32 昔、ひと昔前のドラマは、何故か海の崖ちかくというのが多い
(1)
「――私は、ジェラート大佐だ」
と、まるでCMのあとのように、ジェラート大佐のセリフから、場面は関ケ原のほうへと戻る。
「「じ、ジェラート大佐――!?」」
と、微妙にダサさを感じながらも、西京太郎と瑠璃光寺玉のふたりは驚愕してみせる。
そうして、雪に半ば埋もれる“こだま317号”と、その反対には少し距離を置いて、新大阪・京都からきた“のぞみ号”との間にて――
西京と瑠璃光寺のふたりと、ジェラート大佐と秘書の女、そして向井金太郎ことゴールデンムカイの冷界人の三人が対峙する。
「た、たろさん……」
瑠璃光寺と、
「ああ……」
と、西京は警戒する。
たったの短時間で、いまの状況を作り出したという、恐るべき能力を持つジェラート大佐ら、三人の冷界人。
それだけでなく、冷界人の三人の後ろには、操られた乗員乗客、それから、雪からつくり出した兵士や兵器などが控えているという、戦力的には多勢に無勢――
「……」
と、西京はジッ……と、ジェラート大佐たちから目を離さない。
いざやらなければならない時は、やるしかなく、西京は覚悟を決めてはいる。
対するジェラート大佐も、陽気なヘラヘラ顔ながら、
「……」
と、冷たい目で、隙も油断も作ることもなく、西京と瑠璃光寺のふたりをジッ
……と見て放さない。
そのようにしながらも、
「……」
と、西京は無言で、汗がにじむような緊張を耐えながら考える。
このまま、冷界人たちと一触即発するのか――?
もしくは、何か、交渉だったりして……、少しでも時間を稼いだり、隙をつくることができるか?
まあ、交渉はできなくとも、ジェラート大佐ら冷界人たちが、何をするつもりなのか? その目的は何か? というのは、聞いてはみたかった。
まるで、刑事モノのラストで犯人と対峙する時のように(昔、ひと昔前のドラマは、何故か海の崖ちかくというのが多いが……)。
そう、思考していると、
「おっ、と……? もしかして……? 質問、したいことがあるよね? この流れ」
と、それを察したのか? 勘がいいのか、ジェラート大佐が西京に聞いてきた、
「ま、あ……」
西京が、少しの驚きとともに頷いた。
「たぶん、僕たちが何者か――? で……、そして、何故? このようなことをするのか――? を、でしょ?」
ジェラート大佐が、確認するように聞いて見せる。
「……」
西京は、こんどは驚きとともに大きく目を開いた。
まるで、自身の思考を読み取られたというか、あるいは、先取りされたように感じる。
まあ、冷界の軍の組織がどうなっているのかは分からぬが、いちおう“大佐”との階級であり、相応には優秀なのだろうと、敵ながら感心するところであるが。
本題に戻って、
「いいよ♪ 答えれるところは、答えるよ♪」
ジェラート大佐が、平素のヘラヘラ顔で微笑して言う。
その傍ら、
「大佐、」
と、秘書の女が注意するように言い、
「そうだよ。わざわざ、答えるなよ。今のうちにでも、あいつらを攻撃するべきだろ、普通は」
と、ムカイも同調するも、
「ま、まあまあっ、だって? マンガとかじゃ、セオリーじゃない? 解説みたいに、答えてあげるのが、さ?」
と、ジェラート大佐は、相変わらずヘラヘラして二人に言う。
「は、ぁ、」
秘書の女が、冷たい目のまま、思わずポカンとして相槌する。
その横で、
「はぁー……」
と、ムカイが、露骨に呆れた溜め息をしながら。
話を進めて、
「――てことで、さ♪ 答えてあげるけど、先に、君たちのことかな? 軽く、教えてよ♪ まあ、たぶん……、僕たちみたいな、邪神だったり、謎の存在を調査する機関か、部署ってとこでしょ?」
と、ジェラート大佐が断りつつ、先に聞いてきた。
「まあ……、そういうところです」
西京が、まず、それだけ答える。
続けて、ふたたび、
「あっ、そうだ! 君たちの名前も、教えてよ♪ 差し支えなければ、さ? ファーストネームだけでいいけど」
と、ジェラート大佐がヘラヘラしながらも、少しの申し訳なさそうな顔で聞いてきた。
「た、太郎さん、」
瑠璃光寺が、「大丈夫なんですか?」と、心配する顔で聞くも、
「まあ、これは、いいんじゃないか? 警察の、特別調査課の西京太郎だ」
西京は、ここは、さっさと話を進めたく名乗る。
それに倣って、
「同じく……、瑠璃光寺、玉です」
と、瑠璃光寺も、すこし渋りながらも名乗った。
「あっ、りがと~♪ 西京と……、るりちゃん、ね♪」
ジェラート大佐が陽気な様子で、ちゃんと礼を言う。




