39 すこし港区のラウンジ嬢のようでありながらも
(4)
――ゴゴ、ゴゴゴ……!!
と、雪の積もる森の中――
緊張感が、さらに高まる。
西京太郎と瑠璃光寺玉のふたりであるが、
「「……」」
と、無言で、張りつめた表情をしていた。
それは、まるで、漫画に描かれる、汗がしたたりそうな表情で。
立ち往生した新幹線からの脱出と、ジェラート大佐らの兵隊および雪・氷でできた軍用動物などとの戦闘。
多勢に無勢ながらも、何とか持ちこたえていたところ、これまでの兵隊とはレベルの違うムカイが登場し、ふたたび状況は不利になる。
ゆえに、ふたりがそのような表情をするのも、無理はない。
「るりさん……」
「はい……」
ふたりは、“それ”だけの言葉をかわる。
まるで、以心伝心――
そして、次の瞬間!!
――ザザ、ザザザ!!
と、西京と瑠璃光寺は、スタートダッシュを切るかのように動く!!
そして、数十メートル先の、木々の間隙から、
――ゆ、らッ――!!
と、軍服を思わせるような運転士姿で、ムカイの姿が現われるなり、
「「――!!」」
西京と瑠璃光寺の目が開く。
その時には、もうすでに、
――ジャ、キッ――!!
と、運転士姿のムカイは、ライフルを構えており
――パンッ!! パーンッ――!!
と、こちらに向かって速射を見舞う!!
熱を奪う、ほぼ絶対零度の弾丸――!!
その数発が、西京と瑠璃光寺のふたりを正確無比に狙う!!
それを、ほぼ寸でのところで、
「ッ――!!」
「くっ!!」
と、ふたりはほとんど超人的な、第六感とでもいうべ反応で!! ギリッ、ギリのところで回避する!!
だが、避ければ終わりというわけではなく、
「ぐっ――!?」
と、降り積もった雪やら、元からの地形だったり、隠れた雪の下の障害物のせいか? 西京をもってしても、バランスを崩しそうになる。
「た、太郎さんッ!!」
瑠璃光寺は、とっさに西京を気にしながらも、
「あッ――!?」
と、数十メートル先の、動くムカイに気がついた。
その次の瞬間には、
「――!!」
と、早撃ちするがごとく!! 銃口をムカイに向け、
――ズキューン!!
――ズキューンッ!!
と、ムカイがこちらに撃つよりも速く!! 先ほどのお返しのように反撃を見まう!!
この身のこなしも、すこし港区のラウンジ嬢のようでありながらも、流石は特別調査課、西京の相方とでもいうべき能力である。
しかし、眼前の向こうでは、
「シュッ――!!」
と、ムカイのほうも鬼神のような身のこなしであり!! それすらも交わしてしまう!!
「す、すまんッ!! るりさん!!」
「い、いえ!!」
西京が、すこし雪に塗れながらも起き上がり、詫びながら体勢を整える。
そうして、すぐに戦闘態勢をとりながら、
「おそらく……、また、間を空けて、仕掛けてくるだろう」
「で、ですよね」
と、ふたりは言葉をかわす。
森というか山の入り口の、樹々の間隙や、地形の死角――、
それらの中に潜り込むようにして、次に、どこから仕掛けてくるか分からないようにするのだろう。
いつ仕掛けてくるかわからないというのが続くことが、緊張感と、その緩みによる油断をもたらすのだろう。
そうであるから、西京と瑠璃光寺のふたりも、同様に雪の森の中に姿を隠そうと思うも、その暇は無かった――
そうしようと思うよりも前に、ムカイの登場によって忘れかけていた、雪や氷の雑兵たちが、
――ザザッ……!!
――ザザッ!!
と、姿を現した。
「むぅ――!!」
「あっ――!!」
西京と瑠璃光寺のふたりは、これには、すぐに反応する。
とっさに確認できたのは、数人というか数体、10体の兵士たち。
しかし、その間から、
「「「ハッ――!!」」」
と、ふたたび!! 操られた乗客乗員たちで編成された、雪合戦部隊が現れ!! 雪玉の投てきを見舞わんとする!!
そうして、
――バ、シュッ――!!
――バ、シュッ――!!
――バ、シュッ――!!
と、ややタイミングをずらし!! 追尾するかのような雪玉が襲いかかる!!
「くっ!! 勘弁してほしいね!! これは!!」
「わ、わっ!!」
ふたりは、わずかに避けれる空間のスペースを瞬時に判断しながら、何とかかわす!!
そして、
「ふ、んッ――!!」
「はッ――!!」
と、ふたりは避けつつ同時に!! 銃を構えて、彼らの急所でないところを狙い、
――ズキューン!!
――ズキューンッ!!
と、撃ち返す!!
すこし離れたところからは、
「ぐわッ!?」
「ぐぉぉ!!」
などと声が聞こえ、こちらのほうも無力化していく。




