52 先ほど、ラーメンを食ったからな。せいぜい、【その分の熱量】によって生まれた……、そうだな……? 差しづめ、【ミニ太陽】とでも云うヤツ
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「ど、どゆこと……?」
ジェラート大佐が、困惑した顔で聞いた。
妖狐は、答える。
「だから、言っておるだろう? 別に、好きにすればよい、と――」
「い、いやっ……? だって、君の仲間だろ? あの、ふたりと、」
「え? 仲間じゃないし」
「へっ――?」
とここで、またもや妖狐の思わぬ言葉に、ジェラート大佐が、屁のような「へ――?」の声を出した。
「だって、考えてもみるがいい? あんな、パパ活してそうなコンビと、不機嫌がデフォルトな更年期が……、仲間なわけ、なかろう?」
「は、ぁぁ……?」
と、ジェラート大佐は、ますます顔を歪める。
いちおう、傍から見れば仲間――、少なくとも協力関係にある仲にも関わらず、“パパ活コンビ”だの、不機嫌な“更年期”だのと、めちゃくちゃな言い草である。
そんな、人間性のクソな――、いや、人ですらない妖狐であるが、
「――というか、“そんなもの”など関係なしに、やれるのなら、やってみるがいい? ポンコツ、大佐殿よ?」
と、ドヤ顔で言うとともに、
――スッ……
と、ジェラート大佐のほうを指してみせた。
すると、
「ぐぬっ……!! こ、このッ!! 失礼な、タヌキがッ――!!」
と、煽られたジェラート大佐が、
――ギリッ……!!
と、歯を食いしばる。
そうして、
「じゃあ……? 後悔するなよッ!! この、タヌキがァァッ――!!」
と、ジェラート大佐の身にまとう空気感が変わるッ――!!
同時に、
――バ、シューッ!!
と、降り積もった雪に、衝撃波のような波紋が広がる――!!
すなわち――
雪と、氷を――、【冷気】を司るジェラート大佐の力である!!
ここ一帯の、すべての雪の結晶、粒子を操ることさえ可能でもある――!!
そうして、
――ゴゴ、ゴゴゴォッ……!!
と、雪山から、巨大な雪崩を引き起こさんとした――!!
その時、
「むぅっ――!?」
と、ジェラート大佐は、【何か異変】に気がついた。
同時に、
――ピ、ィィンッ――!!
と、脳内にパルスが走る!!
“それ”が何であるかを、完全に理解したのだ!!
すべての、雪と氷の粒子を操る力――
【それ】が、一切合切ッ――!! 遮断されていることに気がついたのだ!!
「ぐ、ぬっ……!?」
ジェラート大佐が、顔を歪めると、
「――ふむ。気がついたか?」
と、いつの間に移動したのか――? 斜めうしろから、妖狐の、神楽坂文の声がした。
「――!?」
ジェラート大佐が、不意を突かれたように驚きながらも、
「きっ、貴様……、何を、した?」
と、ゆっくりと妖狐のほうを向いて聞いた。
「ふむ。貴様の司る、冷気と、雪と氷……、森羅万象を司ることのできるこの私が、“それくらい”、操ることができぬ――、とは思わなかったか?」
「ま、まさかっ――!?」
「そう……、その、“まさか”、だよん♪」
と、妖狐が、ニコリ――♪ と微笑した。
同時に、
――バシュッ、シュシュッ――!!
と、雪煙が巻き上がる!!
“それら”は蠢くなり、集合し、映像芸術のようなダイヤモンドダストへと変わる!!
さらに、
――スッ……
と、妖狐は腕を、横に伸ばした。
その【掌】の上には、
――ポ、ワン……
と、召喚された、【ミニ太陽】とでも云うべきか――? ソフトボールくらいの大きさの、橙色に、凄まじく明々と輝く【球体】が、浮かんでいた。
その、圧力すら感じる明るさの【ミニ太陽】に、
「ぐぅッ――!? な、何だ!? そいつはッ!?」
と、ムカイが、思わず腕でガードしながら聞くと、
「ふむ。先ほど、ラーメンを食ったからな。せいぜい、【その分の熱量】によって生まれた……、そうだな……? 差しづめ、【ミニ太陽】とでも云うヤツだ」
「「はぁ!? どんな熱量だよッ――!!」
と、ムカイとジェラート大佐が、ともにつっこむ!!
しかし、その間にも、
――ピ、カッ――!!
と、ミニ太陽から生み出される、莫大な光子がッ!! すさまじい熱量がッ――!! 10メートルほどの近距離から放出される!!
それらをさらに、
――カッ――!!
と、妖狐の操るダイヤモンドダストが、微小な【鏡】として複雑に反射させ合い!! ジェラート大佐らへと襲いかからんとす――!!
その光、熱を浴びるや、
「ぐぅぅぅっ……!!」
「うう”ー!!!」
と、ジェラート大佐とムカイが叫ぶ!!
「や、ヤバいッ!! こ、これはヤバいって!!」
「ああッ!! こ、こいつは!! 流石にマズいぞッ!! ジェラート!!」
と、焦るふたりに、
「フハハ――!!」
と、妖狐は、愉快な表情で嗤う。
嗤いながらも、
「それで、だ――?」
「なっ!? 何、だい?」
と、歪む顔で反応するジェラート大佐に、
「――まだ、やるか? 貴様たち?」
と、妖狐は、交渉の言葉を突きつけた。
「い、いやっ……、いいッ!! アイスが溶けちゃうから、いいや!!」
「アイスどころじゃねぇっての!! バカか!! お前は!!」
と、ムカイからつっこまれながらも、
「こっ、こーさんッ!! こーさんッ!! 降参するよっ、タヌキさん!!」
と、ジェラート大佐は、あっさりと白旗をあげた。




