50 君は、【31】派、なのかい? 【17】アイスじゃなくて?
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「ふ、む? 【31】アイスは、無いのか――?」
と、妖狐の神楽坂文は、冷界人のボスこと、ジェラート大佐と対峙していた。
「おや? 君は、【31】派、なのかい? 【17】アイスじゃなくて? でも、そんな、しょっちゅう売ってないでしょ? 自販機とか、で」
と、ジェラート大佐が、【17】アイスを手にしながら言う。
すると、
「ふぅ……、やれやれ……」
と、妖狐は、ため息を交えながらも、
――スッ――
と、“ナニカ”を取り出した。
「なっ――!?」
ジェラート大佐と、
「あん……?」
と、ムカイが、まず声をあげた。
「そっ、それは――!?」
ジェラート大佐が、驚愕してみせながら指さした先――
妖狐の手には、【苺・抹茶・ティラミス】の【ハーゲンダッツ】――
それも、片手でつまんでヨシッ――!! なおかつ、鉄火場で食べるのにも便利な、クリスピーサンド・タイプがものがあったのだ!!
「フッ……」
と、ハーゲンダッツ片手に、妖狐は、【ドヤ顔】をしてみせる。
それを見て、
「うっ、わ……!! マウントとられたし!! ハーゲンダッツがあるからって、【31】アイスも、【17】アイスも興味ないって!! めっちゃマウント取ってる、って!! ムカイ!!」
「あぁ”!? 知らねぇよ!! うるせぇな!!」
と、指さして騒ぐジェラート大佐に、ムカイが苛立った。
そのようにしながらも、
「それで、だ――? この、妖狐の私が来ちゃったからには、OK牧場か? 貴様たち」
と、妖狐が、本題の質問を突きつけた。
「うっ、う~ん……」
ジェラート大佐は微笑しながらも、苦そうな顔で、タラり……と汗を垂らす。
まあ、冷界人も、汗が出るのか――? との、つっこみどころは置いておきながら。
妖狐が続けて、
「まあ、とりま、だ……、貴様たちの、目的を教えるのだ」
「……」
と、ジェラート大佐は、ヘラヘラした表情を苦そうにしながらも、まだ答えずに、続きを聞く。
「今回の件――、貴様たちは、本当に、【東京まで侵攻】するのか? それとも、そうでなくて、何か、【別の意図】があるのか?」
「う~ん……、微妙に、ちょっと嫌な質問を、してくれるねぇ……」
「ぶっちゃけ? 東京まで侵攻は、可能なのか? 冷界人の、貴様たちの力で?」
「あ、あ……?」
と、ジェラート大佐は、
「――まあ、“できる”よ」
と、間を置きながらも、さらり――と答えた。
「……」
と、妖狐が、某チェーンソー男のマンガのキャラのように、【グルグルに渦を巻いた瞳】で、ドヤ顔のまま沈黙する。
なお、ハーゲンの、苺抹茶ティラミスのカラフルなクリスピーサンドを、ちゃっかり口にしつつ。
「ちょっと……、君と、あの【パパ活コンビ】との戦闘に“使っちゃった”から、一時的に、兵力は減ったけどさ……、基本的に、僕らは、ね? これくらいの寒気、豪雪があれば、それを“もと”にして、兵力を短い間に、倍々に増加することが可能だよ」
「もとが……、極低温、氷だからか? 」
「そっ、そゆこと♪」
ジェラート大佐が、妖狐に答える。
なお、【こちら世界】の生化学や分子生物学的には、どういったメカニズムで、【冷界人】たちが、その【身体】を成り立たせているのか――? という点は、さっくり無視しながらであるが。
それはさておき、
「それで、僕たちは、“即座に”叩かない限り、“ある程度の規模”まで拡大したら、さ――? 君たちの、いや、人間たちっていったほうがいいかな――? の通常兵器を使った軍隊くらいじゃ、勝てないくらいになる――」
「ふ、む……」
「それで、【飛び石作戦】だった、かい? そんな感じで、ここから名古屋、静岡と、どんどん東へ勢力を伸ばしていけば……、そう、だねぇ……? たぶん、二日もかからないくらいで、東京まで、占拠できるかもね♪」
