21 まあ、他に気にするべきことが絶対にあるだろ、という話であるが
「――それで? その……、岐阜羽島駅が、政治駅っていわれるのって、」
ここで、瑠璃光寺が気になってきた。
まあ、他に気にするべきことが絶対にあるだろ、という話であるが。
「うん。ここに、ね? 駅を建設するためにね……、政治家の、大野伴睦がいたからなんだよね」
と、わざわざ答えなくていいものの、この西京も答える。
続けること、
「先にもあげた、様々な問題――、特に、東京オリンピックの開業に間に合わすという、喫緊の課題があったからね。工期、コストの問題を解決するために……、なおかつ多くの人が納得するように、尽力したとされる」
「それが、その、大野伴睦って、政治家なんですね?」
「うん。まあ、何でも、義理人情に厚い――、家に入った泥棒にすら、慈悲をかけてお金をあげたなんていう、逸話もあるらしいからね」
「へぇ。すごい、ですね」
「まあ、基本的に、政治家に限らず、後世に自分の記録を残すのであれば、都合の悪いところは書かずに、良い記録だけを残したいだろうからね。実体は、分からないけどね」
と、西京は答える。
さらに続けて、
「そういった、政治家が駅の設置に尽力したから、『政治駅』ってことですよね」
「う~ん……、この段階では、まだ……開業、当初の段階では、ね? そんな、政治駅っていうマイナスな印象は、無かったらしいんだけどね。……まあ、かと言って、人間だからね? すべてがすべて、クリーンなわけではなく……、少なからず、政治家たちの都合があったり、利権だったりがあって、設置された可能性はあるだろうからね」
「まあ、人間、皆良い人間ばかりじゃないですしね」
「うん」
「それで、ね? たぶん、その、岐阜羽島駅と大野伴睦の関係が、政治駅として固定化されたのは、後の、マスコミの影響なのでは――? と、思われるんだね」
「後の、マスコミの影響――、ですか?」
瑠璃光寺が、聞き返すと、
「うん。おそらく、新幹線が開業したあとにはね、やはり、立地やアクセスの悪さから、『なぜ、こんなところに駅が建てられたんだ?』っていう話が出てくるのは、おかしい話でないからね」
「あ~……、それで、」
「うん。建設当初の様々な事情などあまり知らずに、『政治家が設置に貢献した』っていう部分だけが切り取られて、それが悪いほうに目立ってしまって、結果的に、岐阜羽島駅=政治駅という図式が固定化されてしまったんだろうね」
「そうなると、もう、それを覆すのは難しいですよね」
「人間、一度、悪い噂やレッテルが広まると……、それが間違いだとしても、訂正するのは難しいからね」
話しながら、スマホで検索する。
確かに、件の政治家――、大野伴睦とその婦人の像が、岐阜羽島駅に
設置されてある画像がいくつかひっかかる。
やや、クラーク博士のように、未来の先を指さした初老の男と、和装をした婦人の姿という構図の像が――
それは、さておき、
――パラァ、ァァ……
と、外を見るに、吹き流すような雪が舞っていた。
「雪が、強くなってきたね」
西京が、それを確認し、
「です、ね」
と、瑠璃光寺が続いた。
雪の粒の大きさといい、量といい、だんだんと勢いを増しているの見て取れる。
「まあ……、ここからは、東海道新幹線で一番の、豪雪地帯だからね」
西京が、言う。
とはいえ、スマホで見てみる。
そこには、ただの天気予報のサイトやアプリではなく、特別調査課のVR室を通して分析した、気象のリアルタイム予測が表示される。
その予測を見るに、まるで、ゲリラ豪雨ならぬゲリラ豪雪が発生せんとしていた。
「太郎さん……、これ、は――」
「う、ん……」
ふたりの顔が、すこし険しくなる。
これは、先に話した仮説が正しいのであれば、冷界人の彼らが、その力を発揮しやすい条件が整っていた。
そう、頭に浮かびながら、
「もしかして、冷界人の、アベックたち、は――?」
「あっ、」
と、西京は気になった。
ただ、チラリ――と見て、
「特に、変わりはない、か……」
「え、え……」
と、確認するものの、ジェラート大佐と黒づくめの女のふたりは、席から、動いている様子はない。
すると、
――コッツ……、コッツ……
靴音がして、と、鉄道警察のものたちが、やって来た。




