いたまま、みたいですね」

「う、む……」

 西京は頷きながら、チラッ……と、腕時計を見て、

「出発まで、10分ほどある、か……」

「です、ね」

 と、瑠璃光寺も、発車時刻と照らし合わせて確認すると、

「僕らも、コーヒーでも買うふりして、少し、追ってみようか」

「は、はい」 

 と、西京と瑠璃光寺のふたりも、ホームのほうに降りることにした。




          (3)    




 そうして、熱海駅のホームにて――

「うっ、さっむ――!」

 瑠璃光寺が、思わず声をあげ、

「うん、これは、寒いね」

 と、西京が答えた。

 確かに、

 ――ヒュォォッー……

 と、少し風がホームを通り抜けつつ、雪がぱらついていた。

 

 また、同じホームの、少し離れたほうにはアベックたちの姿があった。

 そして、

「あっ――! 太郎さん、また、アイスが……!」

「む――!」

 と、ふたりが注目した先――

 17の自販機で買ったのだろうか? やはり、ロシア帽の男は、アイスを大量に持っていた。

「3つ、もしかすると、5つ、持ってるかもしれないです……!」

「何、と……」

 と、瑠璃光寺と西京は、少し驚愕する。

 まあ、人がアイスを3つ持ってようが、5つ持ってようがいいだろうという話だが……

 ただ、相手が、異界の――、冷界というべき異世界から来たと思しき存在である以上、そのようなことにも、注意を払うべきなのだろう。


 そうして、アベックのほうをみていると、

「う、む……?」

 と、西京は、ロシア帽の男のほうが、

 ――チラリ……

 と、こちらを、一瞥したようにも見えた。

 それには、瑠璃光寺も気づいており、

「気づかれ、ましたかね……?」

「さ、あ……」

 と、ふたりは、そこは曖昧にしておく。

 まあ、気づかれないに越したことはないのだが、もし、終点の新大阪まで行くとしたら、4時間ほどと長い間、それなりに近くで観察するわけである。

 ゆえに、どこかで、何か違和感を感じられたりする可能性はあるかもしれない。

 

 そうしながら、

「しかし……、やはり、アイスか……」

 と、何が「やはり」なのか、西京がつぶやいた、

「見てたら、食べたくなりましたね」

「確かに、そうだね」

「冬のほうが、むしろ、アイスを食べたくなるって、本当なんですね」

「みたい、だね。それに、外が寒いからね、コンビニとかで買って帰るにしても、溶けずに、ベストな温度で家まで持ってけて、そのまま、食べれるのは最高だよね」

「あっ、それ、分かります」

 などと、ふたりは話す。

 そこへ、


 ――キィィン……!!

 

 と、新幹線が接近する音が聞こえ、


 ――ゴゴゴゴゴォ――!!


 と、のぞみかひかりか、大きな走行音を立てながら、高速で駅を通過していった。

 その、余韻のように、

 ――ファ、サァァッ……

 と、雪煙が舞う。

 それに、自然に、見入りながら、

「とりあえず、彼らと、入れ替わりで買おうかな」

「ええ。私、買ってきますよ」

「うん。取り急ぎ、ルビィちゃんが好きとかいう、チョコミントを頼むよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