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ゲーマーのおっさん異世界の大地に立つ! ~異世界? 違う! ここはゲームの中の世界だ!!~  作者: あかむらさき


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第45話 やったねジーナさん! 家族が増えるよ!

「とりあえず、リアンナさんのお部屋にはあとでお邪魔するとして」


「ジーナはそれをさらにお邪魔するからっ!!」


「……お邪魔できそうにないので、それは一旦保留するとして。

 今回王都からやって来る予定の人数は多くて50ほど……仮に100だったとしても、俺とジーナさんが、とくにジーナさんが本気を出せば何とかなります。

 ただし侯爵家に何の報告もさせない、つまり『一人も逃がさない』となると――さすがに二人でカバーするのは厳しいかもしれないです」


「大丈夫! ジーナはいっぱい走れる!」


「……いや、その娘から擦れば多少頼りなく見えるかも知れないが、我々だっているのだからな!

 当然二人だけで戦わせるつもりなどないぞ?

 これでも私は王国随一のホクト流神剣の使い手!

 ……に、五歳の頃から師事していた剣士だからな!」


「そうですね。

 私も含め、この屋敷の使用人は皆、護身術として短剣や長針、鉄糸や毒の扱いにも心得がございますので、お邪魔にはならないと思いますよ?」


「短剣以外の武器が物騒すぎるんですけど!?」


 ナニソレ怖い……メイドさん全員暗殺者って一体どういう集団なんだよ……。

 ていうかそれ、先代の侯爵様が『身寄りのない子どもたちを引き取って育てていた』っていう美談が、全力で裏返るんだけど?

 ……なお、アデレードさんの『ホクト流神剣』にはあえて触れないこととする。


「……何にせよ、近接戦闘なんていう危険な行為は追い詰められて同仕様もなった時の最終手段ですから。そうなってしまった時点で負けです。

 そもそもこちらは圧倒的少数ですからね?

 一人も死なせない、いえ、怪我すらさせないために隠れながら遠距離!! これ以外はありえません」


「ははっ、誰も死なせないか!

 それはこれから国を相手に大立ち回りしようという人間が、真顔で言うことではないな!

 ……だが、なぜかとても私の中の何かを疼かせる言葉でもある。

 ヒカル! ちょっと今から私の部屋で――」


「行かせないからっ!

 パパは萎れたおばさんは嫌いだから!

 ピチピチの若い子が大好きだから!」


「ジーナさん、そういう色々と誤解されそうな発言は控えようね?」


 あと、三十過ぎてる俺からすれば、この屋敷にいる全員『若い子』になっちゃうから全員ウエルカムってことになるんだけどね?


「――ということで。

 これから少々(俺にとって)恥ずかしい儀式を行いますので。

 この部屋に全員集合してもらってもいいですかね?」


「恥ずかしい儀式!? そんなのもういかがわしさしかないのです!!

 あなたは一体、何を始めようというのですか!?」


 いや、もちろん『乱れた交流』的なことを始めるわけじゃないんだよ?

 ただ、俺の『コロニー』に参加してもらうってだけで。


 でもほら、その参加条件。

 ジーナさんのときと同じなら、システム的なアレに何を言わされるかわかったもんじゃないからさ……。



 そこから始まるのは『コロニー説明会』ならぬ『説得会』。

 とはいえ、今回はセクハラ紛いのトチ狂った選択肢が出ることはなく。


『俺と家族になってくれないか?』


 という、ごくまともなお願いだけで、全員コロニーメンバーになってもらえた。

 ……のはいいんだけどさ。

 それなりの人が「家族……私、家族が出来るんだ……」とか小さくつぶやきながら泣き出しちゃったという。


 なんというかこの世界の人たち、普通に暮らしてるように見えてそこかしこに地雷が埋まりすぎじゃないかな?

 騙してるわけでもないのに物凄い罪悪感を感じるんだけど?


 あとリアンナさん。


「家族というのは……種付けはアリでしょうか?」


 じゃないからね?

 いや、もちろん俺はからかわれてるだけだとは分かってるんだけどさ。

 うちの娘さんが痛風のおっさん並に過敏な反応しちゃうからね?


