43 元祖スターウォーズのハンソロだったか――? のような姿で、カッチンカチン――に、氷漬けにされて
(2)
場面は、変わって――
松本が、シモヘイヘのように潜む雪山の上から、下へ。
――ヒュ、ゥゥッ――!!
と、雪煙を巻き上げるように、風が吹きぬけていく。
雪が、もう2メートル以上は積もってしまい、関ケ原の新幹線の線路は、まるで雪原のようになってしまっていた。
新幹線の車両も、すでに3分の2か――、もしくは、それ以上が雪に埋まっていた。
その新幹線の屋根にも、こんもりと雪が積もっており、車両と線路との境界が消えかかる。
なお、雪の下には、停電しているのかどうか定かではないが、高圧電流の架線があり、要注意であるが。
まあ、人間ならまだしも、ジェラート大佐たち冷界人が、それで感電するかは不明だが……
そんな中、
「……」
と、新幹線の上、ジェラート大佐は考える。
こだま号の旅のときの、ヘラヘラしていた時とは違い、さすがに大佐という肩書だけあって、動じることのない冷静な目で、この関ケ原の戦況を見ていた。
ただ、その手には、さきほどでスイカバーは無くなってしまったのか、17アイスがあったが……
それはさておき、ジェラート大佐の思考に、フォーカスしていく――
さて、どうしたものか……?
想定外のことが、起きている、か――、否、厳密にいえば、想定はしてなくはない。
先ほどの、狙撃――
“これ”については、まだ、どうでもいい。
狙撃を行なったのは、妖狐ではないことは、確かである。
まあ、西京たちの仲間――、人間だろう。
“それ”に関しては、まったく問題は、無い。
問題、なのは、
「やっぱ、タヌ――、ろっとぉ……? キツネさん、かぁ……」
と、ジェラート大佐は、思わず言葉にしてみた。
なお、彼も、キツネというべきところをタヌキと言いかけてしまったので、“この言い間違い”というのは、もうデフォルト的なものなのだろう。
まるで、ドラえもんのことを、タヌキと呼ぶように。
それはさておき、本題に戻る。
ジェラートは、妖狐という存在が居ることを、こちらの世界に来る事前には、知っていた。
弱体化したといっても、大長編のドラえもんの秘密道具のようなことをやってのける、充分にチートクラスともいえる妖力。
冷界人である自分たちを以ってしても、その力は、恐るべきものである。
その妖狐が西京たちの側について、こちらに来ているのというのは、ほぼ確実であり、それに対しては、当然ながら注意の大半を払わなければならない。
そうでなければ、西京たち――、人間たちのみであれば、とっくに氷漬けにするかどうにかして、もう片付いているだろう。
もしかすると、“自分たちの側”に取り組んで、捕虜、兵隊としてやっているかもしれない……
そこまで、思考を整理していたところ、
――ザ、ザッ……
と、雪の音がした。
ジェラートは“そちら”へ振り向くなり、
「あっ――? ム、カイ~! お、そぉ~い、って!」
と、「もぉ~!」とオネエのように、ふざけて言ってみせる。
その、ジェラートの先――
そこには確かに、何か昔のレトロな軍服のような雰囲気になった、国鉄時代の制服を身にまとったムカイの姿があり、
「ああ”? うる、せえな」
と、嫌そうに顔をしかめながら、こちらにやってきた。
ムカイが、ジェラートのそばに立つ。
「おい、戻ってきたぞ」
「うん♪ ありがとー♪」
改めて告げるムカイに、ジェラートは礼を言った。
******
ここで、また場面は変わる。
また、下から上へと――
新幹線の埋もれる、東海道新幹線の関ケ原近辺の線路を見下ろす、雪山の中腹にて。
室長、松本清水子であるが、
「……」
と、ジッ……と、無言で、シモヘイヘまがいに雪に身を隠しながら考える。
しっかし、何だったんだろうか――?
先ほど、連中の頭である、ジェラート大佐とやらを狙撃してはみた。
まあ、案の定、異界人の彼らに相応しいというべきか――? 狙撃したのを、あろうことか――? 軽く、避けてみせられたが。
まあ、その代わりにといってはアレだが、彼の持っていたスイカ・バーに大穴を開けてみせたのだが……
ただ、それよりも驚くべきなのは、彼の、秘書なのだろうか――?
隣にいた黒づくめの女から、ほぼ同時と思わせる速さで――!! それも、対戦車ライフルのようなバカでかい重火器から!! 精密かつ、恐ろしいほどの速射で反撃が返って来たのだ!!
さらには、その反撃を合図として、彼らの砲兵からも、即座に砲撃されたわけである。
まあ、それは、何とか回避することはできたのだが……
そうでなければ
「……」
と、松本が、チラリ……と見た先――
そこには、まるで、“花火を爆破したのを凍らせた”かのように――!! 滴り枝垂れるように!! 砲弾が炸裂した一帯が、つるっ、つるにッ!! 完全に凍りついていたのだ!!
もし、“それ”が直撃してしまえば、元祖スターウォーズのハンソロだったか――? のような姿で、カッチンカチン――に、氷漬けにされてしまっていたことだろう。
まあ、この、タヌ――、妖狐が具現化した戦闘スーツがあるから、ある程度は防げるのかもしれないが……
ちなみに、この戦闘スーツのことである。
まるで、初期ドラえもんに出てくる秘密道具『電光石火』のような力が、鼻くそレベルででも備わっているのか――? いざという時に、速く動けるという。
着て、実際に動いて見ても、“その実感”はある。
まあ、そうでないと……、こんな、たかだが一般異能力者ひとりが、雪と冷気を味方にしたジェラートたちに太刀打ちなどできないだろう。
戦闘になった際、雪に足を取られて、すぐに積んでしまうかもしれない。