と、ジェラート大佐が、冷たい微笑まじりに話す。
しかし、
「それが、もぉ~……」
と、ジェラート大佐は微笑まじりの顔から打って変わり、「やれやれ」と、ため息しながら、
「……」
と、ドヤ顔のまま、ハーゲンを咥えて黙る妖狐。
間を溜めながら、
「――君のせいで、いま、台無しになっちゃうところだよ」
と、ジェラート大佐が、「もう、勘弁してよ」の顔して、続きの言葉を言った。
「ふむ。まあ、仕方がなかろう」
「まあ、ね」
と、「まあ、そう言うな」という妖狐に、ジェラート大佐が相づちして、
「【想定】は、していたことなんだけどね……。西京や、いま、ユキノと戦ってる女の――?」
「ああ、【更年期】のヤツな」
「更年期って、酷っど……! タヌキさ、あっ――?」
と、ジェラート大佐はツッコミながらも、【タヌキ】と言い間違えに気がつき、
「ふむ。次、【タヌキ】と言ったら、しばくぞ? 貴様」
「ご、ごめんごめんっ……! ごめんって、」
と、手をワシャワシャして詫びる。
本題に戻って、
「まあ、【彼らのような異能力者】が、そうだねぇ……? 【20人】近くとかで、自衛隊のバックアップもある状態で来たとかになると、すこし話は違ってくるけど……、そうじゃない限りは、何とかなると思ってたからね」
と、ジェラート大佐は、また、冷たい微笑まじりに話す。
「ほう? 【20人近く】、とな――?」
妖狐が、その数字に反応すると、
「うん。この数の人間、出せるかな? 西京たちの、組織からさ?」
「はぁ、」
「今回の、パパ活コンビが僕らを調査するのを見たかぎり……、よほど、前もって首尾よく準備できてない限り、難しいでしょ?」
と、西京たちの調査から逆算して、ベイズ推定のように言うジェラート大佐に、
「……」
と、妖狐は、すこしドヤ顔したまま、沈黙を保つ。
「……」
と、ジェラート大佐も、意味深に、微笑して沈黙する。
…………
と、すこしの間を挟みながら、
「まあ、それは置いといて、さ……?」
「う、ん……?」
と、注目する妖狐に、
「そこへきて、彼らに、妖力を貸しているんだっけ――? そんな、【ドラえもんみたいな君】が、来ちゃったわけだから、さ? まいっちゃったよ♪」
と、ジェラート大佐が、【まいっちんぐ】のジェスチャーをして、ヘラヘラした困り顔をする。
その、ジェラート大佐に、
「ふむ」
と、妖狐は相づちして、ひと呼吸おきながら、
「――では? どうする?」
と、聞く。
「そう、だねぇ……?」
ジェラート大佐は、顎に指をあてて考える仕草をしながら、
「――じゃあ? とりあえず、手合わせしてみよっか――♪」
と、ニッコリ――♪ と嗤った。
それを合図に、
――ジャッ、キッ――!!
――ジャッ、キッ――!!
――ジャッ、キッ――!!
――ジャッ、キッ――!!
――ジャッ、キッ――!!
と、一斉に!! 数多の砲口が――!! まるでマンガのように妖狐へと向けられる――!!
続けざま!!
――ド、ォォンッ――!!
――ド、ォォンッ――!!
――ド、ォォンッ――!!
――ド、ォォンッ――!!
――ド、ォォンッ――!!
と、まるで火のように!! 雪煙やダイヤモンドダストを噴く――!!
その、火力というか、極低温の力――!!
例えるなら、ハワイの吹き出し流れる溶岩をッ!! すべて冷し!!凍りつくしかねないほどのものであるッ――!!
そんな、【手合わせ】どころでない総攻撃の様子を見て、
「おいおいっ? こんな、手当たり次第の、一斉攻撃……、ドラゴンボールなら、【効いてないフラグ】だぞ?」
と、まあ、どこで知ったのだろう――? ムカイが言った。
「でもっ!! もう、こうするしかないじゃん!! 相手、妖狐だよ――!?」
ジェラート大佐が、ヘラヘラ顔ながらも、半ばヤケクソ顔まじりに訴えた。




