第04話 次々と訪れる台風『一家』にげんなりするゲーマーのおっさん。
ンシュ村の住民、そして攫われてきた少女たちの中から、真面目そうで、裏切りの心配がなさそうな子たちを選び、コロニーメンバーの増員をしてから早くも一ヶ月が経った。
山の中にある屋敷――すでに砦というより、小さな山城に近い規模となったそこをさらに改築。
新たにメイド見習いとして加わった七人分の個室を増設し、一般家庭サイズしかなかった風呂とは別に『大浴場(女風呂)』も追加した。
もちろん、新たな『府都民』たちが暮らすための集合住宅や、それに付随する畑や家畜小屋などの建設も終わり。
もっともこちらは、俺が設計した建物の建設や耕作を『行動制限』を掛けたうえで、自分たちでやってもらってるんだけどね?
「いやその『行動制限』なのだが!?
『戦闘禁止』にされてしまえば銃を撃つのはもちろんのこと、剣を抜くことすらできんとか意味がわからないのだが!?」
「それなら『エリア制限』だってわけがわからないのです。
百歩譲ってドアノブに触れなくなるのは理解……は出来ませんが!
目の前に進もうとしても体が固まってしまったかのように動かなくなるとか……そんなのもう魔法としか言えないのです!」
「ふふっ、だから私、最初に言いましたでしょう?
ヒカルさんは大魔道士であり大魔道具師であり――」
「そうです、お父様は大天使様ですから――」
いや、魔法じゃなくてただの『システムの設定』なんだけどね?
あと、魔法について語るときのリアンナさんはヴィオレッタと似たヤバさが……。
「うう……ジーナはいまだに『オート作業』というのが慣れない……」
「ははっ、体が勝手に動き回るアレは確かに気持ちが悪いからな!」
「慣れてさえしまえば他のことを考えていようと裁縫のような細かい作業ですらミス無くこなせますから物凄く便利なのですけどね?」
まぁそんな感じで?
屋敷そして府都の改修建設は数週間とかからず完成。
新たなコロニーメンバーの生活基盤は整ったわけだ。
「といいますか、府都の方の食料生産なのですが。
ヒカルさんが耕した畑と、他の者が耕した畑では作物の成長速度がまったく違うのはどうしてなのでしょうか?」
「んー……たぶん、『思い込み』?」
「何の説明になってないのです……」
だってほら、俺の中では『スターワールドの植物はこれくらいの期間で育つ』っていう『お約束』みたいなモノがあるわけで。
でも、他の人たちからしたら『そんなに早く作物が育つはずがない!』っていう『固定観念』があるからさ。
「それでも、畑を耕した翌日には芽が出ておりましたし、明らかに普通で無いのは確かなのですが
水やりや草むしりなどの手入れもまったく必要ありませんし」
米ですら水田どころか乾田ですらない、ただの畑でぐんぐん育つくらいだからね?
「『こちら』はすでに防衛施設の設置まで進んでるみたいだし、これといった問題はなさそうだけど……『あちら』のほうはどうなってます?」
『あちら』――旧ンシュ村のことなんだけどさ。
「そうですね。
自分たちで『頑張る』と宣言したのですから、当然のように死ぬ気で頑張っていることでしょう。
……たしか今はヴィオレッタが担当していましたよね?」
「はい、お母様。
まだまだ、お父様への信心が足りていないので、心を入れ替えさせている最中ではありますが……。
必ず『はい、お父様!』以外の返事ができない体にしてみせます」
……ええと、この子はいったい何を言ってるのかな?
「というか、ジーナさんに続いてヴィオレッタまでルミーナ様のことを『お母さん』認定してるんだ?」
「ミーナはまだ未婚なのに年上娘の二児の母とかもうわけがわからないのです……」
* * *
さて、そんな俺達であるが、平日の昼間っから大広間でダラダラ~ダラダラ~してるのは『労働内容に報酬が割に合わないのでストライキを起こしている』とか、単純に『暇ですることがない』などという理由ではない。
「それにしても北国って、もっと涼しいもんだと思ってたんだけどなぁ」
「それは去年、ミーナも通り過ぎた道なのです」
「ヒカルさんがお暑いのは、その娘がずっとくっついてるせいではないでしょうか?」
「ジーナとパパは一心同体だから!
おうちの中では離れられないから!」
「おねえちゃん、あんまりお父様にご迷惑かけたらダメだよ?」
「それにしても真夏なのに、外はあれほど蒸し暑いのにどうして屋内はこんなに涼しいのか未だにそれが謎なんだが?」
「アデレードは相変わらずのーきんなのです。
『あの箱』が部屋に置かれた時、ちゃんと『くーらー』の説明をされてたのです」
『クーラー』――とは言っても電化製品じゃなくて、『気化熱クーラー』のほうなんだけどね?
