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【追跡、こだま317号】  作者: 石田ヨネ
第七章 決着、解決へ

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45 ドラえもんのいる『大長編ドラえもん』と、ドラえもんのいない『大長編ドラえもん』くらいの違いがある


 また、ジェラート大佐が、

「まあ、あんだけ……、首都が、廃墟になって、焼け焦げたとはいえ……、まだ、充分な守備力を残していたというからね。それが、“僕ら”に対しての戦いと共通するか分からないけど……、よっぽどの異常気象で、大豪雪にでもならない限り、箱根あたりから、首都を攻め落とす――、地下鉄まで氷漬けにして、23区を壊滅的に雪に埋もれさせる――」

「……」

「――っていうのは、やっぱ、難しいよね」

「だろう、な……」

 と、ムカイが相づちした。

 ジェラート大佐が続けて、

「――で、いま、関ケ原で試している途中に、さぁ……、これ、もう、妖狐が来ちゃっているからねぇ」

「ああ……。少なくとも、“近くには”、いるだろうな」

 と、ムカイとともに、妖狐の存在を確認する。

「少なくとも近くには」と言ったように、姿こそ現さないものの、妖力を遠隔で以って、自分たちを簡単に潰しにかかれるのかもしれない。


「はぁ~っ……」

 ジェラート大佐は、ため息まじりに、 

「人間たちだけ相手にするんだったら、ほんと、何てことなかったのになぁ……」

「そりゃ、そうだろ」

 と、ムカイが答える。

 そう、である――

 対、異界人――、それも、極低温の力を司る冷界人の自分たちに対して、簡単に対処できる者は少ないだろう。

 仮に、自衛隊が動いたとしても、陸上相手であれば、この大豪雪から、こちらの砲弾数、火力――まあ、極低温の砲弾であり、火力という言葉は違和感を感じるが――は圧倒的に勝る。

 また、航空戦力を相手にしても、広大な雪雲を操り、それを以って、簡単に無力化撃墜することも可能である。

 ゆえに、数千から数万の軍事力を動員しても、自分たちの、岐阜、名古屋への進攻を止めることはできない。

 強力な寒気と大豪雪、さらに、それに自分たちの力が相乗的に加わることで、より“それらの力”は増し……、また、自分たちの兵力も倍々に増大していくことになる。

 そして、そのまま数日かかるか、もっと短くて一日程度で、関東、東京に迫るだろう。

 その目論見を、簡単に崩してくれているのが、いま、西京たちの背後にいる妖狐である。

「まったくぅ~……、この、妖狐が“いる”のと“いない”のじゃ、ドラえもんのいる『大長編ドラえもん』と、ドラえもんのいない『大長編ドラえもん』くらいの違いがあるよねぇ」

「何だよ? ドラえもんのいない『大長編ドラえもん』って。いなけりゃ、もはやドラえもんじゃねぇだろ」

「いや、たまに、あるじゃないか? 途中から、ドラえもんが離脱しちゃって、のび太君とジャイアンで何とかしなきゃいけないハメになる展開、とか」

「あぁ”? 何で、のび太と、ジャイアンなんだよ?」

「いや、いざって時に、力を合わせるんだよ、あのふたり。心の、友達だからね。ムカイと僕も、心の友だよね♪」

 と、ジェラート大佐がニッコリして聞くと、

「ちっ、てめぇを友達と思ったことなんざ、一度もねぇぞ」

「あん、ひどぅい~」

 と、ムカイに冷たくあしらわれ、変な声を出す。


 気を取りなおして、ジェラート大佐が、

「まあ、とりあえず――」

「……?」

 と、振り向くムカイに、間を置いて、

「君と僕で……、妖狐が来たら、何とかしよう」

「ま、あ……、そうするしか、ないだろうな」

 と、ふたりは一致して、ホワイトアウトする雪原の先を見た――

 ――――

 ――


 ――と、またここで、リアルタイム的に場面は変わる。

 こんどは、山の下から上へと――

 雪山に、シモヘイヘ・スタイルので潜む女室長、松本清水子へとフォーカスする。

 今しがた、

 ――ザワ、ザワ……

 と感じた、何か、第六感にも似た違和感に、


「う、ん――?」


 と、松本は反応しながら、身構えた、

 何か、嫌な予感がする――

 なお、その【予感】というのは、普段から対邪神だったり、怪人、異界人関係の調査を行っている特別調査課の人間であるゆえ、一般人が感じる“何かの予感”よりも、はるかに当たる。

 まあ、一般人の、第六感的なものでも、“単にスピって勘違いしている時”もあるのだろうが、以外と当たるものなのかもしれない。

 まあ、こればかりは、“現代科学とオカルトとされている事象を橋渡しするようなもの”の発見を待つところであるが……

 それは、さておき――

 状況を、整理する。

 そもそも、狙撃してから数分、10分は経ってないものの、この時間というのは相手にとって、何かの動きを起こすには充分な時間だろう。

 長すぎず、短すぎずの、微妙な経過時間――

 この間に、何もなければ、こちらが油断してしまう可能性がある。

 そして、この油断しかける時というのが、危険である。

「……」

 松本は、警戒する。

 それと同時に、


『おい、更年期――』


 と、無線から妖狐の声がした。

「あぁ”? だから、更年期やめろって。こr――」

 松本がキレ芸のように、「殺すぞ」と言いかける、その時、

『――来るぞ』

「ああ……、分かって――」

 と、まさに、松本が答えようとするのと同時、


 ――ザザ、ザザザ……!!


