第13話 ワインボトルと『自家発電(意味深)』。
借金などはするつもりはないので、さっそく『支払い(物々交換?)』用のワインを用意することになった――のだが。
さすがにワインを数百本も仕込めるほどのブドウなど用意しているわけもなく。
新たな畑を作ることになり……収穫まで、一週間ほどの待ち時間が発生。
もちろん、他所から来たエイヴリンさんとアレクシア嬢に『一週間で作物が育つ』ことを伝える必要はないので「瓶詰めに手間がかかるから」と説明してある。
「てことで! ブドウが育つまでの時間でさっそく発電機を」
新しいモノを作れる環境がやっと整い、テンション高くそう宣言しようとした俺に、
「……ヒカルさんが余計なことを言ったせいで、樽ではなく『瓶に詰めて』渡す必要が出来てしまったのですが」
リアンナさんから突っ込みが入る。
「……よし、みんな! 川から砂を山ほど掬ってきて!!」
半日ほどで屋敷の裏側に、本当に小山が出来るほどの砂が集められていた。
……うん、さすがにこんなには要らないだろうな……。
翌日は溶鉱炉の前で丸一日作業に没頭。
予備を含めて二百本のワインボトルを作り上げ、いい汗かいたとご満悦の俺。
「……でも何かが足りない気が……ああ! あれだ! ラベルだ!」
すでにワインの名前は決まっている。
ならば名前をもらった少女――女性を妖精風に描いた絵をラベルにしてペタリ。
「うん、高級感もあってかなり良い出来じゃないだろうか?」
あとはブドウの収穫が終わってから瓶詰め、封をしたら皆の前で披露だな!
「これは……ガラスのボトル、なのだよな?」
どうやらこの世界、お貴族様が飲むようなワインでも『徳利のような素焼きの壺』に入ったモノが殆どらしく。
テーブルの上に並んだ五種類のワインを見たアレクシア嬢が目を丸くする。
「濃いワインレッドが赤ワインで淡いマスカット色が白ワイン。
深緑がスパークリングで、ロゼと貴腐ワインはその色を見てもらいたかったので透明にしてみました」
ボトルの色はリカーショップで見た色々な瓶の薄っすらとした記憶を参照。
形は先端から緩やかに太くなる……ブルゴーニュ型だったかな?
作ってみたら容量が一律750mlになったんだけど、どうしてそんな半端な量なのかは謎である。
「これは……飲み物というより、ほとんど芸術品ですね。
ボトルに張り付けられている絵もすべて違うもののようですが」
「せっかくなので、みんなを妖精っぽくデザインしてみました」
「なんというか……お前は本当に小器用な人間だな」
エイヴリンさんは「これは仕入れ価格を見直す必要が」とボソッと呟いているが、今のところ売れる保証もない品物に最初から大金を吹っ掛けるのも……ねぇ?
現状でも平民の年収とかいうそこそこおかしな金額……でもないのか?
金持ち相手の商売とか想像出来ない世界だし。
「とりあえず一度目は他所での試飲なども必要でしょうし。
大きな儲けが出せたなら、次にまた考えるってことでいいのでは?」
「さすがにこれだけの商品をお預け頂いて、儲けをだせないような人間は商人を名乗る資格が無いと思いますが……。
今回はヒカルさんのお心遣いに甘えさせていただきます。
……お礼に次回は二人きりで『広げて』頂いてもいいですよ?」
妖艶な流し目をこちらに送りながら微笑むエイヴリンさん。
リアンナさんを筆頭に、ある程度以上の年齢の娘さんたちから凄まじい圧が掛かってるんだけど……余計なことを言うのは止めようね?
