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【追跡、こだま317号】  作者: 石田ヨネ
第七章 決着、解決へ

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44/53

44 もっと、微妙な駅から出発して、東北とか、別の方面から攻めたほうが良かった


「ろっ、とぉ……?」


 松本は、思わずひとり言が出た。

 こんなことを、いま振り返っている場合ではないと、ハッ――と、我に返ったように。

 ただ、起きたことを――、そして、今置かれている状況は、整理する必要がある。

 先ほどの、ジェラート大佐に対して行った、狙撃のこと――

 ほぼ同時に、そして、精密に撃ち返されたということは――? で、ある……

 いま現在、先ほど狙撃を行った地点からは少し離れ、遮蔽された場所にいるとはいえ、自分の存在と、おおよその位置というのは、ジェラート大佐と側近の女にバレているわけである。

 そこから、次に予想される敵の出方は――?

 さらなる、砲撃をしてくるのか? 

 それとも、彼らの兵隊だったり、軍用動物……、はたまた、ドローンのようなものでも用いて、奇襲してくるのだろうか?

 いちおう、それらが来て多対一になったとしても、妖狐の妖力で“浮遊体”――例えるなら、昔のシューティングゲームで、自機の周りにいる、自動的に攻撃と防御を行ってくれるアレをイメージすればいい――を以って、防御、迎撃できなくはない。

 しかし、それでも、

「……」

 と、松本は無言で、すこし険しい表情になる。


 ――ザワ、ザワ……、ザワ、ザワ…… 


 と、半ばホワイトアウトする雪山から、“何か”、第六感のように感じるものがありながら――

 ――――

 ――



 ――とここで、場面は変わる。

 まるで、マンガのように、ほとんど同時進行的な切り替わりで。

 ふたたび、雪山の下のこと、ジェラート大佐へと、フォーカスする。


「はぁ~……。しっかし……、予定が、狂っちゃたなぁ……」


 と、ため息まじりに、「まいったなぁ」との顔をしたのは、まさにジェラート大佐であった。

 その横、国鉄制服を軍服のように着こなす、向井金太郎ことゴールデン・ムカイが

「まあ、タヌ――、違うか……、“妖狐とやら”が来たからには、仕方ないだろな」

 と、ジェラートを宥める。

 彼、ムカイも、タヌキと言い間違えながら。

 それはさておき、

「まあ、そうなんだけど、さぁ……」

 と、ジェラート大佐は肩を落としながらも、

「まさか、来るとは、思ってないじゃん……!! ふ、つうッ!!」

 と、先ほどの、大佐としての威厳のある佇まいは、どこへやら――? 嫌になって、半ばヤケクソになった時のような、情けないテンションになってしまう。


「まあ、妖狐ってのが……、何か、こっちの世界の――、人間たちに協力して、調査ごとを行っているっていう情報はあったけど、な? それが、よりによって、“お前の時”に来るとは、運が悪いな、お前も」

 ムカイが宥めると、

「だろぉ!!」

 と、ジェラートは、「同情してくれ」のリアクションする。

 なお、“お前の時”と云うからには、そうでない別の者が、今回のような侵攻を企てることがあるのだろう。

 続けて、

「それに、たぶん、何だっけ……? あの、パパ活してそうなふたり?」

「パパ活してそうって、めちゃくちゃ言うな、お前」

 と、西京と瑠璃光寺について話をしようとするも、名前が出てこなくなる。

 そのまま続けて、

「あ、あ……? そう言えば、西京と、瑠璃光寺だったよね? 彼らの、名前」

「ああ……」

 と、ジェラート大佐は思い出して、

「まさか、同じ、こだま号に乗ってくるなんて、思ってないじゃん」

「まあ、偶々(たまたま)じゃ、ねぇのか?」

「いや、流石に、それは薄くないかい? アレじゃ、ない? 妖狐から、僕たちの情報を得たとか」

「妖狐から、ねぇ……」

 と、ムカイが相づちし、

「まあ、僕たちに関する、詳しい情報は分からなくても、さ? 少なくとも、何者かが、こっちの世界に来たくらいはわかるじゃん? 妖狐にとっては、それぐらいのことは?」

「まあ、そうだろうな」

「それで、西京たちの、特別調査課――だったかい? 東京駅の近くに、あるじゃん? だから、こんなにもすぐに……、なおかつ、ピンポイントに、僕たちの乗っている『こだま317号』まで来て、さ? 調査できているんだろうね」

「フン、そんな、東京駅から出発するからだろ。もっと、微妙な駅から出発して、東北とか、別の方面から攻めたほうが良かったんじゃねぇか? それか、俺と、二手に分かれて」

「う~ん……、そうすれば、良かったなぁ……」

 ジェラートが、「あっ、ちゃぁ~……」と、詰めが悪かったなと言いつつ、

「まあ、“今回は”……、別に、いっかぁ……」

「まあ、な――」

 ふたりは、意味深に、言葉を交わす。 


 また、ひと呼吸ほど間をおいて、

「計画では、さぁ……」

 と、ジェラート大佐が話す。

「どこか、“足がかりとなる場所”を、陣取る――」

「……」

 ムカイが、チラリ……と見ながら、黙って耳を傾ける。

「そこから、強力な寒気と、莫大な量の雪から、倍々に兵力を増強させる――」

「……」

「“それ”を以って、例えば、米原・関ケ原からであれば……、まず、近くの関西、名古屋に向けて、攻撃を行う。強烈な降雪と、砲撃によって凍りつき、機能不全に陥る名古屋を占拠し……、そこを、また“足がかり”にして、さらに東へと進攻する――」

「……」

 と、ここまで、ムカイは聞いて、

「熱海とか、箱根とか……、あの辺じゃ、ダメだったのかよ? 東海道、方面だと。いちおう、多少は、雪は降るだろ? あの辺は、」

 と、逆に質問した。

「まあ、そうだけどさ……、それでも、足りないと思うよ」

 ジェラート大佐は答える。

「そう、か」

「うん。何だかんだ言って、さ? 東京、関東平野って、守りが硬いからねぇ~」

「まあ、帝都だったしな」

「うん。第二次世界大戦でも、米軍が、本土上陸の作戦をいくつか考案していたんだけどね……。その中でも、関東平野に上陸して、東京に進軍するって計画も、あったんだけど……、さすがに、関東平野から、東京を攻めるのは、キツそうだねって、話になったらしくてね」

「まあ、その前に、戦争終わっちまったけどな」

 と、ムカイが、言葉をはさむ。

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