* * *


 いきなり二人から十六人にまで膨れ上がった我がヒカル・コロニー。

 とはいえ、『人数が八倍なら効率も八倍!』……なんて単純な話にはならず。


 たとえば畑仕事。

 全員が畑を作ることはできるけど、植えられるのは『この世界にある、彼女たちが食べたことのある作物』に限られているみたいで。


 俺以外には地球というか、日本産の『改良を重ねられた農作物』を植える事が出来ず。

 同じニンジンやタマネギでも見た目や食感、もちろんその味までまったく違うという。

 もっとも、収穫には制限がないようで、誰が育てた作物でも取り入れることは可能らしい。


 これは武器や衣服などの製造に関しても同じみたいで、『銃』を作れるのは俺だけだし、同じように『シャツ』を作るとしても、俺がミシンを使えば現代風のブラウスやドレスシャツになるけど、ジーナさんだと頭と手を出す穴の空いていない不思議な貫頭衣が出来上がるという。


 ……ていうかそれ、ただの袋じゃね?

 料理に関しても、自分の知っているものしか作れないのは俺がお菓子で試した時と同じ結果だな。


 逆に、誰でも問題なくこなせるのは伐採や採掘、建物の建築や戦闘行為。

 もっとも、これらも「範囲指定してオート進行した場合に限る」という制限つきなんだけどさ。


「……なんといいますか、思っていたほどお役に立てず申し訳ございません」


「いやいや、さすがに知らないものを作れっていうほうが無理がありますからね?」


「でも、知っているはずのもの。

 たとえばヒカルさんに食べさせていただいたお料理の再現ができないのはどうしてなのでしょう?」


「うーん……たぶん俺が『技能』を使って作ってるからじゃないですかね?

 味は分かっても、作り方まで理解したことにはなっていないといいますか」


 もしかすると、『コロニー単位』ではなく、個々人ごとに『文明レベル』的なパラメータが設定されていて、それで作れるものが変わるのかもしれないけど……詳しいことは不明である。


 ああ、あと。

 生活拠点はルミーナ嬢が暮らしていたンシュ村の領主屋敷から、山の砦へと移転してもらった。


 食料生産を考えると平地にある屋敷の方が便利そうなんだけど……コロニーで育てる作物はありえない速度で収穫出来るので、広さはそれほど必要ないのだ。

 むしろ材木や鉱石の調達を考えれば山の方が圧倒的に便利だったりする。


 もちろん移動して貰った弊害――というほどでもないけど、これだけ大人数になってしまうと、『大部屋で雑魚寝』というわけにもいかず。


「むうぅぅぅ……ジーナは自分の部屋なんていらない! パパと一緒がいい!」


 砦の増築に伴いちゃんと広めの個室を用意したんだけど、それが気に入らないらしく、ジーナさんがごねるごねる……。

 いや、今までも大部屋とはいえ、ちゃんとベッドは離してたんだよ?

 ……ほとんど毎晩俺のベッドに潜り込んできてたけれども。


「それでもさすがに、年頃の娘さんを部屋に連れ込むのは」


「父娘だから大丈夫!!」


 逆に、『父娘だから』問題だとも言えるんだけどね?

 さて、どうやって宥めようかと考えていると、今度は違う方向から声が掛かる。


「それを言うならミーナだってもう家族だから娘なのですよ?

 ……だからこれからはお父様と呼ぶのです!」


「違う! パパの娘はジーナだけ!

 ちびっこは家族だけど、娘じゃない!」


「むうぅぅぅ……娘で気に入らないなら『お義母さん』って呼べなのです!」


 おい待て、それはダメだ!

 彼女にとって『母親』というワードは凄まじい鬼門っ!!!

 ……だと思っていたのになにやら反応のおかしいジーナさん。


「……ちびっこがお母さん……でも、ちびっこはちびっこ。

 ちびっこ相手ではパパは何もできない……かもしれない?」


「そこは『何もしない』って断言してほしかったんだけど?」


「よしっ、ちびっこはこれからジーナのママ! ジーナが認めてあげる!!」


「まさかの認められてしまったのです!?」


「……とりあえず俺の意見も聞いてくれないかな?」

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