 と、もうすぐそこまで!! 脅威は迫っていた――!!

 ――――

 ――


 ――と、ここでまたしても、すこしだけ時間軸はズレながらも、マンガのコマ演出のように場面は変わる。

 ジェラート大佐とムカイは、もし妖狐が来た場合、「いっしょに、何とかしよう」ということで、一致していた。

「とりあえず……? 妖狐のヤツが来たら、どうする?」

 ムカイが、雪原のほうを見たまま聞いた。

 片手には、ジェラート大佐からもらったのか、17アイスをタバコのように持ったまま。

「そう、だねぇ……?」

 ジェラート大佐が、天を仰いで考える。

 こちらも同じく、先ほどとは別のアイスを手にしながら。 

「いったん、進攻の手を止めるか?」

 ムカイが聞き、

「うん。さすがに、ね」

 ジェラート大佐が、答える。


「まあ、そのうえで……、妖狐ってヤツが、どれだけの力を持っているのか――」

「何か、噂によると、さ? 僕たちの能力が、別の世界で、多かれ少なかれ弱くなるように……、なんか、タヌ――、妖狐? ああっ……! もう、タヌキでいいんじゃないかな?」

「はぁ、」

 と、ジェラート大佐は、タヌキを妖狐と訂正するのが、億劫になる。

 まあ、間違わなければいいのだが。

 また、ジェラート大佐が、

「その、タヌキさんも、さ――? その妖力っていうのは、基本は、弱体化するらしくて、ね。ジャンプの、マンガみたいに、インフレみたいに強くなるんじゃなくて、基本は弱くなる方向で時間の矢が進む、って」

「ほ、う……」

 と、ムカイが、チラリ……と、ジェラート大佐のほうを見る、

「――だから、まあ、何とかなる可能性は、あるとしてさ?」

「まあ、それには、あんまり期待しないほうがいいぞ」

「うん。分かってるよ」

 ジェラート大佐は、ここは、ヘラヘラするのを抑えながら、

「――で、そのうえで、さぁ? “狙撃してくるの”までいるってのは、さすがに、勘弁だからさ?」

「ああ……、鬱陶しいかもな。そっちは、片付けてもらいたいな」

 と、同意するムカイに、

「でしょ――?」

 と、ジェラート大佐は、振り向いて言う。

 ひと呼吸ほど、間をおいて――

 ジェラート大佐は、すこし顔を上げて、



「だから、頼むよ――♪」 



 と、雪山のほうを向くなり、ハンサムな顔で、ニコリ――と魅力的に微笑して言う。


「ユキノ――、君の力を、魅せてよ――♪」


 と――

 ――――

 ――


 ――とここで、ほぼ同時に場面は変わる。

 ふたたび、雪山の上のこと――

 妖狐と、無線を交わす松本は、

『――来るぞ』

 と、妖狐の言葉ののち、

「ああ……、分かって――」

 と、そこまで返答の言葉が出かかった――、その刹那――!!


「よッ――!!」


 と、松本が発声したと同時!!


 ――ザッ――!!


 と、斜め後ろから現れた黒い影――!! 

 刹那の瞬間にこちらに向けて構えられる重火器――!!

 そしてッ!!


 ――ド、ォォォンッ――!!!!!


 と、松本のすぐ眼前で!! 火ッ――!! ――ではなくダイヤモンドダストのような氷煙が吹く――!!

 それを、

 ――シュッ、タッ――!!

 と、松本は、まさしく鬼神というか化け物レベルの反射で回避する!!

 すぐ後ろで、


 ――ゴ、ォォンッ――!!!!


 と、砲弾が炸裂し、氷の花火を裂かせる中――!!

「くっ――!!」

 と、松本は咄嗟に、スコップを手にして構える!!

 その松本の眼前――!!

 雪山の、白一色の中、


 ――ゆ、らぁっ――


 と、黒い影が姿を見せる。

「……」

 と、冷たい目を向ける黒い影の者――

「う、ん――?」

 と、松本はスコップで迎撃態勢をとりながらも、目を見開いた。

 対戦車ライフルのごとく――、バカでかい重火器を軽々持ちながら、開眼しながら距離をつめる影の者――!! 

 すなわち――!! 

 黒づくめの女ことジェラート大佐の秘書、ユキノが姿であった!!

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