水を染み込ませたフィルターに風を通して温度を下げるというアレである。
もっとも、普通ならこんな「大雨で湿度マックス」な日に使っても気休めにもならないような品物なんだけど……そこは『ゲーム(スターワールド)』の不思議技術。
そもそも、大量に設置するだけでどこでも室温が『20度』まで下がるとかあり得ないし。
「フッ、偉そうに言ってるけど、ちびっこママだってアレがどうして涼しいのか分かっていない」
「当たり前なのです!
『ええと、水が蒸発するときに……なんかこう、色々あって?』
という頭の悪そうな説明で理解できると思う方がどうかしてるのです!
そもそも説明するなら『なぜ水が蒸発すると涼しいのか』から始めるべきなのです!」
「……気化熱だから?」
ダイ○ンの技術者さんでもあるまいし、そんなことわかるはずがないだろうが!!
あっ、でもミノ○スキー・クラフトでどうして浮かぶのかのなら説明出来るよ?
……だからなんだという話だが。
ということで俺達が仲良く『シェスタ(お昼休み)』をとっているのは『外が暑いから!』……ではなく。
「ジーナさん、この辺の夏って、毎年こんなに雨が降るものなの?」
「んー、いっぱい降る年はあるかも?
でもここまでつづけて大雨が続いくのは初めてかも?」
「なるほど。つまりは異常気象というか、たまたま台風が連続で来ちゃったって感じなのかな? または環状降水帯?」
ちなみに『環状降水帯』の発音は『あるある探○隊』と同じである。
「またヒカルがおかしなこと言ってるのです。
お天気なんて、お空の神様の気まぐれじゃないのです?」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
「……どうしてあなたたちは揃って驚いた顔をしているのですか?」
「いえだって……」
「まさかルミーナ様の口からそんな……」
「純真な子どもみたいな言葉が出てくるとは思わなくて……」
「ミーナはどこからどう見ても純真で愛らしい少女で間違いないのです!!
あとその三人で順番に喋るのはどこかで打ち合わせでもしていたのです!?」
もちろんそんな暇なことはしていない。
というか、この世界だと天気ってその程度の扱い……いや、腐ってもここって異世界だし?
実際に神様がいて天候を操作してる可能性だって、ワンちゃんなきにしもあらず?
でも女性に褒められるの大好きっ子なうえに大人げない俺氏。
ここで持てる知識を総動員して台風がどういうものかについて語り始める。
「ふふっ、台風というのはですね。
なんかこう……南の海であったかい海流と冷たい海流がうんたらかんたらなって、熱帯低気圧だか高気圧がどーたらこーたらしたら……あっ、エルニーニョは男の子だった気がする!!」
「びっくりするくらい何を言ってるのかわからないのです……。
ヒカルの説明はいつもそうなのです」
だって、天気予報とか地理の授業とか真面目に聞いたことなんてなかったし……。
「でも、七月から数えてこれで四回目の台風ですよね?
うちは山に囲まれてるし、建物自体が丈夫に出来てるから大した被害は出てないけど、近隣の村――峠向こうだと畑の作物どころか、家だってかなりヤバい状況なんじゃ?」
「……んん? お山があると台風が弱くなるのです?」
小首を傾げるルミーナ嬢がちょっと可愛くて悔しい……。
「そりゃ雨は雲から降るもんですし。
雲が引っかかるような高い山があると、そこで雲が停滞したり進行方向が変わったりしますからね?」
「……曇というのはもっと空の高いところにあるものだと思っていたのです。
言われてみれば確かに、白鹿山脈の頂上などはいつも雲がかかっていてあまり見えませんね」
「フッ、パパは何でも知ってる。
たとえばジーナがおぼこだということだって」
「それ、ジーナさんが自分で言ったから知ってるだけなんだけどね?」
まるで俺が調べたみたいに言うのやめよ?
「クッ、お時間さえあれば私だって事細かくご説明を……」
いや、ヴィオレッタの『それ』は生々しすぎるから……。
「てことで話を戻すけど」
「アデレードもあれで生娘なのですよ?」
「お嬢様!?」
アデレードさんはなんだかんだで乙女だから……。
むしろ気になるのはリアンナさん──チラリと視線を向けたらニッコリされた。
「いや、そっちじゃなくてお天気の話なんですけどね?
頻繁にあることじゃないなら、ついでに利用できないかと思って。
ほら、『このように空が荒れているのは『今の侯爵(簒奪者)』の悪行に神様が怒っているからだ!』みたいな?」
「ふふっ、さすがヒカルは悪い子なのです!
……すでにあの女たちの悪評はちょこちょこ流してるのですよ?」
「お、おう……」
俺が悪い子なら既に行動に移しているこの幼女は……。