* * *
時間は少し戻ってブドウが育つまでの期間。
「……ヒカルさんはどうして私のことをチラチラを見てらっしゃるのでしょうか?」
「いや、前回のようにまた何か突っ込まれるんじゃないかと思って?」
どうやらこれといって急を要する仕事も無さそうなので、今度こそ本当に発電機の設置を開始することに。
とはいえ、真空管の上位パーツを作るには『強化プラスティック』が必要なので、現状作れる発電施設は『火力発電』『風力発電』『太陽光発電』『水力発電』――
「まぁここが『雪国』ってことを考えれば選択肢は火力発電機以外無いんだけどさ」
他のは天候に左右されすぎて使い勝手が良くないからなぁ。
いうまでもなく室内に火力発電機なんて作っちゃうと稼働させるだけでどえらい温度になっちゃうので『ツンドラマップ』以外で普段使いする施設内に設置するのはオススメ出来ない。
二酸化炭素中毒とかはおこさないんだけどね?
「てことで! いつも(ゲーム内で)やってるように離れを建てて、給水ポンプや給湯器などと一緒に設置しました!」
屋敷の中に『電線』と『上下水道管』を埋め込む作業(銅や木材を壁に押し付けながらコンコンするだけ)が地味に面倒くさかったよ……。
「ヒカルさんはいつもこのようなことをやってらっしゃったのですか?
といいますか、そもそも『はつでんき』というものが何なのか理解できていないのですが」
「もちろん『きゅうすいぽんぷ』と『きゅうとうき』も解らないのです!」
電気の詳しい説明とか出来る気がしないので、さっそく次の工程――屋敷の至る所に蛍光灯を配置する作業を開始する。
「あっ、ヒカルさん。
メイド屋敷の方にいらっしゃるなんて珍しいですね?
明るいうちから夜這いですか?」
「ただの電気工事です
というか、どうして部屋の鍵を掛けたのかな?」
そういうのはジーナさんが着いてきてない時に……ね?
日が落ちてから満を持して点灯させた蛍光灯に屋敷のみんなで大騒ぎ!! ……になると想像していた予想は大きく外れ。
「いや、どうして全然ビックリしてないの!?」
「そもそも壁際で燃え続ける松明がいたるところに置かれていましたので」
「最初見た時は焼き討ちされたのかと思ったのです……」
「ジーナもパパが床の上で焚き火を始めた時はものすごく驚いた!」
「お父様のなさることですから」
それにしても反応が薄すぎると思うんだけど……。
とはいえ翌日。
全面改装されたお風呂に入ったジーナさんとヴィオレッタが、
「パパ! お風呂に穴があいてブクブクいってる!
早く修理しないとおうちがみずびたしになっちゃうよ!?」
「あれはジャグジーバスって言ってブクブクしてるのは壊れてるからじゃないんだよ?
あと女の子なんだからお風呂から上がる時は服を……せめてタオルくらいは体に巻こうね?」
「そうなのですか?
でも、どうしてお風呂をブクブクさせる必要があるのでしょうか?」
「どうしてだろうね? ……じゃなくて。
ヴィオレッタの質問は後で受け付けるからとりあえずお風呂に戻ろうね?
あと手で隠してるふうをよそおってるけど、大きく開いた指の隙間から見えちゃダメなヤツが見えてるからね?」
二人揃って全裸で駆け出し――いや、ヴィオレッタはのんびり歩いてたんだけどさ。
その後もルミーナ嬢とリアンナさんが風呂上がりに、
「取っ手をひねるだけでお湯が出てくるとか意味がわからないのです……」
「フッ、あれこそが給湯器の力!」
「ヒカルさん。あの『しゃわー』という設備ですが、もう少し湯量を上げていただければ当てた時にさらに気持ちよくなれると思います」
「もちろん当ててるのは肩とか腰だよね?」
「いえ、そちらは『じゃぐじー』を使っておりますので問題ありません」
「あっ、はい」
水洗トイレと交換したトイレを使ったアデレードさんとリアンナさんが、
「ヒカル! あの手洗いはとてもいいな!!」
「さすがヒカルさん……まさかお尻をあのように責められるとは思いもよりませんでした」
「とりあえず娘の前で風評被害を広めるのは止めてください。
あとそれは俺の意図した使い方じゃないので、スッキリした顔で親指を立てるのも止めてください」
……その日のうちにメイドさんたちから『トイレの数を五倍に増やして欲しい』『トイレにインテリアとしてヒカルくん一号を置いて欲しい、出来れば大小セットで!』と嘆願が来たのはまた別の話である。




